衛星データ購入の落とし穴!初心者が戸惑いがちなポイント7選

本記事は、衛星データを購入したいと考えている人向けに、衛星データ購入の際に知っておくと便利なこと、初心者の方が戸惑いがちなポイントについてまとめています。

なお、本記事で紹介するのはあくまで旧来から続いている衛星データ販売を念頭においた一例であり、現在これらのポイントを解消すべく、様々な企業が様々な販売方法で衛星データを提供しています。実際の購入の際には各社の規定をよくご確認ください。

衛星データ購入の全体像

Credit : sorabatake

それぞれの注意点に入る前に、簡単に衛星データ購入の流れについて紹介しておきます。

どの場所のいつのデータが欲しいか決めたら、衛星データ販売事業者へ連絡し、希望に合うシーンがあるか探してもらいます。探してもらったシーンの中でどれを購入するか決め、詳細な購入の条件について決定し、発注を行います。注文後は、衛星データ販売事業者が衛星データの準備を行い、納品されるという流れになります。

このフローの中で気を付けるべきポイントについて、以降で解説していきます。

1. 衛星データ購入は意外と時間がかかる

まずお伝えしたいのは、「衛星データの購入は意外と時間がかかる」ということです。新しく衛星データを撮影する場合はもちろんですが、すでに撮影が完了している衛星データでも、注文後その場ですぐにデータが手に入ることはほぼありません。どのスペックのどのシーンを購入するか決めた時点から、2~3週間程度は見ておくことが望ましいです。

衛星データ購入に時間がかかる理由は様々ありますが、この後説明するライセンスなど書類手続きに時間がかかることや、注文が入ってから衛星データの生産(処理レベルに合わせた処理など)を行うこと、日本の二次代理店を通して購入する場合、これらのやりとりを大元の販売企業とも連携しながら進めていく必要があることなどが挙げられます。

特に、日本では年度末に卒業論文や修士論文など研究の締め切りがあること、企業でも予算の区切りがあることなどから、発注が集中しやすく、時間に余裕を持った手続きをしておくことが重要です。

2. 衛星データ購入の考え方“使用許諾”

次に、押さえておきたいのは衛星データの購入は、物品の購入と異なり所有権の移らない使用権の販売だということです。衛星データの著作権はあくまで衛星データ販売事業者や衛星を運用している機関・企業にあり、お金を払って私たちが得るのは、その衛星データを利用してよい権利です。

多くの場合、購入した衛星データを何らかの形で解析して外部に公表する際には、大元の企業が定める著作権表示を付記し権利を明記するよう求められます。

どのような利用であれば認められるかについては各データや金額によって細かく定められています。したがって、衛星データの利用形態によって、価格が変化したり、購入ができないケースもあります。
使用条件が定められた文書を使用許諾条件書、英語でEnd User License Agreement、略してEULA(ゆーら)と呼びます。定められた利用以外は認められていないので、購入時にはEULAをよく読んで理解した上で使うようにしましょう。

また、衛星データの購入時にはエンドユーザーの情報の提供が求められます。所属や氏名など必要な情報を伝えましょう。

3. ライセンス:誰がそのデータを使うのか、見るのか

同じ衛星データを購入する際にも値段が変わってくるのが、ライセンス数の考え方、すなわち、このデータをだれがどのように使うか、ということです。

社内の研究用途で用いる場合、利用するのは自社の社員だけなので、この場合のライセンスは一つ、”シングルライセンス”で問題ありません。

共同研究など、複数の企業が購入した衛星データを触って分析する必要がある場合、衛星データを使用する法人が分かれることになるので、”マルチライセンス”ということになります。

また、特殊なケースですが、テレビや新聞、webサイトなど衛星データを、自社のサービスの中でそのまま表示させるような場合は、不特定多数の目に触れることになるため、”メディアライセンス”と呼ばれています。このような利用をする場合にはあらかじめよく相談しておくようにしましょう。

