近年、サウナの人気が高まっている。サウナ浴と水風呂の温熱交代浴によって得られる独特の感覚「ととのい」を求め、多くの人が今日もサウナ施設に集っている。

しかし、現代人が「ととのい」を得る手段は、サウナだけにとどまらない。デロンギ・ジャパンが実施した「コーヒーの飲用調査 2023年度版」によると、週1回以上自宅でコーヒーを飲む人の半数以上が、「ととのう」ためにとる行動として、ブラックコーヒーを飲むことを挙げている。また同調査では、自宅で毎日コーヒーを飲む人は、コーヒーを全く飲まない人に比べてQOLや自己肯定感が高いことも明らかになっている。

自宅でできる、手軽な「ととのい習慣」としてのコーヒー。興味深い調査の結果と、自宅コーヒーブームの実相を見てみよう。

「ととのい」とは何か

調査の内容に入る前に、「ととのい」について説明しておこう。「ととのい」とはもともと、サウナ愛好者の間で使われていた言葉。サウナ浴で身体を温め、水風呂で一気に冷やす温熱交代浴を繰り返すと、心身のコンディションが整い、宙に浮くような独特のポカポカ感が得られる。これが「ととのった」状態である。銭湯などサウナが設置してある施設には、温熱交代浴後に腰掛ける椅子などが設けられているが、これを「ととのいスポット」と呼ぶ人もいる。

サウナブームが拡大するにしたがって、この言葉も一般に普及。現在の「ととのい」は、温熱交代浴後の独特な状態を指すことはもちろん、単純にリラックスした状態を意味する言葉としても用いられている。

「ととのい」のために飲まれるコーヒーと、高い「ととのい」力

ここからは、本題であるコーヒーと「ととのい」の関係について見ていく。デロンギ・ジャパンが10月1日の「コーヒーの日」にあわせて行った「コーヒーの飲用調査 2023年度版」を参照。これは、全国47都道府県の20〜69歳の男女で、週1回以上自宅でコーヒーを飲む合計4,700人を対象に行われた調査となっている。また一部の質問では、コーヒーを飲まない人も対象にし、コーヒー飲用者との比較も実施している。

同調査では、人々がコーヒーを飲む目的が明らかになった。コーヒーに求めることを尋ねた質問には、70.5%が「心を落ち着かせる」と回答。残りの29.5%は「気合いを入れる」と回答しており、少数派となっている。7割が回答した「心を落ち着かせる」という言葉の意味するところは、つまるところ「ととのい」である。コーヒーは日常的な「ととのい」のために飲まれているといえる。

今回の調査には、コーヒーと「ととのい」の関係を直球に聞く質問もあった。対象の4,700人に、「心身をととのえたいか」とストレートに聞くと、約74.3%の人が「ととのえたい」と答えている。先ほどの70.5%という数字とほぼ一致しており、関係がありそうだ。

では、その人々は、いかにしてととのっているのか。現在行なっている「ととのう」ための行動という質問項目にその答えがあった。複数回答が可能なこの質問のトップ回答は、「ブラックコーヒーを飲む」で50.1%。「ミルクコーヒーを飲む」の31.8%も含め、コーヒーに関する回答をした人は全体の69.5%となっている。ここでも約70%という数字が出ていることから、コーヒー飲用者の約7割が“「ととのい」ツール”としてコーヒーを活用していることがわかる。なお「サウナ」と回答した人は10.5%にとどまる結果に。コーヒー飲用者にとっての“「ととのい」ツール”は、サウナ以上にコーヒーであることがわかる。

また、“おうちコーヒー“に「ととのい」を感じるタイミングを聞いた質問の答えには驚かざるを得ない。「コーヒー豆を選んでいるとき」が32.4%、「コーヒーを淹れながら香りを感じたとき」が53.4%、「コーヒーを淹れる音を聞いたとき」が39.%。コーヒーを飲まずとも、準備段階からすでに「ととのっている」人が少なくないのだ。コーヒーのリラックス効果の大きさを実感させられる数字である。

