フィリップ・モリスの日本法人フィリップ・モリス・ジャパン合同会社(以下PMJ)は、11月16日、都内でメディア関係者に向けたセミナーを開催。令和5年度の税制改正を前に、紙巻きたばこと加熱式たばこを取り巻く税制について考えるというもの。当日は公共政策有識者や経済アナリスト、飲食店・販売店経営者らが招かれ、それぞれの視点から活発な意見が交わされた。
日本における紙巻たばこ、リトルシガー(葉巻たばこ)の売り上げは、段階的なたばこ税率の改定もあり、2018年から2022年にかけて1,300億本から970億本に減少。一方で、2013年から販売が開始された加熱式たばこは、徐々に売り上げを伸ばし、2017年の253億本から2022年には倍となる522億本を売り上げ、日本における売り上げの4割弱を占めるまでになった。
PMJ 日本法人 副社長 小林献一氏は、「たばこを起因とする慢性閉塞性肺疾患(COPD)や癌などを引き起こすのは、ニコチンではなく、紙巻たばこの煙に含まれる化学化合物であることは、米国食品医療局(FDA)を含む多くの規制当局や専門家から見解が示されており、加熱式たばこから発生する有害成分の量は、紙巻と比べて平均して90%以上低減されることが科学的に証明されている」と語った。
現状の税制では、紙巻たばこの「1」に対し、加熱式たばこは「0.8」の比率で税額が設けられているが、令和5年税制改正大綱において、防衛力の抜本的強化を目的に安定的な財源を確保する為、段階的なたばこ税の引き上げ、紙巻きたばこ、加熱式たばこの税率の見直しが検討されている。
セミナーでは、アメリカ・ワシントンDCを拠点とし、数々の公共政策や法令に影響を与えてきた先進的政策研究所(PPI)のリンゼイ・マーク・ルイス氏の講演が設けられた。
ルイス氏は、THR製品(たばこハームリダクション製品=加熱式たばこ・電子たばこなど)の普及率が高い国は、THR製品の普及率が低く制限的な政策を取っている国と比べ、紙巻たばこの喫煙率が急速に低下していることに言及。
一方で、各国が喫煙者の紙巻たばこからTHR製品への意向を推奨する為に様々な規制や法改正などをおこなう中、日本における加熱式たばこ・電子たばこと紙巻たばこの国際税負担格差が、国際平均値よりも73%も税差が小さい(THR製品の税制優遇が他国に比べ限定的)ことに着目し、「日本は、成人喫煙者の紙巻たばこからの脱却と加熱式たばこへの切替えにおいて、世界をリードする国のひとつ。加熱式と紙巻の税差が少ないにも関わらず、10年足らずの間に、成人喫煙者の50%近くを加熱式たばこに切り替えることに成功した。これは本当に驚くべきことであり、世界各国が見習うべきリーダーシップの見本である」と解説した。
そして日本におけるたばこ税制の在り方について、「加熱式たばこ製品には、現行の混合方式ではなく、特定の物品税を課すことで、歳入目標の維持が可能になると同時に、日本を国際基準に沿ったものにすることができる。そうすることで、害の低減を促すような、より高品質で魅力的な製品の開発にインセンティブを与えながら、インフレ調整後でも継続的に高水準の税収を支える制度を課すことが可能となる」と提言した。
セミナー後半には、たばこに関連する各業界の代表者を招いたパネルディスカッションがおこなわれた。
東京・秋葉原のミマツたばこ店長、山本壮司氏は「売上の4割が加熱式たばこ。最近は種類も増えて幅広い年齢層に購入頂いている」と加熱式たばこの需要の高まりを実感している。
都内でカフェやレストランを経営する株式会社グローバル・ハーツ代表取締役・プロデューサーの村田大造氏は「飲食を伴う場所では紙巻の匂いが気になるので、加熱式が吸えるエリアを設けている。一方で深夜帯のクラブなどは、喫煙ができないと売り上げが下がるので、紙巻と加熱式のエリアを分けて利用できるようにしている。現状はうまくすみわけが出来ている」と語った。
また消費経済アナリストの渡辺広明氏は「今や国民的小売業となっているコンビニエンスストアの利用者の約1/4がたばこ購入者。税制改正は喫煙者に寄り添った慎重な姿勢が必要」とした上で、「たばこは健康リスクもあるが、お酒も食事も同じ。であれば、よりリスクの少ない加熱式が普及することが望ましい。理想としては現状の税差を維持し、欧米並みに広げていくのが理想」と意見を述べた。