帝国データバンク(以下、TDB)は、2022年以降の食品値上げ約5万品目のデータを基に、最近の値上げの傾向や動向について調査分析を行い、結果を公表した。

■食品値上げ、電気代がじわり影響 7月値上げの約2割が「電気代の上昇」要因に

TDBの調査によると、食品メーカー各社による値上げのなかで、「電気代」の上昇が新たな値上げ圧力として台頭しつつあることがわかったという。

23年以降の国内の主要な食品や飲料メーカー195社・約2万5,000品目の値上げデータを基に分析したところ、全体の7.1%・1,779品目で「電気・ガス代(電気代)の上昇」が値上げの主な理由だったことが判明。

2023年2月以降、電気代の上昇を理由とした値上げの割合が高まり、5,000品目を超えた4月は約1割を占めた。

また、7月には値上げが予定されている約3,400品目のうち、2割を超える777品目が電気代の上昇を値上げの理由としており、TDBは、年後半にかけて値上げ理由に占める「電気代」の割合が高まる可能性があるとしている。

「電気代」上昇による値上割合

主な食品分野別にみると、電気代を理由とした値上げの割合が最も高いのは「パン」で、全約1,700品目のうち約4割・718品目であることが判明。

パン製品は、オーブンでの焼き上げや発酵を促すための温度管理など、製造工程の多くで電力を大量消費する食品分野の一つとなる。

輸入小麦の価格改定に伴う小麦粉価格の値上げに加え、バターなどの乳製品やイースト、砂糖、各種油脂製品など原材料価格が大幅に引き上げられるなか、電気代の上昇分を経営努力で吸収できる余力に乏しいことも要因とみられるとのことだ。

食品分野別の「電気代」要因割合

また、「乳製品」「加工食品」ではそれぞれ約9%の品目で電気代の上昇が要因に。特に乳製品では、パック牛乳やチーズなど加工品製造過程のほか、原料乳を供給する酪農家でも電気代の上昇が響き、88品目で電気代上昇による価格改定がみられた。

「加工食品」は、ハム・ソーセージ製品や豆腐製品、焼きのり製品など幅広い分野に影響が広がり、電気代上昇を理由とした値上げとしては全分野で最も品目数が多い911品目に上っている。

■「電気代」が再度の値上げラッシュに引き金となる可能性も

2023年の値上げは、原材料価格の落ち着きや低下により、一部の製品では価格引き下げの動きも出始めるなど、原材料高を中心とした値上げ圧力は徐々に低下しつつある。

一方で、賃上げ圧力を背景とした人件費の上昇や電気・ガス代といったエネルギー価格の上昇が新たなコストアップ要因として表面化。23年に電気代を要因として値上げした品目は1,800品目に上り、影響が顕在化してきたという。

足元では、政府による支援策で電気代の上昇幅は比較的抑制されているが、今夏以降の電気料金引き上げによる影響次第では、「電気代」を要因とした価格転嫁が食品分野でも広く浸透し、再度の値上げラッシュの引き金となる可能性があるとTDBは考察している。

【調査概要】
調査期間:2023年5月31日まで
調査対象:食品主要195社における値上げ品目
調査機関:帝国データバンク

<参考>
帝国データバンク『「食品主要195社」価格改定動向調査