東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)と国立大学法人東京大学(以下、東京大学)は、100年先の心豊かなくらしの実現に向けて、プラネタリーヘルスを創出するために、100年間の産学協創協定を締結したことを発表した。
同協定では、プラネタリーヘルスの創出を目的とした協創プロジェクト「Planetary Health Design Laboratory(以下、PHD Lab.)」を立ち上げ、JR東日本グループの駅・鉄道といったインフラを実験場として、東京大学の多様で先端的な知を実証し、未来のくらしづくりに取り組むという。
PHD Lab.の拠点として、2024年度末にまちびらきをむかえるTAKANAWA GATEWAY CITYに、日本で初めてプラネタリーヘルスをテーマにしたキャンパス「東京大学 GATEWAY Campus」を開設。街を実験場として、世界中から集まる地球規模の社会課題の解決に取り組むとのことだ。
■産学協創の概要
(1)協創のビジョン「プラネタリーヘルス」
プラネタリーヘルスとは、人の経済活動が、健康や都市環境、地球上の生物・自然に与える影響を分析し、「人・街・地球」の全てがバランスよく良好に保たれるようなくらしづくりを目指す考え。
(2)協創の主な内容
①「東京大学 GATEWAY Campus」の開設
PHD Lab.の拠点となるキャンパス「東京大学 GATEWAY Campus」(約300坪)を、TAKANAWA GATEWAY CITY複合棟ⅠSouth 9階に開設。
同キャンパスには、コラボレーションエリアとラボエリアを設け、東京大学の様々なキャンパスと連携しながら、多様な研究室が集う学際的な場として、様々な企業・アクセラレーターとの協創を生み出すという。
②JR東日本グループのアセットを活用した実験および先端研究のくらしへの実装
TAKANAWA GATEWAY CITYをはじめとしたJR東日本グループのインフラを実験フィールドとして、プラネタリーヘルスに関する実験・研究を行うという。また、JR東日本グループのモビリティ事業、オフィス・商業といった生活ソリューション事業にもイノベーションをもたらしながら、ウェルビーイングなくらしづくりに取り組むとのことだ。
③グローバルなスタートアップエコシステムの協創
多様な企業との共同研究の促進や、プラネタリーヘルスをテーマとしたアクセラレータープログラムの共同実施などを通して、大学発ベンチャー数日本一(経済産業省令和4年度大学発ベンチャー実態等調査より)である東京大学発の起業をさらに促進するという。
■「東京大学 GATEWAY Campus」の主な研究概要
①「人にも地球にもスマートな街」×情報学・都市設計
街のデータ基盤(都市OS)を活用した新たなスマートシティのあり方を創出。データを活用して個人に最適な食事をおすすめしながら街全体のフードロスを削減するなど、「ヒト」起点で環境にも優しいスマートシティの実現に取り組むとしている。
②「世界一グリーンな街」×農学・環境学
約2.7ヘクタールの在来種を基調としたグリーンを舞台に、学生や地域の人とともに、世界一豊かで先端的な都市型緑化を目指すという。また、街で栽培した植物を原料として素材を生み出し、商品化までを行うサーキュラーバイオエコノミーにも取り組むとしている。
③「サステナブルな未来の食を試せる街」×生物工学・工学
サステナブルな未来の食の浸透のため、オフィスワーカー向けの食堂などで、培養肉などの東京大学発のサステナブルな食材を試せる機会を提供し、顧客のニーズを反映させた未来の食材開発を行うという。
④「人と地球にウェルビーイングな街」×医学・先端科学
ウェルビーイングなくらしのサービスの開発・実証に取り組む。そのために、住宅棟の住民向けに、最先端の睡眠解析アルゴリズムを取り入れた快眠に繋がるサービスを提供。さらにフィットネスでは、非接触の動作解析システムを実装し、効率的なトレーニングメニューを開発するという。
■同協定のグローバルパートナー
同協定により、JR東日本グループと東京大学のネットワークをあわせ、グローバルなスタートアップエコシステムを促進。主なパートナーは以下の通り。
・シンガポール国立大学
シンガポール国立大学とJR東日本は、9月19日にスタートアップエコシステムの構築に向け、連携協力の覚書を締結。シンガポール国立大学が主催する「Global Experience Cource(GEx)」と、東京大学が主催する「One Earth Guardians育成プログラム」が連携し、学生発案によるプラネタリーヘルスの実現の取組みを支援するという。
・パスツール研究所
東京大学とパスツール研究所は、10月3日に連携協力の意向趣意書に署名。パスツール研究所は日本に「Institut Pasteur du Japon(IPJ)」を置く予定で、その傘下の「Planetary Health Innovation Center(PHIC)」において、東京大学とパスツール研究所が協働するという。PHICではTAKANAWA GATEWAY CITYを実験の場として活用することを検討しているとのことだ。