一般社団法人日本ウェルリビング推進機構は、難聴を自覚している全国の20歳〜60歳以上の男女618人を対象に、「難聴者の治療実態と生活に関する意識調査」を2024年2月に実施し、その結果を公表した。

■難聴のリスクについて「理解していない」が最も多く、難聴のリスクに関する認識が低い結果に

難聴に伴うリスクとして理解しているものを聞いたところ、第1位は「理解していない」で38.5%、となり、難聴に伴うリスクを知らない人が多いことが明らかに。

次いで、「社会的孤立」「鬱」が続き、4位には最近の研究で、難聴との関連性が示唆されている「認知症」がランクイン。

「認知症」のリスクについて一定の人が理解しているものの、トップ3にランクインしていないことから、難聴と認知症の関連性についての認識が不十分であることが分かった。

難聴に伴うリスクとして理解しているもの

■難聴の自覚があるにも関わらず、病院に受診していない人は約3割。年代別では60代が最も受診していないことが判明

難聴に関連して病院を受診したことがあるか聞いたところ、「受診したことがある」が約7割、「受診したことはない」が約3割となり、約3割の人が難聴を自覚しているにも関わらず、病院を受診していないことが分かった。

難聴に関連して病院を受診したことがあるか

また、年代別で「受診したことはない」人の割合を見てみると、20代が35.%、30代が30.9%、40代が31.7%、50代が28.9%、60代が40.8%と、最も年齢が高い60代が病院を受診していない割合が高いことが判明。

年齢が上昇するにつれて、難聴のリスクが増加することが知られており、最も年齢が高い60代が、他の世代に比べて病院を受診していないという結果は、深刻な問題であると同社は考察している。

難聴に関連して病院を受診したことがあるか(年齢別)

■年代別で最も病院を受診していない60代が、病院へ行かない理由の1位は「難聴は加齢に伴う自然なものだから」

「受診をしたことはない」と回答した60代の人に病院を受診しない理由を聞くと、第1位「難聴は加齢に伴う自然なものだから」、第2位「生活に支障はないと考えているから」、第3位「受診は面倒くさいと感じたため」となった。

60代の受診率が低い主な理由は、2人に1人が「歳を重ねると難聴になるのは自然なことだ」と考え、難聴を病気として重く捉えず治療の必要性を認識していないためであると分かった。

病院を受診しない理由

■難聴者の補聴器の利用率は約1割と、まだまだ利用率は低い結果に

現在、補聴器を装用しているか聞いたところ、「装用している」人が約1割、「装用していない」人が約9割となり、難聴者の補聴器の利用率が低いことが明らかに。

現在、補聴器を装用しているか

■難聴者の約8割が補聴器外来を受診したことが無いと回答

補聴器外来を受診したことがあるか聞いたところ、約8割が「受診したことはない」、約2割が「受診したことがある」と回答。

補聴器を必要とする人々が補聴器外来への受診に対する認識が低いことが明らかとなり、多くの人が補聴器外来を訪れることの意義や恩恵について知識不足であるという課題が浮き彫りになった。

補聴器外来を受診したことがあるか

■現在、難聴の治療方法として人工内耳を使用している人は「1.1%」に留まる

現在、人工内耳を使用しているか聞いたところ、「検討、使用どちらもしていない」が90.8%、「検討したことはあるが使用していない」が8.1%と9割以上が人工内耳を使用していないと回答。

一方で、「使用している」人が1.1%となり、人工内耳の利用率が極めて低いことが判明した。

また、「使用していない」と回答した人に、その理由を聞いたところ、「知らなかった」が約6割と最多となり、人工内耳の利用率が低い原因には、難聴者に対する人工内耳の情報提供不足があることが分かった。

現在、人工内耳を使用しているか

■難聴が原因で、家族や周囲の人に迷惑を掛けていると思っている人は約6割

難聴で耳が聞こえにくいことから、家族や周囲の人達に対して、迷惑を掛けていると感じるか聞いたところ、約6割が「迷惑を掛けている」と回答し、難聴が原因で家族や周囲の人々に迷惑を掛けていると自覚している難聴者が多いことが明らかに。

難聴で耳が聞こえにくいことから、家族や周囲の人達に対して、迷惑を掛けていると感じるか

■難聴が原因で、仕事のパフォーマンスに影響を与えていると感じている人は約7割

次に、耳が聞こえづらいことが仕事のパフォーマンスに影響を与えていると感じるか聞いたところ、約7割が「影響を与えている」と回答し、難聴が原因で仕事のパフォーマンスに影響を与えていることが判明。

耳が聞こえづらいことが仕事のパフォーマンスに影響を与えていると感じるか

■難聴が原因で、日常生活にストレスや孤独感を感じている人は約6割

難聴が原因で日常生活においてストレスや孤立感をより感じることがあるかという質問に対しては、約6割が「ストレスや孤独感を感じる」と回答し、難聴が原因でストレスや孤立感を感じている難聴者が多いことが分かった。

難聴が原因で日常生活においてストレスや孤立感をより感じることがあるか

【調査概要】
実施時期:2024年1月31日~2024年2月02日
調査手法:インターネット調査
調査対象:難聴を自覚している全国の20歳〜60歳以上の男女618人
(男性347人、女性271人)
調査機関:マクロミル
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合がある

<参考>日本ウェルリビング推進機構「難聴者の治療実態と生活に関する意識調査