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2022年11月に公開された、OpenAIの対話型AI「ChatGPT」。あらゆる分野の問いかけに、おおむね適切な内容を自然な言語で返してくるChatGPTは、歴史的なゲームチェンジャーとも目される。しかしまだ法整備が整わず安全性への懸念も高いため、各企業での対応は分かれている。
本記事では、ChatGPTに対して世界の企業がどう反応しているか。そして、現段階(2023年4月27日現在)において、ChatGPTの利用を推奨している企業と使用制限している企業を紹介する。
ChatGPTに寄せられる期待
オーストラリアの大手メディア企業News Corp Australiaは、ChatGPTに対して好意的な企業のひとつである。
CEOのMichael Miller氏によると、ChatGPTはすでにAI予測や分類などに組み込まれており、従業員にも「まだChatGPTを試していないなら、ぜひ使ってみてください」と勧めている。さらに、メディアやエンターテインメント業界における営業、マーケティング、事業戦略にどう活用できるかを検証する価値があると述べている。また近々、全社的なAIワークショップを開催し、ユーザーエクスペリエンスや財務予測などでの利用可能性も探っていくという。
人材ソリューション企業FortayのMarlina Kinnersley CEOは、ChatGPTが「潜在的な偏見や差別的で倫理そぐわない回答を出す可能性がある」と指摘しながらも、ChatGPTのような画期的なツールを使うことで、「本来注力すべき大事な仕事にマンパワーを回せる」と期待を寄せている。
金融企業に目立つChatGPTの利用制限
生成AIへの法整備やガイドラインは整っておらず、利用を制限している企業も少なくない。
たとえば、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴなど金融企業が目立つ。金融以外では、アマゾン、アクセンチュア、大手通信会社のベライゾンも、従業員がChatGPTを利用することを禁止している。
その一方で、モルガン・スタンレーはデータ照会アシスタントなどにOpenAIのチャットボットを使用している。また、ヘッジファンドのCitadelは、ソフトウェア開発や情報分析のため、ChatGPTのライセンス取得について協議されていると伝えられている。
ChatGPTを利用している企業
ChatGPTは安全性に不安が残るものの、すでに無視できない存在になっている。使い方によっては大幅な生産性向上や業務のスピードアップ、人手不足解消につながるため、全体的にはなんとか取り入れようとしている企業のほうが多いようだ。
その数は今後も増えていくことが予想されるが、現段階における導入企業の一部を紹介する。
セールスフォース
顧客管理システムのセールスフォースは、ChatGPTとのパートナーシップを発表した。顧客関係管理(CRM)ツール作成のため、OpenAIのチャットボット技術をベースにした独自のツール「Einstein GPT」を導入した。Einstein GPTは電子メールの作成、会議のスケジュール管理、顧客の動向の分析などに使用される。
エア・インディア
エア・インディアは、自社サイトのCX(カスタマーエクスペリエンス)向上のためChatGPTを導入することを発表。FAQページやパイロットブリーフィング(操縦士への天候や飛行ルート、高度などの確認)などの改善に、GPT4を使用する予定である。
Snapchat
メッセージングアプリのSnapchatは、ChatGPT搭載のAIチャットボット「My AI」を導入した。現在、My AIは有料サービス「Snapchat+」の加入者のみが利用できる。My AIでは、レシピから旅行、お出かけスポットなど、様々な内容をAIチャットボットに質問することができる。
Duolingo
多数の言語を扱う人気の無料語学アプリDuolingoは、カスタマイズレッスンのサブスクリプションサービス「Duolingo Max」を発表。Duolingo MaxはGPT-4を使用して、ユーザーの自由な質問にも回答できるようにするという。
Koo
「インド版Twitter」と呼ばれるインド発SNSのKoo(クー)のプラットフォームに、ChatGPTが統合された。現在は検証済みのユーザーのみが利用できるが、近日中にすべてのユーザーに展開される予定だ。
ベイン・アンド・カンパニー
経営コンサルティング企業のベイン・アンド・カンパニーはOpenAIと提携し、管理システムなどにAIチャットボットを統合した。同ツールを使用する初の大手企業は、コカ・コーラ社であると伝えられている。
Shopify
オンラインストアのShopifyは、同社の買い物アプリ「Shop」にChatGPTを使ったプログラムを実装。ショッピングアシストや検索、ユーザーの嗜好に基づいたレコメンド機能を強化している。
Instacart
食品の宅配・ピックアップサービスのInstacartは、2023年後半に展開予定の新検索エンジン「Ask Instacart」にChatGPTを組み込む。ユーザーからのオープンエンドの要求に対し、7万以上の小売店で販売される150万もの商品から、最適なものを引き出すことができるという。
Quizlet
米国発のオンライン学習サイトのQuizletは、ChatGPT技術を使って構築した1対1のチューターサービス「Q-Chat」を発表している。
Speak
言語学習アプリのSpeakは以前からOpenAIと提携しており、AI会話トレーニングに音声テキスト「API Whisper」を使用して、ユーザーにリアルタイムでフィードバックができるサービスを展開している。
文:矢羽野晶子
編集:岡徳之(Livit)