入浴習慣が熱中症予防に繋がる可能性を発見　発汗・血流量の増加で熱放散機能が向上　リンナイと九州大学大学が共同研究

リンナイは、九州大学大学院芸術工学研究院 講師 西村貴孝氏の研究グループとの共同研究によって、人間が日常的に入浴を繰り返すことで発汗機能や血管拡張機能が向上する可能性を明らかにしたと発表した。

熱中症の対策には暑熱順化が有効であるとされている。暑熱順化は、暑さに慣れることで徐々に暑熱環境への耐性を得ることだが、近年では室内でのエアコンの普及や運動不足といった要因が人間の暑熱順化の獲得を妨げていると考えられているという。

人為的に暑熱順化を獲得するには、人間にとって高強度の温熱負荷が必要とされているが、日本人は日常的に入浴という暑熱負荷を経験しているため、日々の入浴は発汗機能を高め、暑熱順化を促すと考えられている。

しかし日常生活の入浴習慣がどの程度暑熱環境への適応能に関与しているかは、十分に明らかではないという。

そこで、入浴中の発汗を含む体温調節機能を測定し、普段から浴槽に浸かる入浴習慣が体温調節機能の個人差に影響するか明らかにすることを目的に、同実証実験が行われたとのことだ。

■実験方法

同実験は、健康な男性32名を対象として実施。

実験室の環境は室温28℃、湿度50％とし、浴槽の湯温は41℃に設定。対象者は実験開始後10分間、浴室内で椅座位での安静をとり、その後浴槽へ移動し20分間入浴。その後、浴槽を出て再度椅座位で15分間安静に過ごしたという。

また対象者には入浴習慣に関するアンケートを行い、対象者ごとの入浴のスタイルや入浴時間などを調査したとのことだ。

■結果と考察

「入浴習慣あり（浴槽に浸かるのが週4日以上）」12名と、「入浴習慣なし（浴槽に浸かるのが週4日未満）」20名において、発汗量と血流量をグラフ化。

グラフで示されたとおり、「入浴習慣あり」のグループにおいて発汗量が入浴中・出浴後に有意に大きく、血流量が早く上昇している（血管拡張が早い）ことがわかる。また、これらの結果は年齢や運動習慣、BMIの影響を考慮しても変わらなかった。

以上から、高強度の暑熱・運動負荷トレーニングをしなくても、日常的に入浴による暑熱曝露を繰り返すことで、熱放散機能が向上する可能性が示されたとしている。

同実験の結果、入浴を習慣化することにより、暑熱下での発汗量や血流量が増加することで、体表面からの熱放散機能が向上し熱中症や夏バテの予防に貢献することが示唆されたという。

なお同結果は、2023年6月16日から18日に行われた日本生理人類学会第84回大会にて発表されたとのことだ。