ANA、中期環境目標・2050年度までのトランジション戦略を変更 ICAO総会でのCO2削減目標水準の見直しを受け

Tokyo, Japan - April 18, 2021:All Nippon Airways (ANA) passenger planes.

ANAホールディングスは、第41回ICAO総会での国際航空のCO2削減に関する目標水準の見直しのほか、各国の環境規制動向、先進技術の発展など、経営を取り巻く環境が常に変化していることを踏まえ、2030年度の中期環境目標および2050年度までのカーボンニュートラル実現に向けたトランジション戦略をアップデートしたことを発表した。

ANAホールディングス

国際民間航空機関(ICAO)総会での国際航空のCO2削減に関する目標の見直し:
ICAOが国際線におけるCO2排出量のグローバル基準値を定め、超過する場合は排出権の購入などを航空会社に義務付ける制度(通称CORSIA)について、2022年10月の第41回ICAO総会で2024年から2035年の基準値が2019年比85%に見直しされた。

ICAO総会での国際航空のCO2削減に関する目標の見直し

■国際航空のCO2削減に関する目標水準の見直しへの対応

ANAグループは、アジアを中心に成長が期待される国際線需要、訪日需要の増加に合わせて航空ネットワークを拡充していく一方で、第41回ICAO総会で見直された国際航空のCO2削減に関する目標水準も遵守する。

アップデート(1):中期環境目標の見直し
これまで、2030年度の「ANAグループ中期環境目標」として内際合計の実質CO2排出量を2019年度以下とする目標を掲げていたが、これを2019年度比10%以上削減する目標へ変更。

また、ANAグループでは、これまでも「2030年度までに消費燃料の10%以上をSAFへ置き換える」方針を掲げていたが、これを「ANAグループ中期環境目標」として設定。これにより、現在、官民連携のもと取り組んでいる国産SAFが製造・安定供給される環境整備に向けて、課題解決を一層加速していく。

アップデート(2):トランジション戦略の見直し
2024年度以降、内際合計の実質CO2排出量を2019年度比10%以上削減するシナリオに変更。経済合理性も考慮しながら4つの戦略的アプローチを組み合わせて取り組んでいくが、追加削減分については「排出権取引の活用」で対応することを検討。

トランジション戦略

■4つの戦略的アプローチ

(1)運航上の改善・航空機等の技術革新
離陸時の早期加速上昇、着陸後の逆噴射抑制、地上走行時の片側エンジン停止、エンジン洗浄等、運航上の改善等によりCO2排出量削減に取り組み、その実績を毎月ホームページで公開している。

2030年度にはボーイング787型機100機以上の体制を目指し、省燃費機材への早期転換を推進。また、航空機の機体表面に鮫の肌のような特殊加工を施すことで飛行中の空気摩擦抵抗を低減し、CO2排出量削減に貢献する技術の実証および導入等にも取り組みを実施。

(2)SAFの活用等航空燃料の低炭素化
ANAグループの脱炭素社会の実現に向けた戦略の中核となるのは、従来のジェット燃料よりもライフサイクルで約80%のCO2削減効果が期待できるSAFの活用。2030年度までに消費燃料の10%以上をSAFへ置き換え、2050年度には消費燃料のほぼ全量を低炭素化していく予定。

(3)排出権取引制度の活用
短中期的な対応として排出権取引を活用。ICAOで定められている基準に適合する信頼性の高い排出権によりCO2排出量をオフセットし、適切に情報を開示していく。

(4)ネガティブエミッション技術の活用
大気中からCO2を回収・吸収、貯留・固定化するネガティブエミッション技術の活用にも積極的な取り組みを実施。具体的にはSAFの活用等だけで削減しきれないCO2を、Direct Air Capture(DAC)等によって大気中から直接回収し、永久的に「除去」することで、2050年カーボンニュートラル(実質ゼロ)を実現する。

ANAグループは、日本の航空会社として初めてSAFを定期便で使用するなど、さまざまなステークホルダーと連携しながら航空事業の脱炭素化に先手を打って取り組んできたとしている。今後も世界における気候変動に関する動向を注視しながら、積極的に航空事業の持続可能性を追求し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していくとのことだ。

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