【前編】“美しさ”のために“動物”を犠牲にしない。タイの国民的コスメブランド「シーチャン」に見る化粧品ブランドのあり方

1948年に創業、主力商品の「トランスルーセントパウダー」が世界的にヒットしているタイのコスメブランド「SRICHAND(シーチャン)」。日本では2020年6月に同商品が発売され、「マスクをしても化粧が崩れない」と人気に火がついた。

タイコスメは、韓国、中国に続くトレンドとして国内で支持が広がりつつあり、シーチャンはその人気を先導している。「動物虐待をしない」方針を持つクルエルティフリーでもあり、高品質・プチプラだけでなく、環境や社会にやさしいブランドを目指している。

動物保護団体のヒューマンソサエティによれば、2023年10月現在、化粧品の動物実験を禁止している国は44ヵ国にのぼる。世界的に禁止の傾向が高まるなか、日本では未だ規制されていない。

シーチャンおよびシーチャンの日本総代理店を務める日本機能性コスメ研究所への取材を通じ、世界的に愛されるコスメブランド・シーチャンの信念や取り組みを聞いた。

フェイスパウダーは、世界で累計600万個を販売

1948年に小さな漢方薬局からスタートしたシーチャンは、当時からタイのハーブをベースにしたパウダーを処方していた。タイは20万種以上の薬草やハーブなど化粧品原料の産地であり、高品質ながら低価格のコスメを開発しやすい環境がある。創業当初から人気は高かったというが、2007年に2代目経営者のRawit Hanutsaha氏が家業を継いだ際は、中高年の顧客がメインだった。

昔ながらのブランドというイメージを払拭するため、「トランスルーセントパウダー」を全面的にリブランディング。若年層にも人気が広がった

“古いイメージ”を払拭し若年層の心をつかみたいと、2015年にリブランディングをおこない、「トランスルーセントパウダー」のパッケージと中身を一新。消費者の声に真摯に耳を傾け、高品質・プチプラ・デザイン性を突き詰めたところ、世界的なヒットにつながった。

アジア最大級のドラックストアチェーンワトソンズ台湾が主催する「WATSONS HWB AWARDS(健康美容大賞)2022」ではBEST COSMETICS BRAND OF THE YEARを受賞。トランスルーセントパウダーは、2015年から2022年頭までの累計で600万個以上を販売するロングセラーとなっている。

艶肌へ導く「Bare(ベア)パーフェクト グローイング トランスルーセントパウダー」は日本限定商品。細かいラメ入りで上品に仕上がる
スキンケア効果も得られる「ブライト&ブルーム 24 スキンケアパウダー」は、つけたまま寝られる人気アイテム

日本では、コロナ禍にトランスルーセントパウダーが大ヒット。日本機能性コスメ研究所とシーチャンの2社で共同開発した、「ブライト&ブルーム 24 スキンケアパウダー」や「Bare(ベア)パーフェクト グローイング トランスルーセントパウダー」など、日本市場向けに開発した商品も好調である。

動物実験をせず、イノベーションを促進する

そんなシーチャンが創業当初から守り続ける方針が、「動物虐待をしない」クルエルティフリーであること。「美しさは動物福祉を犠牲にしてはいけない」という信念を核として、安全性と高品質に加え、社会や環境を思いやるブランドを貫いている。

2023年9月20日〜26日の動物愛護週間に向けて、水彩画アーティストのタケダヒロキさんとのコラボデザインアイテムを発売
鮮やかな色彩と植物、かわいらしい動物をかけ合わせたイラストは、持ち歩きたくなるデザインだ

なぜ動物実験をせずに安全で高品質な製品を作り続けられるのかと尋ねると、以下の回答を得た。

「革新的な研究への多額な投資により、最先端の技術や国際規格に準拠した高度な試験方法を探索している。当社の研究チームは、多様な肌のタイプや色調を分析し、製品が幅広い顧客のニーズに沿うよう努めている。イノベーション、持続可能性、包括性を統合することで、従来の美の基準を超えた総合的なブランド体験を生み出している」(シーチャンの広報担当者)

クルエルティフリーの姿勢を表す目的で、水彩画家タケダヒロキ氏とのコラボデザインアイテムを2023年9月に発売した。動物と草花を融合させた水彩画で知られ、Instagramでは13万人以上のフォロワー、受注制作は2年待ちと勢いのあるアーティストだ。

アーティストのタケダヒロキさんも動物実験の廃止推進に向けた取り組みに賛同し、コラボが実現
製品をひと通り使ってみたところ、品質へのこだわりが感じられた。日焼け止めはテカリやベタつきがなく軽い使用感だった

こういった取り組みやインフルエンサーとのコラボなどを通して、動物実験をしないブランドの精神と革新的なアプローチを伝えているそうだ。

シーチャンでは動物実験の廃止推進に向けて、この限定アイテムの利益の10%をNPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVA)に寄付すると発表している。

取材・文:小林香織
写真提供:日本機能性コスメ研究所

【取材協力】
日本機能性コスメ研究所
シーチャン

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