帝国データバンクは、現在のSDGsに関する企業の見解について調査を実施し、結果を公表した。
なお同調査は、「TDB景気動向調査2024年6月調査」とともに実施されたとのことだ。
■「SDGsに積極的」は調査開始以降で最高水準の54.5%に
SDGsへの理解や取り組みについて尋ねたところ、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は29.7%となり、前年より2.3ポイント上昇。また、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は24.8%で同1.4ポイント低下した。
合計すると「SDGsに積極的」な企業は0.9ポイント増の54.5%と、調査開始以降で最高水準を更新。ただし、前年に続き上昇幅は鈍化する結果となっている。
企業からは、「取り組まないと人員確保が難しいと感じる」(電気・ガス・水道・熱供給、神奈川県、中小企業)や「取引先からの取り組み状況の調査が増えている」(情報サービス、富山県、中小企業)の声があがり、人材確保や取引先との関係強化を目的に取り組んでいる企業が複数みられたという。
一方で、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」は33.5%、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」は7.4%。合計するとSDGsを認知しつつも取り組んでいない企業は40.9%となり、「SDGsに積極的」な企業を10ポイント以上下回る結果に。
■規模が小さいほど「SDGsに積極的」な企業割合低く
企業規模別にみると、「大企業」ではSDGsに積極的な企業が71.8%と、全体を大幅に上回った。「中小企業」は51.2%で、うち「小規模企業」は42.9%。規模が小さいほどSDGsに積極的な企業の割合が低くなる傾向が続いている。
中小企業からは「中小零細企業は人手不足など目先の問題を解決することで手一杯」(不動産、東京都、小規模企業)のような厳しい声が聞かれたほか、「範囲が広すぎて零細企業での取り組みがみえていない」(専門サービス、宮城県、中小企業)といったコメントも複数あがっていたとのことだ。
SDGsに積極的な企業を業界別にみると、「金融」が66.4%で最も高い結果に。企業からは「損保会社と提携した「SDGs認定書」の発行のほか、SDGs関連セミナーの開催、職員への金融リテラシー教育などに取り組んでいる」(金融、兵庫県、大企業)などの声が聞かれたという。
■現在力を入れている項目は「働きがいも経済成長も」がトップ
SDGs17の目標のなかで、現在力を入れている項目を尋ねたところ、働き方改革や労働者の能力向上などを含む「働きがいも経済成長も」が34.0%で最も高かった(複数回答、以下同)。
次いで、再生可能エネルギーの利用などを含む「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」が25.0%、リサイクル活動などを含む「つくる責任つかう責任」が23.2%、カーボンニュートラル製品の使用などを含む「気候変動に具体的な対策を」が23.1%と続いた。
なかでも近年政府が注力している女性活躍推進などを含む「ジェンダー平等を実現しよう」は14.6%で前年比2.4ポイント増となり、最も大幅に上昇。
総じて、いずれかのSDGs目標に力を入れている企業は72.8%となり、SDGsに「取り組んでいない」などと回答した企業でも、気付かないうちにSDGsに取り組んでいる企業が多数あることがわかった。
■今後最も力を入れたい項目も「働きがいも経済成長も」がトップ
今後、最も取り組みたい項目について尋ねたところ、現在最も力を入れている項目と同様に「働きがいも経済成長も」が11.8%でトップ、全項目のなかで唯一1割を超えた。
次いで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や「気候変動に具体的な対策を」が上位に並んでいる。
■企業の7割がSDGsの効果を実感、「企業イメージの向上」「従業員のモチベーションの向上」が上位
現在SDGs各目標に力を入れている企業に取り組みによる効果を尋ねたところ、『効果を実感』している企業の割合は前回調査(69.2%)から0.3ポイント増の69.5%となった。
なかでも、「企業イメージの向上」が39.8%でトップに(複数回答、以下同)。次いで、「従業員のモチベーションの向上」も3割台となり、以下、「経営方針等の明確化」が17.8%、「採用活動におけるプラスの効果」が16.7%と続いた。
また、「売り上げの増加」が11.6%、SDGsをビジネスチャンスとして捉え、「新規事業立ち上げ、新商品・サービス開発」につながった企業が8.1%あり、SDGsへの取り組みは社会課題の解決への貢献だけでなく、ビジネスチャンスの獲得、ひいては業績の改善にも結びついている可能性が示された。
■4社に1社がDEI(多様性、公平性、包摂性)への取り組みに積極的
SDGsとの関連が深い「DEI(Diversity=多様性、Equity=公平性、Inclusion=包摂性)」という考え方・取り組みへの注目度が高まりつつあり、企業に対しDEIへの理解や取り組みについて調査。
その結果、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は8.8%、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は16.6%で、合計すると25.4%となり、4社に1社が「DEIに積極的」であることが判明した。
一方で、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」は26.6%、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」は9.8%、「言葉も知らない」は23.6%。
しかし、「DEIという単語は初めて聞いたが、この取り組みは以前から行っている」(機械製造、富山県、中小企業)のように、言葉は知らないものの既に取り組んでいる企業も複数みられ、SDGsと同様に企業規模が小さいほど「DEIに積極的」な割合は低い傾向にあった。
<参考>
帝国データバンク『SDGsに関する企業の見解についての調査』