国立大学法人岡山大学 学術研究院医歯薬学域の上原孝教授と岡山大学大学院医歯薬学総合研究科博士後期課程の森本睦大学院生は、タバコ煙や排気ガスに含まれる化学物質「メチルビニルケトン」が生理機能に悪影響を与える機構を解明し、研究結果を公表した。
なお、同研究は理化学研究所環境資源科学研究センター生命分子解析ユニットの堂前直ユニットリーダー、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の安孫子ユミ准教授、九州大学大学院薬学研究院の熊谷嘉人教授、東京大学大学院農学生命科学研究科の内田浩二教授らと共同で実施されたという。
■概要
環境化学物質の一つであり、タバコ煙や排気ガスに含まれる環境化学物質のメチルビニルケトン(MVK)は、高濃度曝露では毒性を発揮することが知られていたが、低濃度慢性曝露による生理機能への影響はほとんど解析されていなかったという。
同研究では、MVKがインスリンや上皮成長因子(EGF)のシグナル伝達に重要なタンパク質であるホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の制御サブユニットのシステイン残基に共有結合することで、受容体との結合を阻害することを解明。
この作用により、糖取り込み作用などが著しく阻害されることを示したとのことだ。
さらに、MVKと高い構造類似性を示すエチルビニルケトン(食品添加物)やアクロレイン(ポテトチップスなどに含まれる)なども同じような作用を有することを見出したとしている。
同研究は、環境化学物質による糖尿病などの疾患発症機構解明に向けたものであり、その予防法や治療法の開発に貢献することが期待されるという。
なお同研究成果は、2024年1月に米国生化学・分子生物学会の学術誌『Journal of Biological Chemistry』に掲載されたとのことだ。
<参考>
岡山大学『タバコ煙や排気ガスに含まれる化学物質「メチルビニルケトン」が生理機能に悪影響を与える機構を解明!~糖尿病などの疾患発症メカニズムの解明へ光~』