ユニセフ(国連児童基金)は、女性器切除(FGM)を受けた上で生存している女の子と女性(サバイバー)は、現在世界に2億3,000万人以上いるという報告書を新たに発表した。

ユニセフ、FGMに関する新報告書を発表

今回発表された同データと8年前に発表されたデータと比較すると、サバイバーの総数は15%、つまり3,000万人増加しているという。

同データは、FGM撲滅に向けた進展の足取りは依然として鈍く、特にFGMが最も一般的に行われる地域では人口が増加する速度に遅れを取っており、FGMの慣習を2030年までに撤廃するという国連のSDGs(持続可能な開発目標)の達成にはほど遠いことを示している。

これを受けユニセフは、2030年までにFGMを無くすには、世界の減少スピードを27倍に加速する必要があるとした。

新報告書「女性器切除(FGM):世界的な懸念(原題:Female Genital Mutilation: A Global Concern)」は、女の子と女性の人権を侵害し、身体的、心理的、社会的に消えることのない影響を残す可能性のある行為であるFGMに関する最新の統計をまとめている。

報告書によると、最も多く行われているのはアフリカ諸国で1億4,400万件、次いでアジアで8,000万件、中東で600万件。また、世界各地の小規模なコミュニティや難民・移民先となっている国々でも、多くの事例があると推定されているという。

FGMの慣習が世界的に広まっていることはないが、FGMを実践している国で生まれる女の子の数は、世界の他の地域と比べて急速に増加していることが分析から明らかになり、FGMを未然に防止する今後の取り組みは、リスクにさらされている人口が多いところに向けなければならないとしている。

また同分析では、FGMを受けたサバイバーの10人に4人が脆弱で紛争の影響下にある場所で暮らしており、そこも人口増加が著しいことを示しているという。

この組み合わせの状況では、教育や保健サービスに負荷がかかり、リソースが危機対応に向けられ、ジェンダー不平等に取り組むプログラムが妨げられ、FGMに立ち向かうことが難しくなる。

しかし報告書は、前進は可能であり、軌道に乗りつつあることも明らかにしているという。

過去30年間の進捗の半分は、ここ10年間に遂げられたもので、例えばケニアでは、実施率が中程度から低程度に下がっているという。ほかにもシエラレオネでは、高程度からやや高程度に低下、エジプトでは以前のほぼ普遍的に実施されているレベルから改善されているとのことだ。

FGMをめぐる意識も変化しており、報告書によるとFGMの慣習があるアフリカと中東の国々の約4億人、つまり人口の3分の2がFGMに反対。

ユニセフもリーダーや地域社会に対し、ジェンダーによる差別と不平等をなくす努力の倍加、女の子のためのサービスへの緊急資金投入、女の子の自発的行動とアセットを持つことへの奨励、法律と政策における女の子の権利優先、質の高いデータを通じた実施状況の把握などを呼びかけていくとのことだ。