日々の暮らしのなかにあるサステナビリティを紹介する特集「サステナブック」。第19回に登場するのは、お笑い芸人でありゴミ清掃員としても活動する滝沢秀一さん。SNSでゴミにまつわるお役立ち情報を発信している滝沢さんが、プラスチックフリーの食品保存容器を紹介。
- 【プロフィール】
- 滝沢秀一さん
- お笑い芸人・ゴミ清掃員。一般社団法人ごみプロジェクト代表理事。漫才コンビ「マシンガンズ」として活動する傍ら、ゴミ収集会社に務める。ゴミ研究家としてゴミの情報を発信し、2020年に環境省の「サステナビリティ広報大使」に就任。多数の著書や講演活動、メディアを通してゴミの削減に取り組んでいる。
プラスチックフリーの食品保存容器
——今回ご紹介いただく商品・サービスについてお聞かせください。
食品保存容器のstashar(スタッシャー)を紹介します。頂いたことがきっかけで使い始めました。SNSでゴミの分別について発信しているので、周りから「こんなものがあるよ!」とサステナブルな情報や便利なアイテムが集まってきます。
シリコーン製でプラスチックフリー。とにかくゴミを減らしたいので、洗って繰り返し使えるのがありがたいです。冷凍保存や湯せん調理、電子レンジやオーブンにも安全に使えて便利です。サイズや形もいろいろあって、マチ付きで自立するものもあります。
使い道も多様で、うちでは漬物なんかを保存していますが、鍵や化粧品などを入れるポーチとして使っている人もいるみたいです。
食品ラップも繰り返し使えるラップにするなど、食卓からのゴミはなるべく出さないように工夫しています。
——そのほか、ゴミを減らすために取り入れているアクションはありますか?
ゴミ清掃員を始めた12年前に買った水筒を持ち歩いています。水筒を持ち歩けば1日1本のペットボトルを減らせる。年間で365本。それが10人100人と増えていけば3万本以上減らせます。“チリツモ”が大切です。
仕事でペットボトルの回収もするのですが、とんでもない量を目の当たりにして、僕一人でも減らしたいなと思いました。ゴミ清掃員を始めた頃は貧乏だったので、水筒は節約のためでもあります。
この水筒は7,000円もしたんです! 当時の僕からすれば、清水の舞台から飛び降りるつもりで買ったのでなかなか捨てられません。思い入れのある物は長く大切に使おうと思いますよね。ゴミを減らすためにも、物を買う時に思いを込めて買うことが大切なんじゃないかなと思います。
実は、お金持ちの家って使い捨てのゴミが少ないんですよ。ゴミを減らせばお金持ちになれると思っています(笑)。
私なりのサステナビリティ
——何から始めたらよいのかわからない方に向けて、まずはこれを実践してみてほしいというアドバイスはありますか?
お菓子の箱やティッシュの箱、包装紙、ポストに入ってくるチラシなどの紙は、可燃ゴミではなく「古紙回収」に出してください。紙とプラスチックを分別するだけで、家庭のゴミは3分の1も減ります。シュレッダーにかけたものは繊維が細かすぎてNGなのですが、名刺サイズくらいまでは大丈夫。出す曜日が違うだけで、灰になるか再生紙に生まれ変わるか180度変わります。
——こんな商品・サービスがあったらいいなと思うアイデアはありますか?
実は、4月から「滝沢印の地域循環コンポスト」というサブスクサービスを始めました。
自宅でのコンポストに踏み切れない理由は、虫や臭いが付くことを心配したり、マンションで場所が限られていたりするからですよね? そこで、バッグ型のコンポストを開発しました。それを回収拠点に持ってきてもらい、新しい土と交換します。月に980円で何度でも利用できます。東京の東中野を拠点に、鎌倉や静岡などにも広がっていて、今後はさらにコンポストの回収拠点を増やしていきたいです。
生ゴミを減らすだけではなく、コミュニティづくりも目的のひとつ。地域で生まれたものは地域で処理する。そして、ゴミを回収する人やゴミの行く先が見えることで地域の環境はよくなると思います。
——自分一人の行動では何も変わらないと思っている人もいるようですが、滝沢さんはどのような思いから行動に移すことができたのでしょうか?
ゴミを減らすことで、僕自身が気持ちよく生活するためです。
自分のマンションのゴミ集積所を見たら、ペットボトルのラベルが剥がされていないことが多かったので、他人のものも毎週毎週ラベルを剥がしてみました。そうしたら、みなさん半年後には剥がすようになったんです! 一人の力でも変わることはあると思います。
ゴミ清掃員になって、僕たちの日常は誰かが努力をして保たれているのだと気づきました。日常は当たり前につくられるものではないと思えたことが一番の発見です。
——ゴミ清掃員として感じる社会課題はありますか?
ゴミとされていても資源になるものもあるので、将来的にはゴミという言葉がなくなればいいですね。例えば「ゴミ集積所」ではなく「エコステーション」と呼ぶとか。ゴミに対するネガティブな印象を変えたいです。
そして、ゴミ清掃員の仕事をやりたいと思ってもらいたい。例えば、アメリカではそれなりの報酬なので人が集まるけれど、日本では誰でもできる低賃金の仕事というイメージがあって、常に人手不足なんですよね。報酬や待遇を含めて人々が憧れる職業にしていくことが理想です。
——今後、私たちはサステナビリティとどのように向き合うべきだと思いますか?
ルールとしてやろうとするから「SDGs疲れ」なんて言われてしまう……。SDGsは掘り下げていくと人権問題です。例えば、子どもが過酷な状況下で働いている世界がよい世界だとは思えない。それを解決したいというゴールを見る必要があるし、みんなが平和で心地よく暮らすための取り組みだと捉えたいですね。
あとは、アメリカにある“ラストロング”の考え方を広めたいです。これには「愛しているものなら命なくなるまで使う」という意味があります。
日本語の“もったいない”に近いですが、“もったいない”は廃棄する時に「まだ使えるんじゃないか?」と考えるニュアンスですよね。一方で、“ラストロング”は買う時に「最後まで付き合えるか?」を考えること。日本にもこの考え方を定着させたいです。まずは考え方から向き合ってみるのもよいと思います。