オムロンは、グループ全体での企業価値向上に向けた収益力と成長力の改善を目的として、「構造改革プログラム『NEXT 2025』」を策定し、全社的な構造改革の実施について決議したことを発表した。

■構造改革プログラム「NEXT 2025」の背景

同社は現在、世界約130カ国以上で4つのコア事業を展開。前長期ビジョン「Value Generation 2020」の10年間(2011年度~2020年度)においては、制御機器事業とヘルスケア事業が全社の成長をけん引し、地域別では中華圏が全社の業績拡大に大きく貢献したという。

しかし、現長期ビジョン「Shaping the Future 2030(SF2030)」の2年目となる2023年度は、中国経済の成長鈍化やサプライチェーンの混乱など、事業環境が想定以上に悪化。全社の成長をけん引する事業やエリアが一部に偏っていたことで、この急激な変化に対応できず、大幅な業績の悪化を招いたとのことだ。

そこで、同社が抱える本質的な課題に対して抜本的な解決に取り組むべく、2024年4月から2025年9月までを「業績の立て直し」と「収益・成長基盤の再構築」に集中する期間とし、「構造改革プログラム『NEXT 2025』」を実行、制御機器事業の早急な立て直しを含む収益・成長基盤の再構築に取り組むこととしたという。

なお、同変革プランに全社のリソースを集中させるため、当初2025年3月期までとしていた中期経営計画(SF 1st Stage)の目標を取り下げ、2024年4月1日~2025年9月30日までを「構造改革期間」とするとしている。

また、2025年10月1日~2026年3月31日までを次の中期経営計画の準備期間とし、さらに2026年度~2030年度を新たな中期経営計画の期間(SF 2nd Stage)とするとのことだ。

■構造改革プログラム「NEXT 2025」の概要

構造改革プログラム「NEXT 2025」においては、収益を伴った持続的な売上成長を確かなものとし、持続的な企業価値向上を実現すべく、5つの経営施策を実行するとしている。具体的には、以下のとおり。

(1)「制御機器事業リバイバルプラン」の実行

制御機器事業の再成長に向け、顧客起点かつ実効性の観点から同事業の現在の戦略・計画を刷新。具体的には、構造改革期間での制御機器事業の営業利益率の最大化と、SF2030で期待する成長を実現する成長基盤を確立するために、リソースアロケーションを見直して施策の実行を加速するという。

(2)ポートフォリオの最適化

各事業を取り巻く環境変化に対する耐性の強化と、収益を伴った持続的な成長を実現する事業・製品・エリアの各ポートフォリオの最適化を実施。同時に、データソリューション事業本部が主導するJMDC社のケイパビリティを活用した制御機器・ヘルスケア・社会システム事業領域でのデータソリューションビジネスの創造加速にも取り組むとしている。

(3)人員数・能力の最適化

顧客価値の拡大を実現し、収益を伴った成長を実現する人員・人件費構造を構築するために、グローバルに人員数・能力の最適化を実施。具体的には、現地の労働法・規則・規制に従って、国内約1,000名、海外約1,000名の合計約2,000名を削減することで、総人件費の適正化に取り組むとのことだ。

<希望退職者の募集概要>(日本国内のみに適用)
対象会社
オムロン国内グループ会社。ただし次の会社は対象外。
対象外とする会社
オムロンエキスパートエンジニアリング、オムロンキリンテクノシステム、オムロンサイニックエックス、オムロンヘルスケアマーケティング、オムロンベンチャーズ、オムロン太陽、オムロン京都太陽、JMDCおよびその子会社、ヒューマンルネッサンス研究所
対象者
2024年7月20日時点で、勤続年数3年以上かつ年齢40歳以上の正社員およびシニア社員
募集人員
1,000名程度
募集期間
4月10日~5月31日
退職日
7月20日(予定)

(4)固定費生産性の向上

グループ全体で固定費生産性の最大化を追求。具体的には、売上高に対する販管費の比率について中期的に30%未満(JMDC社連結影響除き28%未満。2023年度の見通しは32.7%)を実現する固定費規律の導入と運用の徹底に取り組むという。

(5)顧客起点マネジメントシステムの導入・運用

経営・事業・本社のマネジメントを顧客起点での思考・行動に変革する施策の導入と運用を実施。具体的には財務観点に加えて、顧客観点での事業統制とマネジメントの思考・行動を変革させる人事施策の導入・運用の徹底を目指すとのことだ。

■構造改革プログラム「NEXT 2025」により期待される効果と今後の見通し

同構造改革プログラムの実行により、通期連結業績として2025年度には2023年度見通し比で約300億円の固定費削減を見込んでいるという。なお、2023年度の通期連結業績予想の修正は、現時点で見込んでいないとしている。

また、構造改革プログラムにおける「(3)人員数・能力の最適化」に伴う特別一時金等の費用として、2024年度において特別損失の計上を想定。5月に公表予定の2024年度の通期連結業績予想に当施策が与える影響額については、確定次第、速やかに公表するとのことだ。