日々の暮らしのなかにあるサステナビリティを紹介する特集「サステナブック」。第5回に登場するのは、社会起業家の竹中俊さん。現在ネパールで孤児院を運営するほか、さまざまな社会活動に従事する竹中さんがサンゴを守るマイボトルを紹介。
- 【プロフィール】
- 竹中俊さん
- ネパールで出会った子どもたちの環境を変えるべく35人のパパとして孤児院を運営。環境保全をはじめ、さまざまな社会課題に向き合う社会起業家。
白化・死滅した養殖サンゴから作られたマイボトル
——今回ご紹介いただく商品・サービスについてお聞かせください。
養殖活動で育たなかったサンゴから作られている「海のマイボトル」です。アサヒユウアスさんがハヤシコーポレーションさんと協業して作ったもので、1本の売り上げにつき100円がサンゴの保全と養殖を行う伊良部島環境協会に寄付される仕組みになっています。
——どういった経緯で「海のマイボトル」を知ったのですか?
昨年、サンゴの保全活動に携わったことがきっかけで知りました。今、多くのサンゴが命を落としているなかで、宮古島の人たちが自分たちの手でサンゴ畑を作ろうと頑張っています。
サンゴは農業でいえば土の役割があって、サンゴ礁があるから小魚が住み、それを大きな魚が食べる。そしてその魚を食べる動物たちが生きていける。サンゴがいなくなったら海の環境は終わりです。僕自身もボランティアとしていろんなことをしてきたので、そこにアサヒユウアスさんをはじめとする企業が力を貸してくれるのはありがたいことだと思いました。
「海のマイボトル」を売ることよりも、この商品をきっかけに環境問題に目を向けてもらうことに意義があると思っています。
——普段からサステナブルな取り組みをしている企業やサービスを意識していますか?
ご紹介したアサヒユウアスさんはアサヒビールのグループ会社で、廃棄食材からビールを作っています。サンドイッチ屋から廃棄されるパンの耳であったり、コロナ禍でお客さんが来なくなってしまったイチゴ狩りのイチゴであったり。そういった廃棄食材を循環させているのは良い取り組みではないでしょうか。
私なりのサステナビリティ
——環境保全に目を向けるようになったきっかけを教えてください。
リュック一つで世界を旅していて、ホテル暮らしが5、6年目とかになるんですが、ネパールで生活環境が悪すぎて病気になったり、病気になっても病院に行くお金がなかったり、栄養失調になってしまう子どもたちに出会いました。ゴミであふれている川を生活用水にしてご飯やシャワーに使っていたりして、病気にならないためにはあらゆる環境を整備しなければいけないと気づかされたんです。
2050年の海は魚の数よりもゴミの数の方が多くなるといわれています。自然と共存して魚を獲って食べている人たちは生活できなくなってしまうかもしれません。飢餓・貧困・環境は密接に関わっていることを知り、環境保全にも取り組みたいと思いました。
——ご自身の生活に取り入れているサステナビリティはありますか?
たくさんあります! 例えば、服はオーガニックコットンから自分で作っています。ズボンはジーンズの古着で、ほとんど洗わなくても済むので洗濯の回数も減らせます。普段使っている手さげカバンはペットボトルから作られていて、リュックも漁網から作られたもの。愛用のポーチは言葉が不自由なネパールの女性たちが手織りしたものです。食事も基本的には菜食。すべて自分が好きなことなので、無理なく自然と取り入れています。
——「ネパール紅茶」を販売するプロジェクトが始動しているとお聞きしました。どのような点がサステナブルな取り組みですか?
日本ではまだ知名度がないネパール紅茶ですが、ヨーロッパでは注目されていて、ダージリンに匹敵する紅茶です。ネパールでは「農薬って何?」というレベルでオーガニックが当たり前で、環境にやさしい作り方もそうですが、僕らの農園では働く人の95%以上が女性です。ネパールでも多様性が叫ばれるようになってきているので、雇用の面でもサステナビリティにつながるプロジェクトです。
——今後、私たちはサステナビリティとどのように向き合うべきだと思いますか?
500mlのペットボトル1本が海に流れたら自然分解するまで約400年かかるといわれていますが、普段は海がゴミだらけになることを想像しづらいですよね?
でも、未来を生きる子どもたちやそこに住む動物たちへの被害を考えたときに、僕たちが海にゴミを流してよいのかといったら「それは絶対ダメ!」というのはみんな理解できること。サステナビリティというと言葉が難しいかもしれませんが、身近なところに落とし込んで考えてみる、豊かな想像力が必要だと思います。
すべてをサステナブルにしようとするとお金がかかってしまいますし、なかにはできない自分を責めてしまう人もいます。「やれる人がやれることをやっておく」くらいの感覚でいい。そういった無理のないマインドも伝えていきたいです。