NEC、NECソリューションイノベータ、中部地方の児童相談所の三者は、児童相談所に寄せられる虐待通告の初動対応や、通告をもとに行うアセスメントに携わる新人職員および経験の浅い職員のサポートにおいて、AIツールを活用する実証実験を実施したことを発表した。
児童相談所における児童虐待の相談対応件数は年々増加し続けており、それに比例して職員の業務量も増加。一方、定年退職や人事異動等でベテラン職員が減少しつつありノウハウを経験の浅い職員にどう定着させるかという課題に直面している。
さらに、多くの会議や面談記録の文字起こしといった単純業務に多大な作業時間を要しており、それらが業務を逼迫している状況があるという。
同実証では中部地方の児童相談所との検討を重ね、AIの役割を「経験の浅い職員でもベテラン職員と同じような着想で動けるようにサポートすること」(想像力をかき立てるAI)と定義し、同児童相談所の過去事例から通告内容の類似事例を表示するなど、職員の業務負担を軽減し共に伴走するツールとして設計。
その結果、新人職員および経験の浅い職員が通常業務においてこのツールを追加・補足的に使うことで、対応の質が約54%向上することを確認。また、会議や面談記録等の文字起こしなとの記録業務に音声認識AIを活用し、文字認識精度約91%という高い精度により約33%の業務時間削減を実現したとのことだ。
さらに、実証実験後に新人職員および経験の浅い職員に対するアンケートにて、有益性について5段階評価中4.4と高い評価を得ることができたとしている。
NECとNECソリューションイノベータは、AI技術をはじめ様々なICTを活用することで児童相談所における業務の質向上と効率化を実現し、親子の支援対応などコア業務に職員が注力できる環境づくりを目指すとのことだ。
■実証実験の概要
NECとNECソリューションイノベータは、今回の実証実験で得られた知見をもとに、児童虐待相談業務におけるAIツールの活用について引き続き共創しながら検討していくという。
また、家庭児童相談室や他関係機関とのノウハウ共有ができるよう、ベストプラクティスな事例(類似事例等)を汎用化し、子どもの福祉全体の質向上・支援強化に貢献していくとのことだ。