エフアンドエムは、今年度の賃金引き上げに関するアンケート調査を実施し、その結果を公表した。
2023年10月に最低賃金額の改定が行われ、引き上げ後の最低賃金額(全国加重平均)は1,004円となった。これは前年度と比較すると平均引き上げ率4.5%、引き上げ額43円で、1978年に最低賃金の目安制度が始まって以降、過去最高の引き上げだという。
新型コロナウイルス感染拡大の経済的影響が特に大きかった2020年を除き、ここ数年の最低賃金改定は高い引き上げ幅が続いているとのことだ。しかし、経営資源が限られた中小企業では賃金引き上げが難しいこともある。そこで同社は、その実態を把握するため同調査を実施。
■最低賃金の引き上げ対象者がいない企業が半数を超える一方、宿泊・飲食業では半数以上が引き上げ対象
2023年10月からの最低賃金引き上げに際し、改定後の最低賃金条件を満たさず引き上げ対象となる従業員(以下、対象者)はいるか聞いたところ、「対象者はいない」が58%で1,350社、「対象者がいる」が30%で701社という結果に。
対象者について業種別でみると、「対象者はいない」という回答は建設業で69%、情報通信業で70%と、全体の結果と比べて割合が高いことが明らかになった。
一方、「対象がいる」という回答が多かったのは、宿泊業・飲食業が57%、医療・福祉が48%という結果に。
■対象者がいる企業の4割以上は、対象者以外の従業員の賃上げは行わない
「対象者がいる」と回答した701社に対して、対象者以外の従業員にも賃上げを実施するか尋ねた。
その回答は、「対象者のみの賃上げで他の従業員の賃上げは行わない」が44%で305社、「対象者の賃上げ額と同等かそれ以上の賃上げを他の従業員に実施する」が26%で182社、「対象者の賃上げ額には満たないが、一定額の賃上げを他の従業員に実施する」が11%で80社、「対象者と同程度の賃金を支給している従業員に対してのみ賃上げを実施する」が9%で61社という結果に。
また、地方別でみると、九州・沖縄地方では、全体の割合よりも高い37%の企業が「他の従業員へも同等程度の賃上げをする」と回答。
■改定後の最低賃金と自社内の最低賃金との差額は100円以内が50%
「対象者はいない」と回答した企業1,350社に対して、改定後の最低賃金と自社内の最低賃金との差額を尋ねたところ、最も多かったのは「+30円以内」で21%、続いて「+51~100円」が15%、「+31~50円」が14%と、100円以内の企業が50%を占めた。
【調査概要】
調査対象:エフアンドエムクラブの会員企業2,332社
調査期間:10月1日~31日
調査機関:エフアンドエム中小企業総合研究所
<参考>
エフアンドエム中小企業総合研究所「2023年10月最低賃金引き上げに関する実態調査」