日本電信電話(以下、NTT)は、風力発電風車の無停止点検を実現する技術の実証実験を開始したことを発表した。
同技術では、点検対象構造物を挟み込む形で飛行させた2機のドローン間において微弱無線の送受信を行い、その受信信号の変化を解析することで、フレネルゾーン内の点検対象構造物の損傷有無を検知するという。
従来は、風車を停止し点検を行っていたため発電効率の低下が生じていたが、同技術はこれを回避可能とすることで、発電効率向上によるカーボンニュートラルへの貢献をめざすとしている。
なお、同技術については2023年5月17日~18日に開催予定の「つくばフォーラム2023」にて紹介されるとのことだ。
■実験の成果
(1)実験室におけるフレネルゾーン内の受信信号の変化による損傷有無検知実証
同技術で構造物の損傷有無を検知できることを確かめるために、ノイズ影響の少ない実験室でフレネルゾーン内の受信信号の変化を検知する屋内実験を実施。
この検知は風車停止状態で行う画像撮影・解析などすでにある技術を使った点検の前段階で使用することを想定していることから、運転停止基準の判断に使えるかどうかが重要となるという。
今回の実験では風力発電設備のブレード点検ガイドラインに記されている3つの状態と正常状態を比較することで、回転中のブレード損傷の状態を判断することをめざしたとしている。
結果、運転に影響する計画的に補修を行う状態と保安停止を要する状態の損傷有無を検知することに成功したとのことだ。
(2)屋外における微弱無線の送受信の実証
2機のドローンを微弱無線の送信機と受信機に見立て、上空で微弱無線の送受信する屋外実験を実施。
ドローンで上空を飛行する際にはノイズの影響を強く受けるが、その対策も行い実験を行った結果上空30メートルでの微弱無線送受信に成功したという。
また2機の自律飛行ドローンの操作により、上空で微弱無線の送受信距離を意図通りに変化させて、フレネルゾーンを簡単に変更できることを確認したとのことだ。
なお今回の結果を受け、今後は技術確立に向けて実際に屋外で運転中の複数の風力発電風車に対して同技術を活用する実験を行い、屋外の実物でも損傷検知が行えることを確認予定としている。
NTTは、更なる研究、実証実験を重ねることで、洋上風力発電の定期点検の自動化による運用効率化と設備利用率向上による発電量増加を実現し、カーボンニュートラルへの貢献をめざすとのことだ。