靴下で踊り倒すほどエコになる?アムステルダムの街角ディスコの秘密

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アムステルダム中央駅からほど近い水辺の一角に、星がきらめくような電子音に合わせ、身体を揺らし、踊る集団がいる。その足元をよく見ると、敷き詰められた四角いマットのようなものが。ここで行われているのは、月に一回定期開催される循環型ダンスパーティ「ジェントル・ディスコ」だ。一体誰が、何の目的でこのようなイベントを主催しているのだろうか。

この「ジェントル・ディスコ」は、ヒラタケ養殖場で「きのこを育てて刈り取ったあとに残る菌糸体を捨てられる前に引き取り、これを建材として生きる建築物をつくれないだろう」か、という人類生態学の研究者アルネ・ヘンドリックス氏の疑問から始まった。刈り取り後、元気のなくなった菌糸体の発育を促すためには、優しく刺激することが大切だ。そこで「裸足で踏んでみよう」「それだけだとつまらないから、リズムに乗せたらどうだろう」と、思いついたのだという。こうして、この元気のなくなった菌糸体に改めて命を吹き込むために、菌糸体の上で踊り倒し、循環を促す、サーキュラー・ダンスパーティ「ジェントル・ディスコ」が始まった。

ヘンドリック氏によると、ジェントル・ディスコはただの作業ではなく、文化的な活動だという。名前に「ジェントル(優しい)」とつけたのは、硬い靴底などで踏んでしまうと、傷んでしまう菌糸体を、柔らかく清潔な靴下で優しく刺激することから発想しているという。

2020年にプロジェクトを開始して以降、不要になった菌糸体は数週間に一度のペースで運び込まれ、これを用いて鳩のための居住空間「ピジョン・タワー」が作られている。ヘンドリック氏によってデザインが手がけられたこのピジョン・タワーは、いずれ土に分解され、そこで生まれる土と鳩の糞を栄養にトウモロコシが育ち、そのトウモロコシを鳩が食べる。そうして有機資源のループが閉じられることとなる。

ヘンドリック氏はここを通りがかる人々に、「分解はデザインにおいて必要なプロセスであるとともに、腐敗と誕生とは複雑に絡み合っていること」を伝えたいという。

菌糸体を用いた「生きるタワー」をつくるにはどのような設計が最適なのだろう?レンガが建物ごと成長しはじめるのにはどのくらいの時間がかかるのだろう?アムステルダムにいる野生の鳩のための最適な空間とはどのようなものなのだろう?こうした疑問を紐解きつつ、実験は続く。

このダンスパーティが開催される拠点・Mediamatic(メディアマティック)は、1983年以降レストランやアートセンターなどを展開してきたが、単に素晴らしい飲食体験や芸術表現の機会を提供する場所とは一線を画す。メディアマティックはアート・デザイン・科学を「食」「住」「循環」などの軸で結び、新しい暮らし方や生き方を模索するための実験プロジェクトを生み出す組織だ。サーキュラーエコノミーの考え方を土台とした様々な実験が日々行われており、この「ジェントル・ディスコ」もその一部というわけだ。

レストランで提供されるのは、地元食材にこだわって小規模な個人の農家やサプライヤーから直接購入する高品質の地元野菜やワイン・パン・ビールからなる食事だ。また、温室での水耕栽培で育てられたハーブやエディブルフラワー、自家製発酵食品などを駆使して五感を刺激する、まさにアートのような食体験を提供してくれる。

さらには、毎年春に行われる「イタドリ・フェスティバル」では、外来種としてヨーロッパで近年生態系を破壊する一因となってしまった日本の植物・イタドリについてディスカッションをしたり、このイタドリを食用して「駆除」するために、イタドリを使った美味しい食事をレストランで提供したりする。その発想の豊かさに驚くばかりだ。

メディアマティックのこうした取り組みを見ていると、複雑に絡み合う生態系のなかで、私たちが壊れかかった地球との関係性を紡ぎなおすには、「失敗せずに単純な最適解に一度でたどり着けると思うこと」自体がそもそもおかしいのではないかとさえ思う。拙くてもいいから自分が面白いと思うことをまずは試してみて、失敗して……これを繰り返すことで、複雑な中にも何らかの手がかりが生まれるのではないだろうか。

「ジェントル・ディスコ」は不定期だが大体月一回ペースで開催されており、メディアマティックのウェブサイトで次の開催日を知ることができる。もしも機会があるなら、ぜひ一度ジェントル・ディスコを訪れ、靴下で菌糸体の柔らかくも力強い感覚を楽しみながら、ビールを飲み、その輪(ループ)に加わってみてほしい。

【参照サイト】Mediamatic.net
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(元記事はこちら)IDEAS FOR GOOD:靴下で踊り倒すほどエコになる?アムステルダムの街角ディスコの秘密

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