カインズ、新プロダクトブランドを開発し商品開発体制を刷新 多様化するライフスタイルに応える「8つのプロダクトブランド」とは

ホームセンター大手のカインズは、9月14日デザインオフィスnendo(ネンド)と協業したことを発表した。これにより、新たなプロダクトブランドを開発するとともに、商品開発体制を刷新するという。

ライフスタイルの多様化や昨今の物価高など、顧客を取り巻く環境や常に変化するニーズに応えるため、10年先を見据えたというリブランディングとはどのようなものなのか。都内でおこなわれた記者会見の模様を交えて紹介していく。

カインズ、新プロダクトブランドを開発し商品開発体制を刷新

カインズは“日本型のホームセンター”という業態を立ち上げた1978年の創業以降、2007年にオリジナル商品の開発へと舵を切った「SPA(製造小売業)宣言」を実施し、2018年にはIT技術を活用した快適で新しい購買体験の実現を目指す「IT小売業宣言」を掲げるなど、小売業やホームセンターの枠にとらわれない挑戦を40年以上続けている。現在は28都道府県下に236店舗を展開している。

カインズのオリジナル商品は国内外のデザイン賞を10年以上連続で受賞。SPA宣言をおこなった2007年度から2022年度までの間に、オリジナル商品の売上高が約2.3倍に伸長するなど、順調に推移している。

これまでのオリジナル商品の開発体制は、個人のアイデアを起点とし、バイヤー、マーチャンダイザー、事業部長といった“縦”の意思決定に基づくものとなっており、いわば、個人の力を中心とした商品開発の体制が基本であった。その強みとしては、顧客や市場のニーズを迅速に捉え、商品の開発、改良に結びつけるスピード感であり、「より良い商品」を提供する原動力にもなっていた。

一方で、この体制には弱点もあり、個人の力に頼るがゆえに、知見や技術が蓄積されにくいこと。商品展開も単発的であり、組織内で横断的な情報共有がされにくいことが課題だった。

そこでカインズは5年先、10年先を見据えて商品開発体制を刷新することを決めた。

東京オリンピックの聖火台デザインなどを手掛けた佐藤オオキ氏が中心となり設立されたデザインオフィスnendoと協業し、商品の提供価値と“カインズらしさ”を再定義することに着手することを発表。

顧客の生活シーンを想像し、暮らしにおける課題を抽出。そこから開発テーマに落とし込んでいくというプロセスを取るようにし、これまでのバイヤー個人のアイデアや技量に頼りがちで、商品カテゴリーごとの縦割りの環境だった体制を、ブランドチームによる企画・立案と“横断型”の意思決定プロセスに刷新することで、従来の事業部やカテゴリーを超えた、ライフスタイル重視の商品開発を目指すことになった。

カインズリブランディングプロジェクト プレス発表会 プレゼンスライドテーション資料より

カインズの高家正行代表取締役社長 CEOは「従来の個人による立案、縦の意思決定プロセスというカインズの強みを生かしつつ、チームによる立案、横の意思決定プロセスをハイブリッドに組み合わせることで、今後の商品開発をさらに進化させ、お客様のくらしに貢献していきたい」と期待を込める。

「従来の縦型の意思決定プロセスにチームによる横断型プロセスをハイブリッドに組み合わせる」と語る高家正行CEO

そしてリブランディングの柱として、カインズの提供価値を体現する「8つのくらしのコンセプト」に基づいた新たなプロダクトブランドを設立。

日々のくらしを「楽に」というコンセプトの「CAINZ Style」は、日々のちょっとした不便さやストレスを解消してくれるブランド。くらしを自分らしく「クリエイティブに」をうたう「CAINZ MAKE」は、豊富な選択肢の中から自由に組み合わせることができる。その他にも、ペット用品専門の「Cainz Pet」や自転車用品専門の「CAINZ CYCLE」、プロ用資材専門の「CAINZ PRO」といったように、これまで各事業部がカテゴリーごとにおこなってきた商品開発を、生活シーンやユーザー、ニーズを想定した8つのブランドにおいて展開していく。

カインズリブランディングプロジェクト プレス発表会 プレゼンスライドテーション資料より

またブランドを整理することで、今後は新たな店舗展開の可能性も。例えば、小規模な都市型店舗では1つのプロダクトブランドに特化させたり、プロダクトブランドを組み合わせたりすることで、新しいライフスタイルの提案も可能になるという。

今年6月にオープンした、カインズ・ハンズ新宿店では、8つのコンセプトに基づいた売り場づくりが実験的にスタート。2024年4月には第1弾として「CAINZ Style」のリリースが予定されており、その他のブランドも順次展開していく。

8つのくらしのコンセプトに基づいた新たなプロダクトブランド

記者会見後半には、高家CEO、土屋裕雅代表取締役会長、デザインオフィスnendoの佐藤オオキ氏らによるトークセッションがおこなわれた。

その中で佐藤氏は今回の取り組みについて、「単一の価値観を磨き上げていく事例は沢山あるが、複数の価値観を並走させるのは見たことがない。こんな価値も、あんな価値もあるよという懐の深さがあるブランディングは新しい。皆さんに愛されるブランドになっていく期待感がある」と語った。

また、土屋会長も「海外のホームセンターのような能動的にくらしに関与するDIYが広がれば、より豊かになる。その為の選択肢として手軽に始められるサービス。今後もユーザーの声を取り入れて商品に生かす。世界にないものをつくりたい」と意欲を見せた。

【左】トークセッションの様子
【中】デザインオフィスnendo佐藤オオキ氏
【右】カインズ土屋裕雅代表取締役会長

会場入り口には8つのプロダクトブランドの展示ブースが設けられ、2024年4月にリリース予定の「CAINZ Style」では、「省スペースで収納できる立つほうき」、「ほうきと一緒に収納できる立つちりとり」など、コンセプトを反映した商品が展示された。

その商品からどんな暮らしを実現するのか。単なる商品に留まらないビジネスを模索し、具現化していくカインズの今後の取り組みに注目したい。

2024年4月に第1弾としてリリース予定の「CAINZ Style」
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