子どもたちを乗せる「性教育のバス」が、ホンジュラスで望まない妊娠を防ぐ

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「医者になりたい」、「エンジニアになりたい」、「アーティストになりたい」……無限の可能性がある子どもたちの夢は輝かしく、応援したくなる。

しかし、望まない妊娠などが原因で、その夢を諦めざるを得ない子どもたちもいる。例えば、中米のホンジュラスでは4人に1人の少女が19歳になる前に出産しており、ラテンアメリカで10代の妊娠率が2番目に高い国となっている。毎年、ティーンの母が約5万人の子どもを出産しており(※1)、それが少女たちの教育や就労機会の減少や、子どもへの貧困へ繋がることも多い。

そんな中、家族計画やリプロダクティブ・ライツ(性と生殖の権利)をはじめ、人口分野にまつわる国連の専門機関UNFPA(国際連合人口基金)は、バスの中で子どもたちに性教育をするイニシアティブを開始した。“Rutas de los Seuños(夢の通り道)”と呼ばれるこのバスには臨床心理士らが同乗しており、ティーンエイジャーに包括的な性教育を提供することで、意図しない妊娠を避けたり、性暴力の生存者を支援したり、子どもたちが夢を叶えることを応援しているのだ。

10歳から19歳までの子どもたちは、バスの中で医療従事者をはじめとした専門家たちによるカウンセリングを受けたり、リプロダクティブライツについて学んだり、避妊に関するアドバイスを受けたりすることができる。

バスは独自の電力とインターネット設備を備えているため、情報が十分に行き届いておらず、安定した電力供給が得られない貧困地域へも訪れ、情報を届けることができる。2022年にプロジェクトが始まって以来、ホンジュラス全国50以上の町の5,000人以上の子どもたちがバスで学ぶことができている。

Image via UNFPA-HONDURAS

また、多感な思春期の子どもたちの関心を集め、自分ごと化してもらうための工夫も施されている。例えば、VRを利用して、2人のティーンエイジャーのラブストーリーを作り、その中でホンジュラスの若者が暴力などの問題に直面し、それに対処する様子を見せている。子どもたちが自分の精神的・身体的な健康のために、十分な情報を得た上で責任ある決断を下すよう促す斬新なアイデアだ。

さらに、このバスが“Rutas de los Sueños(夢の通り道)”と呼ばれるのにもワケがある。子どもたちが成し遂げてみたいこと、やってみたいことなど、一人ひとりのライフ・プロジェクトの重要性を伝えているからだ。バスの中で思春期の子どもたちに自分の夢を書き出してもらい、将来それを達成することを約束してもらう。希望を持つことが子どもたちにとってはとても大きな意味があるのだ。

Image via UNFPA-HONDURAS

サンタ・バルバラ県コンセプシオン・デル・スールに住む5人のシングルマザーは、「私たちの町に来てくれてとてもありがたいです。娘を学校に通わせるのがやっとで、退学させることも考えていたのですが、この経験から、娘を学校に通わせ続けるために闘い続けなければならないと思いました」とUNFPAに対してコメントしている。

この事例は、子どもたちが自分の夢や将来について考えることや、どんな人生にしていきたいのかを想像することを促している。性教育だけではなく、ライフプランも含めて考え、学ぶことによって、より子どもたちが前向きにリプロダクティブ・ライツについて学ぶことができるイニシアティブだろう。

※1 Comunicado sobre la Ley de Educación Integral de Prevención al Embarazo Adolescente
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【参照サイト】“I must continue fighting to keep her in school”: Following the Ruta de los Sueños bus to prevent teen pregnancy across Honduras

(元記事はこちら)IDEAS FOR GOOD:子どもたちを乗せる「性教育のバス」が、ホンジュラスで望まない妊娠を防ぐ

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