一般社団法人うみらい環境財団は、日本ライフセービング協会、日本水難救済会とともに日本財団が企画・統括する「海のそなえプロジェクト」の取り組みの1つとして、水難事故に関する3つの調査を実施し、その結果を公表した。
同調査では、水難事故に関するファクト・実態調査、国民の水域利用と水難事故に関する意識調査および水泳指導に関する意識調査の3つの調査を実施し、調査データを分析した結果をサマリーとしてまとめているという。
今後は、社会的な仕組みとしての対策につなげるため、ナショナルデータの集約・分析、および情報共有を行うシンクタンク機能を作っていく予定とのことだ。
■水難事故の発生は14時に多い
要救助者の年齢別・時間帯別のレスキュー数とレスキューの時刻と要救助者の年齢の調査結果によると、若年層の水難事故の発生は14時に多いことが明らかになった。
■レスキューの自然要因は離岸流・風、個人要因は泳力不足・疲労・パニック
ライフセーバーが活躍する海水浴場での救助件数をみると、約200の主要海水浴場で毎シーズン2,000〜3,000件の救助が発生。
また、レスキュー(溺れ)の要因は、自然要因の46%が「離岸流に流される」、31%が「風に流される」、個人要因の61%が「泳力不足」と回答。
■海の危険評価は「とても危険」の上位が「サメ」「水深」「離岸流」
海に関する危険評価の調査では、「とても危険」が多い順に「サメ」が66.3%、「水深」が54.1%、「離岸流(沖に向かう流れ)」が53.0%と続いた。
一方、水難事故の要因として多かった「風」を「とても危険」と評価した人は25.6%にとどまる結果に。
■約5人に1人が溺れた経験がある
溺れた経験の有無を聞くと、17.0%が「ある」と回答。
また、溺れたことがあると回答した人に、溺れた当時のプールでの泳力を聞くと、25メートル以上泳げる人が28.2%、25メートル泳げる人が21.0%という結果に。
溺れた経験のある人に、溺れた時期を聞くと、最も多いのは「小学校低学年」で41.1%、次いで「小学校入学前」で26.9%、「小学校中学年」が21.7%と続いた。
■はじめて自然水域に行った際の安全教育の経験有無、小学校入学前は9割以上、小学校低学年は6割以上が安全教育を学んでいない
初めて自然水域に行った際の安全教育の経験有無について聞いたところ、小学校入学前は91%、小学校低学年は62%が、安全教育を学んでいないという結果に。
■溺れそうになっても助かるためのそなえや行動は「ライフジャケットの着用」が約6割
溺れない、または溺れそうになっても助かると思う備えや行動について聞くと、60.8%が「ライフジャケットの着用」と回答。
また、ライフジャケット着用時の状況を聞くと、「水上スポーツやアクティビティをしたとき」が53.6%、「船やボートに乗るとき」が36.5%という結果に。一方、「海で泳ぐとき」は14.5%、「川で泳ぐとき」は7.1%と、いずれも15%に満たないことが明らかになった。
■小学校の水難事故防止教育において、「小学校の教員が教えるのが難しい」と、6割以上の教員が回答
水難事故防止教育の課題について小学校・中学校の教員に聞いたところ、「教員が教えるのは難しい」が62%、「ライフジャケットを準備することができない」が34%という結果に。
また、水泳授業の担当者は89%が「クラス担任」、水泳授業の不安は63%が「安全に関すること」と回答。
今後の小学校での水泳授業の外部委託について聞くと、「検討したい」「検討している」が合わせて4割という結果に
【調査概要】
●水難事故に関するファクト・実態調査
調査手法:
・既存(公開)データの収集・分析
・報道記事調査(7~8月実施)
データ元:
・厚生労働省「人口動態統計」
・警察庁「水難の概況」
・海上保安庁「海難の現況と対策」「海上保安統計年報」
・消費者庁「こどもの事故防止に関する関係府省庁連絡会議資料」
・(公財)日本ライフセービング協会「アニュアルレポート」
●国民の水域利用と水難事故に関する意識調査
調査対象:一般利用者(国民)/都道府県均等割り/15~70歳の男女
回答数:11,829人
調査期間:5月2日~16日
調査手法:インターネット調査
●水泳指導に関する意識調査
調査対象:2023年度に「小学校教員」もしくは「中学校教員」として勤めていた20歳以上の男女
回答数:2,060人
調査期間:5月2日~6日
調査手法:インターネット調査
<参考>
一般社団法人うみらい環境財団「1万人以上を対象とした調査結果 初公開「海のそなえ」水難事故に関する調査サマリー」