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パナソニック株式会社エレクトリックワークス社(以下、パナソニック)は、千葉県市川市(以下、市川市)と10月27日に「EV用充電インフラの整備促進及び啓発に向けた協定書」を締結した。本協定により電気自動車(EV)用の充電インフラの整備を促進し、市川市のカーボンニュートラルや災害レジリエンス強化への貢献を目指すという。
また、パナソニックが2022年10月に設立した脱炭素に向けた共創型コミュニティ「everiwa(エブリワ)」の活動の一環として、地域から社会問題解決を目指す共創プロジェクトの第一弾、「everiwa no wa 市川 Action」の開始が発表された。自治体だけでなく、異業種の企業がアクションパートナーとして参画する本プロジェクトが目指す未来を、市川市役所でおこなわれた協定締結式の模様を通じて紹介していく。
EV充電器を貸したい人と借りたい人をつなぐプラットフォーム
2050年に温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルの実現に向けて、パナソニックはグループ全体として3億トン以上のCO2排出量削減を目指す「Panasonic GREEN IMPACT」を宣言している。電化、エネルギー利用の効率化、水素など脱炭素エネルギーの普及などを通じてCO2削減に取り組む同社は、新規事業として、環境対応車向けの充電器やソリューションで貢献ができないかと考えた。
それがEV充電インフラのシェアリングサービス「everiwa Charger Share」だ。充電器を貸したい人(EVチャージャーホスト)と充電器を借りたい人(EVユーザー)をつなぐプラットフォームとなっている。各地域に設置された充電器をシェアリングでオープンにすることで、充電スポット数を増やし、EVの保有率アップを図る。街中にEVが増えることで、再エネ利用や災害時の非常用電源としての活用など、レジリエンス強化につなげていく。
また、自治体や企業と提携し、公共・商業施設やレストラン、コンビニ、企業の駐車場など生活圏内に充電スポットが密集した状態をつくることで、EVへの乗り換えに不安を持つ層にも大きな訴求が見込まれるという。
全国初のモデル地域として市川市が決定
そうしたシェアリングサービスの特長を生かしたモデル地域創出の検討を進める中、全国に先駆けて市川市が手を挙げた。
同市は「健康被害や気候災害から市民や事業者を守り、持続可能で住みやすいまちづくり」を掲げ、カーボンニュートラルの実現には産官学連携の強化が必要と考えており、パナソニックと目的が合致。「EV充電に不安のないまちづくり」に向けて協働するため、今回の協定締結に至った。
10月27日に市川市役所でおこなわれた締結式には、田中甲 市川市長と、パナソニックエレクトリックワークス社 大瀧清 社長が出席し、調印を交わした。
共創プロジェクト「everiwa no wa 市川 Action」の名のもと、インフラ整備と意識啓発の両輪でEV化を推進していく。具体的には、市川市第一庁舎・大洲防災公園(共に設置済み)などの公共施設への設置から着手し、今後は民間施設への設置を促進していくという。また、市民への環境意識啓発として、「EVのあるくらし」を身近に感じてもらうべく、EVバッテリーからの給電体験なども実施が予定されている。
締結に際して、田中市長は「カーボンニュートラル元年を掲げた年にこの話を頂けたのはありがたい。脱炭素の中心地域としてこのアクションを進めていく。市川市は新しい建物が次々と経っているので、民間と連携を図りながら充電設備の充実につなげていきたい」と意欲を見せた。
また、パナソニックの大瀧社長は「アクションプランとして地方自治体と提携したのは全国で初めて。今年度中に公園や公民館など8か所に充電インフラ設置を予定しており、是非これを成功させて全国にこの輪を広げていきたい」と展望を述べた。
スマートフォン1つで完結するシェアリングサービス
同日には、市川市役所第一庁舎地下駐車場に設置済みのEV充電器がメディアに公開された。ここからはシェアリングサービス「everiwa Charger Share」の特徴とサービス内容を紹介していく。
同システムは、戸建てや集合住宅、商業・宿泊施設など誰でもEV充電器を設置できる「ホスト」となることができ、誰でも利用可能。ユーザーはスマートフォンにダウンロードをした専用アプリを通じて、充電器のスポット検索や予約、オンライン決済までを完結することができる。
またオンライン決済にはみずほ銀行が提供する決済サービス「everiwa」を使用。アプリを通じて日時を指定した時間予約が可能なほか、利用可能なスポットを探して、当日予約なしの現地利用もできる。
一方、ホスト側は、パナソニック製の通信機能つき専用チャージャーを導入する場合に、1台145,500円(希望小売価格、税抜)と導入コストがかかるが、既存の普通充電器であれば通信機能をつけることで、メーカーを問わずに登録をすることが可能となっている。
料金設定は自由。昼と夜、平日と週末など、時間帯を分けた設定もでき、マンションや宿泊施設では、特定ユーザー向けの割引料金なども設定が可能だ。365日オペレーターによる電話サポートのほか、充電サービス利用中に発生したシステムやサポートではカバーできない、トラブルには損保保険ジャパンが提供する保険が用意されている。
市庁舎駐車場でおこなわれたデモンストレーションでは、スマートフォンを使った現地予約が披露された。充電スポットに貼られたQRコードをスマートフォンで読み込み、Bluetoothを通じて使用希望時間を選択。オンライン決済が正常に処理されると通電が開始される。地下駐車場という性質上、スマートフォンの電波環境によって時間を要する場面もあったが、概ねスムーズに充電器の利用が完結できていた。
市庁舎では1時間220円の料金設定。1時間3キロワットの充電出力だが、「1時間でも20キロ前後の走行電力は充電できる。役所でちょっとした用事を済ませる間にも是非利用して欲しい」と担当者は呼びかける。今後は6キロワットの出力強化版や、従量制も検討されているとのことだ。
みずほ銀行と損保保険ジャパンも参画
締結式には、アクションパートナー企業として、前述のシェアリングサービスで、オンライン決済システムを担うみずほ銀行と、保険商品を提供する損保保険ジャパンの代表者も同席した。
今回の「everiwa no wa 市川 Action」において、みずほ銀行からは、「市川支店お客様駐車場での充電設備設置」「顧客基盤を活用した充電設備普及の貢献」、損保保険ジャパンからは「損保代理店へのeveriwa紹介」「イベント協力やお客様へのPR」と、各ビジネスの特性を生かした推進策が発表された。
パナソニックは、共創型コミュニティ「everiwa」のビジョン・ミッション等に共感する企業や団体を「エバンジェリスト」と名付けており、20社(10月24日現在)が参画しているという。
大瀧社長は「EV充電器のシェアリングサービスは日本ではまだ始まったばかり。共創型コミュニティという大きなコンソーシアムの中でその輪を広げていきたい。その為には企業や団体が肩を組み、時には組織の形も変えながら30年、40年という長期に渡る目線での取り組みが必要」と力を込めた。
取材・文:小笠原大介