西アフリカの国・マリ。政治・社会情勢が不安定で、外務省の海外安全ホームページ上では、危険レベルが4段階中最高の4となっている。「どのような目的であれ渡航は止めてください」と退避勧告がなされるほど、危険度の高い国だ。
そんな同国で、仕事を失った人たちが「手紙」を起点に新たな職を得るプロジェクトがある。「Postcards from Timbuktu(トンブクトゥからのポストカード)」だ。
マリのトンブクトゥは「伝説の砂漠都市」とも呼ばれ、世界遺産に登録されている場所である。同プロジェクトのウェブサイトを見ると、利用者は好きなポストカードのデザインを選んで注文し、砂漠都市トンブクトゥから、誰かにメッセージ入りのポストカードを送ることができることがわかる。住所がある場所であれば、世界中のどこへでも送ることができるそうだ。
実際にポストカードにメッセージを書いてくれるのは、かつてマリで観光ガイドとして働いていた人たちだ。以前は、人気の観光スポットだったトンブクトゥだが、2012年頃から、同国でクーデターなどが発生し治安が悪化。それに伴い、観光業は壊滅的な状況になった。今回の取り組みは、そんな状況で職を失った元観光業従事者たちを助けるものとなる。失業率が上がることは、個人と社会に甚大な悪影響を与えるものだと考えられているからだ(※1)。
ポストカードの郵送にかかる日数は、だいたい3~4週間だが、それよりずっと長くかかる可能性もあるという。ウェブサイト上で「私たちはAmazon.comではなく、郵便事情は不安定です」と明言しているのが小気味良く、「それはそれで良いかな」という気持ちになりそうだ。
治安の悪い国からポストカードが届く、という取り組みへは賛否両論あるかもしれない。しかし現地に足を運ぶことは難しくても、ポストカードを受け取った人が、マリという国のささやかな一部分を感じられると良い。
※1 How Unemployment Affects Individuals and the Economy
【参照サイト】Postcards from Timbuktu
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(元記事はこちら)IDEAS FOR GOOD:職を失った人の新たな収入源を。世界で最も危険な国の一つ、マリから届くポストカード