三菱電機、国立大学法人岡山大学(以下、岡山大学)、国立大学法人大阪大学大学院工学研究科(以下、大阪大学)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)の支援のもと、1kHz以下の低周波でもヒトの脳サイズの領域の磁気粒子を高感度に撮像でき、電源装置の大型化を抑えた「磁気粒子イメージング装置」の開発を発表した。

同装置を用いて、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβに結合する磁気粒子を撮像することで、アミロイドβの蓄積量とその分布を測定し、アルツハイマー病発症前の画像検査の実現を目指すとのことだ。

【左】開発した磁気粒子イメージング装置(試作機)【右】本装置で撮像した画像

日本における65歳以上の認知症患者数は、2025年には700万人に達すると見込まれているという。また、認知症患者のうち67.6%をアルツハイマー病が占めるという統計結果もあり、国内では今年6月、認知症の予防を促進する「認知症基本法」が成立。

8月にはアルツハイマー病の発症要因となり得る脳内に蓄積したアミロイドβを除去し、病状の進行を抑制する治療薬の製造販売承認が厚生労働省の専門部会で了承された。脳内のアミロイドβの蓄積が少ない段階で早期に投薬治療を開始することが発症抑制に繋がることから、アミロイドβの蓄積量や分布を測定する技術が求められている。

磁気粒子イメージング装置は、コイルが発する交流磁場により、体内に注入した磁気粒子の磁気信号を誘起し、これを検出することで、3次元画像を生成する装置。

交流磁場の周波数が高いほど磁気信号を高感度に検出できるため、既に製品化されているマウスなどの小動物用の小型装置では、25kHz前後の高い周波数が使用されているという。

しかし同等の周波数を用いて、ヒトの脳サイズの領域を撮像可能な大きさに装置を大型化した場合、コイルが大きくなることで負荷が上がり、必要な電源容量が増大するため、電源装置が非常に大型になることが実用化を妨げる要因の一つとなっていた。

今回、三菱電機が培ってきた電磁気学技術を深化させ、交流磁場を発生するコイルと、信号検出コイルの配置を精密に調整し、磁気信号の検出の障害となる不要な信号(ノイズ)を最小化できる構造を確立。

開発した交流励磁コイルと信号検出コイル構造図

1kHz以下の低周波でもヒトの脳サイズの領域の磁気粒子を高感度に撮像でき、電源装置の大型化を抑えた「磁気粒子イメージング装置」を世界で初めて開発したとのことだ。

同開発成果は、アルツハイマー病発症前の画像検査の実現に向けた大きな前進となるとしている。

実証試験の様子(チューブに磁気粒子を注入してM字型に折り曲げ[写真左]、本装置で撮像[写真右])

なお、同開発成果の詳細は、チェコで開催された「WMIC(World Molecular Imaging Congress)」にて発表。また同情報は、岡山大学ホームページでも公開されているとのことだ。