私たちが快活で健やかなビジネスライフを送るために必要な身体づくり。リモートワークが増えたことで、新たに運動習慣を取り入れたり食事を見直したりしている人も多いのではないだろうか。
ここ数年、身体づくりの一環として「腸活」が注目されているが、プラスして取り入れたい身体づくりの新常識があるという。しらはた胃腸肛門クリニック横浜 院長の白畑敦先生は、腸活とともに注目したいのが口内環境だと話す。
Kenvueが20〜60代の男女3,000人を対象に行った「体調管理と口内環境に関する実態調査」と白畑先生のお話から、腸活に影響を及ぼす口内環境とそのケア方法について見ていきたい。
身体づくりのスタンダードになりつつある「腸活」
体調管理の基本となる食事からの栄養摂取。栄養を吸収して代謝させていくためには健康な腸が重要であることは皆が知るところであり、「腸活」の言葉を耳にする機会も多くなった。白畑先生も次のように腸活のメリットを伝えている。
「腸内環境が整うことで、消化が良くなったり代謝が上がったり、免疫力のアップにもつながります。また、脂肪の分解や代謝がスムーズにできるようになるので太りにくい身体になるでしょう。栄養素の吸収効率も良くなるため、トレーニングには欠かせないビタミンやミネラルなどの効率的な吸収も見込めます。体調管理だけでなく身体づくりにおいてもメリットは計り知れません」
Kenvueの行った実態調査によると、体調管理に課題を感じて身体づくりと同時に腸活を取り入れている人は、27.1%と約4人に1人。そして、腸活を行なっている人のうち96.3%が腸活を継続していきたいとしており、継続意欲が高いことが示されている。このことから、腸活が身体づくりのスタンダードになりつつあると言えるだろう。
腸内環境に影響を及ぼす?口内の悪玉菌の存在
白畑先生によると、身体づくりにおける大切なポイントは「バランスの良い食事に気をつけ腸内環境を整えること」「十分な睡眠をとること」「ストレスを減らすこと」の3つが基本だという。
バランスの良い食事に関しては、腸内細菌のバランスを整える善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)が豊富に含まれる発酵食品(ヨーグルトや納豆など)や、善玉菌の餌となる食物繊維を積極的に摂ることをおすすめしている。
ちなみに、腸内細菌には大きく「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3つがあり、そのバランスが重要となる。
「最適なバランスは人それぞれ違いますので、自分に合ったベストバランスを見つけて保っていくことが大切です」
そして、その腸内環境(腸内細菌)のバランスを乱しているのが、口内の悪玉菌である可能性が指摘されている。2019年に行われた研究では、唾液と便から採取した菌の約3割がどちらからも採取されたと発表(※1)。このことから、口内の悪玉菌(※2)が飲み込まれて腸まで届き、定着していることが考えられるという。
※1:Elife. 2019 Feb 12; 8: e42693.
※2:主な口内の悪玉菌は、虫歯の原因となるミュータンス菌や、歯周病の原因となるジンジバリス菌(P.g.菌)などが挙げられる。
しかし、Kenvueの実態調査では、腸活の実践者のうち約8割が口内の悪玉菌の影響について知らずに腸活に励んでいることがうかがえる。悪玉菌への適切なケアがなされずに腸内環境を乱してしまっている恐れがあるのだ。
口内の“悪玉菌ケア”に有効な方法とは?
腸内環境に影響を及ぼす可能性がある口内の悪玉菌は、「バイオフィルム」に潜んでいる。バイオフィルムとは、歯垢やプラークともいわれる口腔内の粘膜面に付着した菌の集合体で、歯の表面や舌、咽頭部にも存在。歯周病菌や虫歯菌などの悪玉菌と混ざり合っているものだ。
このバイオフィルムは粘着性のある膜を形成しており、通常の歯磨きだけでは十分に洗い流すことができないという。歯磨きやフロスでケアできるのは口腔全体の約25%(※3)であるため、悪玉菌のケアには薬用マウスウォッシュの併用が効果的だとしている。
おすすめされているのは、非イオン性の有効成分であるエッセンシャルオイル(※4)が配合された薬用マウスウォッシュ。イオン性のものは菌の増殖を抑える作用があるものの、バイオフィルムには浸透しにくい。一方、非イオン性のものはバイオフィルムに浸透するため、短時間で殺菌効果が現れるとのことだ。
いつもの歯磨きにプラスしてエッセンシャルオイル配合の薬用マウスウォッシュを使用すれば、悪玉菌が口内にある段階でケアが可能となり、悪玉菌が腸内に達することを防ぐことが期待できるという。
実際に行われた臨床研究においても、エッセンシャルオイル配合の薬用マウスウォッシュの併用が、バイオフィルムへの働きかけとして有効(※5)であることが示されている。バイオフィルムの減少率について「歯磨き+フロス」が2.5%であるのに対し、「歯磨き+エッセンシャルオイル配合の薬用マウスウォッシュ」は24.5%と、その効果は約10倍だ。
※3:J Dent Res. 1991 Dec; 70(12): 1528-30.
※4:1,8-シネオール、チモール、サリチル酸メチル、l-メントールなどの天然由来の植物から発見された成分。
※5:Bosma, M.L., et al. J Dent Hyg. 2022 Jun; 96(3):8-20.【試験デザイン】完全な予防措置の後、ベースライン、4週間、12週間後に被験者の口腔軟組織の状態、歯垢(バイオフィルム)、歯肉炎、歯肉出血の状態を評価。【被験者】軽度〜重度の歯肉炎を有するが重度の歯周病を有さない18歳以上の被験者156名。
“悪玉菌ケア”をプラスして健やかなビジネスライフを!
白畑先生も、身体づくりにおいて口内の悪玉菌ケアが有効であると考えているという。
「悪玉菌自体が直接体内で何か悪さをするわけではありませんが、悪玉菌が腸内に到達することで腸内細菌のバランスを壊してしまう可能性が指摘されています。人それぞれにベストな腸内細菌のバランスが存在しますが、そのバランスに対して影響を及ぼしてしまう可能性があるのです。そのため、悪玉菌の体内への侵入をできるだけお口の段階でストップ、コントロールすることは、身体づくりを行ううえで大切なポイントであり『腸内環境を整えること』に有効であると考えます。悪玉菌に対しても気を配りケアをすることは多くの人が見逃しているのではないでしょうか」
これまでの腸活といえば、善玉菌を摂取することが意識されてきたが、口内の悪玉菌ケアが身体づくりにおける新常識と言えるだろう。
まだまだ残暑も続きそうで仕事の疲れが溜まりがちな秋口から、まずは朝食の前に「歯磨き+エッセンシャルオイル配合の薬用マウスウォッシュ」でケアすることから一日を始めてみてはいかがだろうか。悪玉菌ケアを制することが、健康的なビジネスライフを後押ししてくれるかもしれない。
- 白畑敦(しらはた あつし)先生 しらはた胃腸肛門クリニック横浜 院長
- 2002年、昭和大学医学部を卒業。山王台病院、昭和大学藤が丘病院、関東労災病院、横浜旭中央総合病院を経て、2017年にしらはた胃腸肛門クリニック横浜を開業。日本外科学会、日本消化器外科学会、日本大腸肛門病学会、日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会、日本内視鏡学会、日本臨床肛門病学会、日本短期滞在外科手術研究会、大腸肛門機能障害研究会、内痔核治療法研究会所属。
- ●しらはた胃腸肛門クリニック横浜:https://yokohama-shirahata.top/