口臭の原因物質が特定の口腔細菌の「共生」で増加することが判明　口臭予防法や治療薬の開発促進に

大阪大学大学院歯学研究科 久保庭雅恵准教授、天野敦雄教授らとマンダムの研究グループは、特定の口腔細菌が共生するだけで口臭原因物質のメチルメルカプタン（※1）の産生が増加する、「口臭増強機構」を発見した。

今回同研究グループは、口臭原因物質の中でも微量で強い臭気を発するメチルメルカプタンに着目し、その産生に歯周病関連菌である口腔細菌のFn菌（※2）が大きく関与していることを見出したという。

また、Fn菌と口腔常在細菌のSg菌（※3）が同一環境下に共生するだけで、Fn菌のメチルメルカプタンの産生量が約3倍に増加することを発見。

さらに、そのメカニズムとして、Sg菌から排泄されたオルニチンによって、Fn菌のメチオニン代謝経路が活性化され、メチルメルカプタン産生が増加することを明らかにしたとのことだ。

同研究グループは、これらの成果により、今まで問題視されていなかった口腔細菌内の関係性や口臭発生要因に対して、選択的かつ集中的に対処することで、今まで以上に効果的な口臭予防法や治療薬の開発が促進されることが期待されるとしている。

また、ヒト常在細菌間の相互作用・共生の理解を深めることで、体臭などさまざまなニオイケア製品開発への応用が期待されるとのことだ。

なお、同研究成果は2024年1月の「mSystems」誌に掲載されている。

（※1）メチルメルカプタン
硫黄を含むガスで、微量でも非常に強力な臭気を発する。口臭の主要な原因物質としてだけでなく、歯周病の悪化因子としても注目されている。

（※2）Fn菌：
Fusobacterium nucleatum（F. nucleatum）のことを示す。グラム陰性細菌で、人間の口腔に存在し、歯周病の原因にもなっている。

（※3）Sg菌：
Streptococcus gordonii（S. gordonii）のことを示す。グラム陽性球菌。

＜参考＞
大阪大学大学院歯学研究科・マンダムの研究グループ『特定の口腔細菌の“共生”で口臭原因物質が増える「口臭増強機構」を発見』