子どもの靴があっという間にサイズアウトしてしまい、慌てて靴屋に新品を買いに行ったことがある人は、多いのではないだろうか。日本全国で靴大型専門店チェーンを展開するシューマートによると、3歳半までの足のサイズは、半年で約10mm、以降は5mm大きくなる。よって、3歳までは3ヶ月ごと、3歳以降は半年ごとの靴の買い替えが目安になるという(※)。
子どもの成長にそって靴を買い替えることで、出費がかさみ、ごみも増えてしまう──この問題を解決するためにインド・プネ出身のサテャジット・ミタル氏は、彼の幼なじみであるクルティカ・ライ氏と共に、Arettoという画期的な靴ブランドを立ち上げた。
Arettoの特徴は、子どもの足の成長に合わせて、「シューズも成長する」ところにある。アッパーには、足の形にそって360度拡張する伸縮性に優れた生地を使用。さらに、足の形に合わせてソールに切り込まれた溝が花が咲くように開くことで、足の成長に合わせて靴の大きさが変わるようになっている。靴のサイズは3段階(18㎜分)拡張できるようになっているとのことだ。
「靴を成長させる」発想は、どこから生まれたのだろうか?サテャジット・ミタル氏は開発の経緯を“Good News Network”のインタビューでこう答えている。
「私たちは、花がつぼみの段階から満開へと開花する様子からインスピレーションを得ました。毎日、この遷移は自然に行われています。このコンセプトをシューズに応用したのです」
彼は、まさに自然界からアイデアを得ていたのだ。近年はこれを、バイオミメティックスと呼ぶ。
また、Arettoは靴を通して、認知・感覚に関連する脳の発達を促すことを意識している。ソールの厚さは、子どもの足を保護できるだけの厚さでありながら、地面の感覚を掴むことができる絶妙な厚さ・4㎜に設定。これにより、地面からの衝撃で神経が誘発され、子供の認知および感覚脳の発達が促進されるという。
さらに、Arettoは商品の製作過程においても、廃棄物を最小限にし、再利用素材を利用することで環境への負荷を減らしている。
実際に、「長期間快適に歩くことができた」「自然な足の形に適応している」という声が寄せられ、評判は上々だ。
子ども靴を頻繁に買い替えなくてもいいというArettoの商品は、家計にとっても環境にとっても大変ありがたい存在だ。アパレル業界全体を見てみると、大量消費・大量生産による環境破壊が起こっており、深刻な問題となっている。
「自然界にあるものを参考にして、自然を守るような商品を製造する」というArettoの考え方はアパレル業界に一石を投じたと言えるだろう。今後、Arettoがインドそして世界のアパレルをどのように変えてくれるのか期待が高まるばかりだ。
【参照サイト】Aretto
【参照サイト】Entrepreneur Designs Shoes That Expand As Children Grow, Building Great Business (Watch)(Good News Network)
【参照サイト】Entrepreneur Designs Shoes That Expand As Children Grow, Earns Lakhs/Month(The Better India)
【参照サイト】Satyajit Mittal(Forbes)
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(元記事はこちら)IDEAS FOR GOOD:子どもの成長にあわせて大きくなる。インド生まれの「咲く」シューズ