パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda(デューダ)」は、20~60歳代のビジネスパーソン1,000名と企業の人事担当者500名を対象に「残業」をテーマとした調査を実施し、結果を公表した。
【残業の上限規制の現状】
●7割の企業で、残業削減に課題感。削減対策を取っている企業も7割。業種別では「運輸・物流」が最も多く8割
企業に対し残業の上限規制の現状について確認したところ、全体の70.4%が残業削減に課題感をもっていることが明らかに。業種別では、上位から「メーカー」74.8%、「IT・通信」72.4%、「運輸・物流」69.7%と並ぶ。
次いで、直近1年間に取った残業削減対策の有無を尋ねると、「取っている」と回答した企業は全体で70.2%に上った。
業種別でみると「運輸・物流」が最も高い割合で78.8%。「運輸・物流」は、残業時間の上限規制の適用猶予を受けており、2024年4月から適用が開始されるため、特に喫緊の課題として企業割合が高まったと同社は考察している。
【個人の残業実態と捉え方】
●残業時間が「減ったと思う」は、計18.7%にとどまる。最も残業時間が減ったのは「メーカー」となり-1.1時間。一方「運輸・物流」は-0.2時間
次に個人へ、時間外労働の割増賃金率の引き上げが始まった2023年4月を起点に、4月以前と以後(12月まで)の残業時間(月平均)を比較し、どのように変化したかを調査。
結果として、「変わらないと思う」の回答が最も多く68.6%となり、「減ったと思う」の回答は計18.7%にとどまった。
具体的な残業時間では、2023年4月以前の平均は「14.8時間」、4月以降が「14.5時間」と差分は-0.3時間になることが明らかに。また、最も残業時間が減ったのは「メーカー」となり-1.1時間。一方「運輸・物流」は-0.2時間となっている。
7割の企業で残業削減のため対策を講じている様子がみられたが、残業時間の減少傾向は低く推移しているようだ。
●残業理由は「業務が終わらないため」。20代は「残業代を得るため」が約半数
個人に対し残業をおこなう理由を尋ねたところ、「業務が終わらないため」が2位を大きく引き離し75.3%で最上位に。
20代~60代のどの年代においても7割以上が同様の回答する結果となった。
この結果には、業務量と労働力の不均衡さが表れており、最新のdoda転職求人倍率レポートからも人材不足が読み取れるという。そのため、一人あたりの業務負担が大きくなることで、残業が発生する構造がみてとれる。
この結果に同社は、7割の企業が残業削減の対策を取っているにもかかわらず、残業時間にほぼ変化が見られない要因の一つといえるとしている。
●「隠れ残業」の経験は26.3%。20代は「職場の文化」、30代は「隠れ残業を評価する風潮があるため」と、年代により実施理由に差
併せて、出勤前や退勤後、または休日など、申告をおこなっていない又は申告よりも長くはたらく「隠れ残業」の実態を確認。
「隠れ残業」を行ったことがある個人は26.3%で、実施する理由はの残業理由と近しい「労働時間と業務量があっていないため」が41.4%で最多に。
また、年代ごとに確認すると、20代は「隠れ残業が職場の文化として習慣化しているため」、30代は「評価する風潮があるため」、40代は「残業の申請が面倒なため」といった理由が、全体平均より10ポイント以上高い結果を示した。
●20、30代の6割は、残業時間の多さが転職を検討するきっかけになると回答
最後に、残業時間の多さをきっかけに転職を考えるかを尋ねたところ、計55.5%が「考える(考える18.9%、やや考える36.6%)」と回答。特に、20、30代で顕著となっており、20代(計62.0%)、30代(計65.0%)と60%を超える結果が見られた。
転職を考える残業時間は、「40~60時間未満」が一番多く12.9%、次いで「10~20時間未満」の11.5%が並ぶ。
一方で、「残業がない」も18.0%と高い割合を示した。「残業をする理由」の結果の通り、残業代を賃金の一部と考え、まったく得られないことへの懸念もうかがえる。
【調査概要】
個人対象者:全国の従業員規模10名以上の企業ではたらく20~60歳代男女、会社員(正社員・契約社員)※人事担当、取締役相当、代表取締役・社長相当、その他管理職、管理職ではないが管理職相当を除く
集計対象数:1,000名(性年代均等割付)
企業対象者:全国の従業員規模10名以上の企業ではたらく20~60歳代の人事担当者
集計対象数:500名
調査手法:インターネット調査
調査期間:2023年12月28日~2024年1月5日
※集計時に小数点2位以下を四捨五入しているため、総計が100.0%とならない場合あり。
<参考>
doda『「残業」に関する調査』