コーヒーでの「ととのい」効果の強さにさらなる太鼓判を押しているのが、コーヒーとQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の関係を調べた調査だ。この調査では、コーヒー非飲用者を含む全国の9,620人を対象に、心身の状態や時間ごとの満足度がコーヒー飲用者と非飲用者で、どの程度違うのか調べた。以下の表は、「ストレス発散度」「QOL」「仕事/学習の効率」など9つの項目で、調査対象者が100点満点で自己評価し、その平均点を表したものだ。

なんと、自宅で毎日コーヒーを飲む人の平均点は、全ての項目で非飲用者を上回った。特に、朝の時間の満足度では、8点近い差が出ている。また、仕事や勉強の休憩時間の満足度にも6.25点の開きが見られた。朝や休憩時間など、コーヒーが飲まれやすいタイミングの満足度には、特に顕著な差が出ている。やはり、“「ととのい」ツール”としてのコーヒーの力は確かなもののようだ。

コーヒーが支持される理由。「手軽さ」と「メニューの幅広さ」

調査では、コーヒーが飲まれる場所についても明らかになった。その答えは「自宅」だ。 回答者4,700人のうち、74.6%が、自宅でコーヒーを飲む頻度は「毎日」だと答えている。さらに、最もコーヒーを飲む場所を聞くと、63.9%が「自宅」と回答し、2位の「職場や学校」(22.1%)を大きく引き離した。コロナ禍が落ち着いて以降、多くの人が家の外に出るようになったが、それでもコーヒーといえば家で飲むものなのだ。“おうちコーヒー”は、コロナ禍のような外的要因に左右されない定番として、定着しているといえよう。

ここで、“おうちコーヒー”が支持される理由について考えてみたい。今回取り上げるキーワードは「手軽さ」と「メニューの幅広さ」だ。

まずは「手軽さ」。調査結果によると、自宅での1杯のコーヒーにかける平均金額は106.7円。一般的なペットボトル飲料より安く、毎日続けやすい金額といえる。ちなみに、年代別にこの平均金額を見ると、20代が134.7円と突出して高い。若い世代には、こだわり派が特に多いようだ。

続いて「メニューの幅広さ」だ。コーヒーのメニューにはドリップコーヒー以外にも、エスプレッソやデカフェ、さらにはカフェオレやカプチーノといったミルクを加えたものなど、多彩なメニューが存在する。調査では今後飲みたいコーヒーのアンケートもあったが、回答率はドリップコーヒーが1位ではあるものの、その率は幅広く分散している。2位と3位にはカフェオレとカフェラテがそれぞれランクインしており、ミルクメニューの人気も根強いようだ。

「ととのう」ために飲まれているコーヒーのメニューを聞いたアンケートでは、ドリップコーヒーが1位だが、カフェオレ、カフェラテといったミルクメニューもトップ10に6つランクインしている。また、「ととのう」ためのコーヒーに入れるものとしては、ミルクが48,9%、砂糖が31.3%となっており、やはりコーヒーにとってミルクは重要な相方のようだ。最新の家庭用全自動コーヒーマシンのなかにはミルクメニューに対応したものもあり、自宅でミルクメニューを楽しむハードルが低下しているのも、この結果の背景にあるのかもしれない。

ちなみに、ブラック派とミルク派で飲用者の人物像が違うという、面白い調査結果も出ている。ブラック派にはアクティブな体育会系、ミルク派には、おうちでまったりしたいインドア系が多いという結果が出ている。コーヒーは、多彩な消費者のニーズを満たしている飲み物といえよう。

明日から始められるコーヒー習慣

今回紹介した調査を通していえるのは、コーヒーはQOLを向上させうる手軽な“「ととのい」ツール”であり、その効果がユーザーの声から実証されているということだ。朝起きての1杯、昼食後の1杯、在宅勤務中の1杯など、コーヒーは様々なシチュエーションに適応し、リラックス効果をもたらしてくれる。1杯100円程度で金銭的負担も軽い。日々の暮らしに満足をもたらすコーヒー習慣を、あなたも始められてはいかがだろうか。

文:畑野壮太