近年、世界的に自らのメンタルヘルスを気遣う傾向が顕著になってきている。自分の感情や、人生で遭遇するさまざまな経験の処理を可能にするためには、「エモーショナル・ウェルネス」が必要だ。
戦争や紛争が絶えず、天災が続く。世界の経済成長率は、ここ数十年で最も低い水準になっている。不安材料が無数に存在する今、エモーショナル・ウェルネスを維持せずに生きていくのは難しい。
従来のカウンセリングをはじめ、最近はアプリやガジェット、エクササイズや講習といった、メンタル面をサポートツールが多く出回っている。そんな中、日常生活の中でさりげなく、私たちのメンタルを支えてくれる、「エモーショナル・デザイン」のアイテムが、今年は主流になっていくと予想されている。
人間関係や、キャリアにも影響を与える、エモーショナルウェルネス
私たちのメンタル面に影を落とすと同時に、メンタルヘルスの重要性に気づかせてくれたのが「隔離」だ。世界中の多くの人々がコロナ対策として経験した。
米国心理学会は、孤独はストレスレベルを上げたり、睡眠を妨げたりと、体に害を与えることを確認している。米国疾病予防管理センターは、年配者を中心に、孤独が心臓病や脳卒中のリスクを上げること、また年齢を問わず、うつ病や不安症を引き起こし、自殺を増加させる原因になっていると指摘する。
米国でエモーショナル・ウェルネスの情報やガイダンスを提供し、心の健康を育むことに取り組む、ナショナル・センター・フォー・エモーショナル・ウェルネスによる定義では、エモーショナル・ウェルネスとは、「私たちが自分の感情に気づき、それを理解し、受け入れ、今、経験している困難や変化を効果的に管理するために必要な能力のこと」だそうだ。エモーショナル・ウェルネスは私たちの生活のあらゆる面に関係している。
例えば人間関係。自分の感情をうまくコントロールできなければ、他者の感情に対応することはできない。円満で健全な人間関係を築き、保つには感情が健康であることが必要だ。
キャリア上でも、勉強の上でも、感情は大切だ。何がどう起こっても、うまく対処できることは成功に通じている。自分の気持ちを把握し、感情とうまく付き合い、困難な状況でも、前向きに前進できれば、仕事や学業で成功することができる。
当然のことながら、感情の健康は、メンタルの健康にも大きく関わっている。メンタル面の不調を抱える人にとり、感情が健康か、そうでないかでは大きな違いが生まれる。自分の感情と向き合い、対処することができれば、メンタル面にも良い結果をもたらす。
エモーショナル・ウェルネスを得、維持するためには、マインドフルネスを実践したり、ほかの人と交流したり、ストレス解消法を見つけ、実行したりといった行動をとると良いといわれている。
文:クローディアー真理
編集:岡徳之(Livit)