建設業経営者の8割以上が「時間外労働の上限規制」に賛成 一方、「人手不足の悪化」「工期の厳守が難しい」などの懸念も

NSSスマートコンサルティングは、建設業経営者を対象に「建設業界の働き方改革の実態」に関する調査を実施し、その結果を公表した。

■8割以上の経営者が時間外労働の上限規制に賛成。今後の人手不足の悪化が不安

時間外労働の上限規制についてどう思うか聞いたところ、8割以上が時間外労働の上限規制に賛成していることが明らかに。一方で、反対している人も1割以上と一定数いることが分かった。それぞれの理由は以下の通り。

【時間外労働の上限規制に賛成する理由】
・人手不足で残業が多いと誰も入らないと思うからいいと思う(30代/男性/兵庫県)
・なるべくなら残業がないような就業体制をとるべきだと考えている(50代/女性/岡山県)
・働き方改革は大変よいこと。作業員の疲労、睡眠不足解消につながり働き手が増える(50代/男性/城県)

【時間外労働の上限規制に反対する理由】
・業務量と人手不足で、時間内に終わるわけがない(30代/男性/新潟県)
・人の確保に苦労する(40代/男性/兵庫県)
・従業員を増やさないと45時間が守れない。経費がかさみ圧迫されている(40代/男性/岐阜県)

時間外労働の上限規制に賛成の人は、人手不足の解消のためには労働環境の改善が必要と考えていることが分かった。

一方、時間外労働の上限規制に反対の人は、現状の人手不足が解消されていないこともあり、工期の遅れや経費の増加などで経営が厳しくなると考えていることが伺える。

続いて、建設業2024年問題を受け、今後の見通しで不安なことを聞いたところ、「人手不足の悪化」と回答した人が最も多く、次に「工期の厳守が難しい」「工期延長によるコスト増加」が続いた。

半数以上が人手不足の悪化をあげたことから、今まで長時間の残業でこなしていた分の仕事をする人手の確保に不安を抱いている人が多い傾向が明らかに。

また、工期の厳守が難しくなることや工期がのびてコストが上がることなどで今よりも経営が難しくなるという懸念もあることが分かった。

時間外労働の上限規制についてどう思うか、建設業2024年問題を受け、今後の見通しで不安なことは何か

■従業員は満足していると考えている人が6割以上。満足度を上げるために給与面を重視

自身が経営している会社における、従業員の働き方満足度はどのくらいだと考えるか聞いたところ、6割以上の人が「従業員は満足している」と考えていることが明らかに。

また、従業員の働き方に関して、どのような取り組みを行っているか聞いたところ、「給与の向上」と回答した人が最も多く、次いで「福利厚生の充実」「適切な給与体系」が続いた。

従業員に満足してもらうために、給与面を特に重視している傾向が明らかに。また、従業員のモチベーションアップのために、福利厚生にも気を配っていることが分かった。

従業員の働き方満足度はどのくらいだと考えるか、従業員の働き方に関して、どのような取り組みを行っているか

■公共事業と従業員の満足度の関係とは?公共工事は民間工事よりもデメリットが少ない

公共事業の案件を増やすことは、従業員の働き方満足度の向上につながると思うか聞いたところ、8割以上の人が公共事業の案件を増やすことが、従業員の満足度の向上につながると考えていることが明らかに。

次に、以下の各項目に対して、民間工事と公共工事、どちらか当てはまる方を選んでもらったところ、以下のような回答結果になった。

【民間工事】
・サービス残業が多い(64.1%)
・受注のための交際費がかかる(63.9%)
・現金での支払いで資金繰りがよい(56.8%)
・工事によっては前受け金がある(55.5%)
・書類や管理が多い(53.1%)
・利益確保がしやすい(52.0%)
・金融機関・民間発注者の信頼が得られる(48.3%)
・発注量が安定している(47.7%)
・未払いによる貸倒れリスクが少ない(42.4%)

【公共工事】
・未払いによる貸倒れリスクが少ない(57.6%)
・発注量が安定している(52.3%)
・金融機関・民間発注者の信頼が得られる(51.7%)
・利益確保がしやすい(48.0%)
・書類や管理が多い(46.9%)
・工事によっては前受け金がある(44.5%)
・現金での支払いで資金繰りがよい(43.2%)
・受注のための交際費がかかる(36.1%)
・サービス残業が多い(35.9%)

民間工事は、サービス残業が多くなり、受注のための交際費もかかるというデメリットが目立つ結果に。

一方、公共工事は、未払いによる貸倒れリスクが少なく、発注量も安定しているというメリットがあり、目立つデメリットもないことが分かった。そのため、公共事業の案件を増やすことが従業員の満足度の向上につながると考えるのではないかと同社は考察している。

民間工事と公共工事、どちらか当てはまる方を選択してください

■ISO認証を取得することで公共事業を受注しやすくなると考える方が8割以上

公共事業の比重を上げていくために自社に特に必要な動きは何だと思うか聞いたところ、「建設業許可の取得」と回答した人が最も多く、次いで「ISO認証の取得・追加取得」「経営事項審査の受審」が続いた。

公共事業の比重を上げていくために自社に特に必要な動きは何だと思うか

次に、ISO認証を取得することで、公共事業の取引がしやすくなると考えるか聞いたところ、8割以上の人がISO認証を取得すると、公共事業を受注がしやすくなると考えていることが明らかに。

また、前述の質問で「とてもそう思う」「そう思う」と回答した人に、ISO認証を取得することのメリットは何だと考えるか聞いたところ、「顧客からの信頼につながる」と回答した人が最も多く、次いで「企業体質を強化できる」「公共事業を受注しやすくなる」が続いた。

4割以上の人が「顧客からの信頼につながる」と回答し、一定の基準をクリアしていると顧客に示せることをメリットとしてあげている。

審査を通過するために企業体質を見直すことで強化できることやISO認証が公共事業に入札した際に検討される評価のアップにつながるので公共事業を受注しやすくなることもあげられており、建設業でISO認証を取得することはメリットが多いのではないかと同社は考察している。

公共事業の比重を上げていくために自社に特に必要な動きは何だと思うか、ISO認証を取得することのメリットは何だと考えるか

【調査概要】
調査期間:2024年7月9日~2024年7月10日
調査方法:リンクアンドパートナーズが提供するPRIZMAによるインターネット調査
調査人数:1,002人
調査対象:調査回答時に建設業経営者であると回答したモニター
調査元:NSSスマートコンサルティング
モニター提供元:PRIZMAリサーチ

<参考>NSSスマートコンサルティング『「建設業界の働き方改革の実態」に関する調査

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