Z世代の2人に1人が推し活経験者 ビジネスチャンスにもつながりうる推し活層の消費行動に迫る

近年、若年層を中心に生活者の消費形態は「モノ消費」から「コト消費」へと移行をみせている。「コト消費」の代表格であり、2021年には新語・流行語大賞にもノミネートされた「推し活」は、若年層を中心にアイドル、アニメをはじめ、近年ではボーカロイド、VTuberなどと裾野を広げつつある。

今回AMPでは2023年の世の中の推し活事情とともに、企業のビジネスチャンスにもつながりうる推し活に秘められた消費行動について紹介していく。

2023年の推し活の実態

推し活はもはやライフワーク化、Z世代の2人に1人が推し活をしていると回答

現在推し活をしているか(画像引用元:Paidy「みんなの推し活大調査2023」

Paidyが実施した「みんなの推し活大調査2023」によると「現在推し活をしているか」という質問に対し、全体の約4割(39.4%)、Z世代の約半数(49.0%)が「している」と回答。特にZ世代を中心に推し活はライフワークと化していることが明らかとなった。

推し活への平均消費額は月1万円以上

また推し活メディアoshimoaが実施した「推し活女子の消費に関するアンケート調査」によると、「推し活をすることによって若年層の女性が月にいくらお金を使うのか」という質問に対して、公式グッズやライブなどに使用する費用や遠征の際の交通費などを含めて、平均して16,091円という結果が得られたという。

特に可処分所得が少なく、自由な時間が制限されている18歳以下の年齢層においても、約半数以上の人が月に5,000円以上を費やし、また6人に1人が10,000円以上を推し活に使っているなど、推し活関連商品・サービスへの消費意欲の高さがうかがえた。

月に推し活に消費する費用(画像引用元:Oshimoa公式サイト

推し活層の消費行動

近年クラウドファンディングを通じた応援広告の出稿が広がりを見せているなど、推しに対する投資を厭わないことを信念とする「推し活」がもたらす経済効果は大きい。

こうしたロイヤリティの高い推し活層の消費行動の実態を捉えることは企業のビジネスチャンスにもつながるといえる。

推しがコラボした商品・サービスを購入する人の割合は9割以上

oshimoaの「推し活女子の消費行動に関するアンケート調査」によると、推しが広告に起用されたり、コラボしていることをきっかけに、商品・サービスを購入したことがありますか?」という質問対して、約9割の人が「はい」と回答。

当該商品やブランドに推しが関連しているか否かは、購買の意思決定に大きな影響を与えることが明らかとなった。

広告起用やコラボをきっかけに商品・サービスを購入したことがあるか(画像引用元:Oshimoa公式サイト

過去のコラボ実績もその後の消費行動に大きな影響を与える

また同社の「過去に推しが広告などで起用されていた企業だからという理由で、商品・サービスの購入を決めたことがありますか?」という質問に対して「はい」と回答した人の割合は、全体の約7割という結果に。

過去に推しが広告に起用されていたと認知されることによって、購買意欲は高まりを見せることが明らかとなった。

過去の広告起用をきっかけに商品・サービスを購入したことがあるか(画像引用元:Oshimoa公式サイト

推しとのコラボは長期的な広告効果にもつながる

「推しとのコラボがきっかけに、商品やサービスを愛用したりリピートしたりするきっかけになった経験がありますか?」という質問に対しては、約67%が「はい」と回答。

「推しとコラボしているから」という要因が初回購入のハードルを下げるトリガーとして作用し、商品自体の機能性や有用性を認知させることで、ロイヤリティの高い長期的な顧客形成をも実現しうるとのことだ。

コラボをきっかけに商品・サービスをリピートした経験があるか(画像引用元:Oshimoa公式サイト

必ずしも推しとコラボしている必要はない 推しを感じられることが重要

また推し活女子の消費行動を刺激するためには、推しを感じられるか否かも、重要なカギになるという。

実際に「推しが商品に関連していなくても、メンバーカラーや推しを想起させる色を意識して、商品・サービスを購入したことはありますか?」という質問に対して、「はい」と答えた人の割合は9割を超えるという結果に。

カラーバリエーションが豊富な商品や、他社の類似商品との選択に迷った際には、推しのメンバーカラーの商品を購入するなど、商品によって推しを想起させることが出来るか否かが、消費者の購買意思決定の際に重要な決め手になることが明らかとなった。

推しを想起することによって商品・サービスを購入したことはあるか(画像引用元:Oshimoa公式サイト

推し活マーケティングの成功事例

商品・サービスに何かしらの形で推しが関連していることは、推し活層の購買意思決定に大きな影響をもたらすことが明らかとなった。本記事では推し活をしている人々の消費心理を巧みにとらえた、推し活マーケティングの成功事例を紹介。

カラオケパセラ 推し会パック

東京を中心に店舗を展開するカラオケチェーン「カラオケパセラ」ではターゲットを推し活層に絞った「推し会パック」を販売。推しの存在を想起させる「推しカラードリンク」や「推しカラーハニトー」の提供だけでなく、ペンライトや尊いボタンの貸し出しなど、包括的に推し活のサポートを行っている。カラオケという個室空間を最大限活用することによって、「コト消費」に価値を置く近年の消費形態の動向をつかんだ、推し活体験の場として機能している。

サンリオ エンジョイアイドルシリーズ

サンリオが展開する「エンジョイアイドルシリーズ」は推しを楽しく応援することを目的として2019年に誕生。うちわケースやアクリルスタンドの収納ケースなど、推し活層の需要をとらえた便利で機能性の高い商品の販売を行うことで、人々の推し活をサポートしている。

S&B まぜるだけのスパゲッティソース

エスビー食品は「混ぜるだけのスパゲッティソース」シリーズの総合的プロモーションとして、グローバルボーイズグループ・INIを起用した「キミの推しスパは!?」キャンペーンを実施。コラボパッケージの販売やブランドサイトの公開、SNSを通じた限定コラボグッズが当たるキャンペーンによって話題化を図った。

2023年はコロナ禍で軒並み中止とされてきたリアルのイベントが続々と復活し、推し活も活発化する1年となった。今後も推し活関連の消費行動がもたらす経済効果に期待していきたい。

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