明治、カマンベールチーズに含まれる脂肪酸が細胞内コレステロールの排出を促進することを確認　京都女子大学と共同研究

明治と京都女子大学 家政学部 食物栄養学科栄養学第2研究室は、ヒト由来マクロファージ様細胞を用いた研究により、カマンベールチーズに含まれる脂肪酸がコレステロール輸送体であるABCトランスポータータンパク質を活性化して、細胞中のコレステロールの排出を促進することを確認したと発表した。

なお、同研究成果は2023年5月14日の第77回日本栄養・食糧学会大会にて発表されたとのことだ。

コレステロールは、胆汁酸合成の材料や細胞構成成分となる生体の重要な成分である一方で、マクロファージをはじめとする末梢細胞に過剰に蓄積されると、プラークの形成につながり、心筋梗塞や脳血管性認知症の原因となる動脈硬化が進行するリスクが高まるという。

同研究ではコレステロール輸送に関わるABCトランスポーター（ATP-binding cassette transporters; ATP結合カセット輸送体）タンパク質に着目して、カマンベールチーズの含有成分のABCトランスポーター活性化によるコレステロール排出に関する効果を研究。

その中で、カマンベールチーズの抽出物に含まれるパルミトレイン酸およびヒドロキシパルミチン酸がABCトランスポーターを介した細胞内コレステロールの排出を促進することを確認したとのことだ。

■研究背景

カマンベールチーズをはじめとしたカビ熟成チーズは、熟成時にさまざまな代謝産物を作ることが知られているという。

明治はその代謝産物に着目し、カビ熟成チーズ特有の健康機能を研究。これまでにカマンベールチーズの摂取により血中BDNF濃度（脳由来神経栄養因子）が上昇することを明らかにしている。

また、チーズの摂取による健康機能は他にも多数報告されており、その一つとして心血管疾患との関連性が知られていることから、同社はチーズの心血管疾患への作用メカニズムの解明に向け、コレステロールの輸送に着目し研究を行ったとのことだ。

■研究方法ならびに結果・考察

実験1：カマンベールチーズ抽出物による末梢細胞中のコレステロール排出促進効果
方法：
マクロファージ様細胞株であるTHP-1細胞にカマンベールチーズ抽出物を添加し、細胞からのコレステロール排出量を評価。

結果・考察：
1．カマンベールチーズ抽出物においてコレステロール排出促進活性を確認。関与成分の特定を進めた結果、パルミトレイン酸やカビによる代謝産物であるヒドロキシパルミチン酸に活性があることが確認された。

2．ヒドロキシパルミチン酸を作用させた細胞ではABCトランスポーター量が有意に増加しており、各脂肪酸の作用はそれぞれ異なるメカニズムで生じている可能性があることを示唆。

実験2：カマンベールチーズに含まれる脂肪酸による末梢細胞の炎症状態改善作用
方法：
1．マクロファージ様細胞に酸化LDL、アセチル化LDLを添加し泡沫化させ、炎症マーカーのmRNA発現量（IL-1遺伝子発現量）を評価。
2．炎症を起こした細胞にパルミトレイン酸やヒドロキシパルミチン酸を添加し、炎症マーカーのmRNA発現量（IL-1遺伝子発現量）とコレステロール排出量を評価。

結果・考察：
1．泡沫化したマクロファージで、炎症マーカーのmRNA発現量（IL-1遺伝子発現量）が増加していることを確認。
2．泡沫化マクロファージにおいてもパルミトレイン酸やヒドロキシパルミチン酸の添加により、コレステロール排出が促進されることを確認。加えて、炎症マーカーの値が低下することを確認。

このことから、パルミトレイン酸やヒドロキシパルミチン酸によるコレステロール排出促進活性は、炎症状態を引き起こしているマクロファージにも作用していることが確認された。

上記の結果より、カマンベールチーズに含まれる脂肪酸が血管の健康に寄与する可能性が示唆されたとしている。同社は、今後もさまざまな健康課題と向き合い、人々が健やかな毎日を過ごせる未来の実現に貢献していくとのことだ。