帝国データバンク(以下、TDB)は、株価上昇が及ぼす影響について企業へアンケートを実施し、結果を公表した。
■株価の大幅上昇、停滞が続く日本経済に対するマインド「良くなる」が48.2%
日経平均株価が、34年ぶりに史上最高値を更新したことを受け、「株価の上昇が長らく停滞していた日本経済に対する企業や消費者のマインドが変わる(良くなる)、一つのきっかけになると思うか」と尋ねたところ、「変わる(良くなる)」と考える企業は48.2%で半数となった。
内訳は、マインドが「変わる(良くなる)」が8.8%、「どちらかと言えば変わる(良くなる)」が39.4%。
他方、「変わらない」という回答は44.4%(「どちらかと言えば変わらない」26.5%、「変わらない」17.9%の合計)で、日本経済へのマインドが変わると考える企業と、変わらないと考える企業はいずれも4割台でわかれる結果に。
企業からは、「株価最高値のニュースを見るだけでも、心理的に景気が回復してきているとの雰囲気になる。ただし株価に見合った賃上げが必要」など、株価上昇が世間の心理面や雰囲気にプラスに働くとの声があがったという。
一方で、「企業や個人が保有する株式資産はごくわずか。実体経済と乖離している株高だと思っているので、今のところは期待していない」、「株価が上がっても企業の収益や消費者の所得が上がったわけではないので、当然マインドも変わらず恩恵も感じない」といった声も寄せられたとのことだ。
■株価上昇で「恩恵あり」は42.8%、「消費マインド向上」がトップ
「昨今の株価の上昇による恩恵を直接・間接問わず受ける(見込み含む)と考えるか」と尋ねたところ、「恩恵あり」とした企業は42.8%と4割を超えた。
他方、「現時点では恩恵を感じていない」企業は52.8%で、半数超の企業が現時点で見込みも含めて恩恵を実感できていない。
具体的な恩恵としては、「社会全体の消費マインドの向上」が50.1%で最も高くなっている(複数回答、以下同)。
次いで、直接的な恩恵である「自社で保有する有価証券などの資産価値の上昇」が46.4%、「個人の購買意欲の向上」が32.9%と続く。
企業からは、「固定された給料は生活のために使い道がほぼ決まっている。投資での利益は少しの贅沢に使うマインドが起こる」、「株を多く保有している人は資産が増えることで消費マインドが向上する。それにつられて購買意欲を高める人も一定数いる」など、直接的な効果から間接的な影響へ徐々に広がるとの声が聞かれた。
しかし恩恵を感じない企業は「ごく一部の投資家や大企業はともかく、一般消費者の実質賃金は下がり続けているため、恩恵を感じることはできない」といった声がみられ、株価上昇による恩恵は限定的とみている。
同アンケートの結果、昨今の大幅な株価の上昇で、約半数となる48.2%の企業が日本経済に対する企業や消費者のマインドが良くなると捉えていることが判明し、また4割超の企業で、消費マインド向上や資産価値の上昇など直接・間接的な恩恵を受けると見込んでいることがわかった。
このまま株価が高値で推移すれば、中長期的に有価証券を持っていない企業や個人へもプラスの影響が間接的に及ぶと期待されるが、株価上昇だけでは企業の収益や消費者の所得を押し上げる効果は限定的であるため、現時点では恩恵を実感できていない企業の割合の方が多くなっている。
同社は、さらに企業や消費者のマインドが変わっていくには、原材料費や人件費の上昇分を適正にサービス・商品価格へ転嫁する必要があるとしている。
また、生成AIを含めた新技術の活用などで収益性を改善し、継続的な賃上げ実施を通じた実質賃金の上昇、設備投資の増加という好循環へつなげていくことが重要と考察。
今回の株価上昇が、日本経済の失われた30年から潮目が変わるきっかけの一つとなり、景気の好循環につながることが期待されるとした。