なお、衛星データ分析の成果を学会で発表する際に、元のデータを表示させるような場合などは、あらかじめEULAの中でその目的や画素数などを指定した上で許可されているケースが多いです。どこまでであれば自由に使えるのか確認しておきましょう。

4. 購入した側が、配布・販売できるのは二次成果物

購入した衛星データをそのままインターネット上で再配布することは、多くの場合禁止されています。そのまま配布したら、衛星データ販売事業者の商売が圧迫されてしまうため、これは容易に理解ができると思います。

例えば、衛星データを使ったアプリケーションを考えた場合、どのような情報であれば、自社の顧客に提供してよいのでしょうか。こちらもデータにより異なり、詳細はEULAを確認いただきたいのですが、原則とする考え方は「元のデータが保有しているピクセル値に戻せないこと」です。

すなわち、大元の衛星データの一部分を切り取っただけでは、元のピクセルの値を含んでいるのでNGです。衛星データから車を抽出したポリゴンデータや、衛星データから植生指数を計算したものなどは元のピクセル値には戻せないのでOKということになります。

こうしたものはEULAの中で「二次成果物」「高次処理」「デリバティブワーク(derivative work)」などという言葉で定義していますので、探して読んでみて下さい。

判断が分かれるのは、衛星データをPCの画面上に表示させたもののスクリーンショットです。衛星データは、PCのディスプレイで表示できる明るさの階調よりも多い階調を持っていることが多く、この場合にはディスプレイで表示している時点で元のピクセル情報はつぶれてしまっています。

文字通り解釈すれば、元データのピクセル値に戻せないのでOKということになりますが、このような画像の取り扱いを「ブラウズ画像」などと定義して、表示してよい画素数や位置情報を紐づけないことなど、扱いを別途定めているケースもあるので、注意が必要です。

5. 興味領域(AOI:Area of Interest)の渡し方

衛星データを注文する時、衛星データ販売事業者に欲しい領域を情報として渡すと、条件に合致する衛星データを見つけて提示してくれます。

この時、都市名や住所だけでなく、実際に欲しい区画を位置情報付きのポリゴンデータとして渡すことでやり取りをスムーズに進めることができます。この興味領域をArea of Interest(AOI、えーおーあい)と呼びます。

ポリゴンデータを作る方法はいくつかありますが、TellusOSではgeojsonというファイル形式のデータを、Google mapではkmlと呼ばれるファイルを作成することができます。

【ゼロからのTellusの使い方】衛星データ上に好きな図形(GeoJSON)を重ねてみよう

6. フレッシュデータかアーカイブデータか新規撮像か

AOIを使って、過去に撮影された衛星データが存在するかを調べてもらい、存在する場合には、そのシーンの購入を進めることになります。
この際、撮影時期によって、値段が変わることがあります(直近のものをフレッシュデータ、古いものをアーカイブデータなどというケースも)。新しいデータほど高くなる傾向があるので、複数候補データがあった場合には、この点も考慮にいれるとよいでしょう。

また、多くの衛星はあらかじめ指定した場所を撮影する形で画像を取得しています。つまり、毎日撮影しているわけではないので、アーカイブでは欲しいデータが無い場合があります。その場合、新たに撮影をお願いすることになります。衛星にもよりますが、地球の周りをグルグルと回りながら撮影しているため、任意の時間に任意の場所を撮影することはできません。希望する場所や条件を伝えて、撮影できる機会がいつなのかを質問し、撮影時期を決定します。

なお、撮影は災害など優先度が高い他の観測によってスキップされたり、雲がかかってしまって撮影が行えないケースもあったりするため、そのような場合の対応がどうなるのかも注文の際に各社に確認しておくとよいでしょう。

7. 処理レベルや波長を選ぶ

購入するシーンが決まったら、あとは詳細な仕様を決めます。

具体的にはどこまで前処理がされたデータが欲しいのか、複数の波長を有している衛星データの場合、波長データをどこまで含むのか、で価格が変わるケースがあります。

衛星データの前処理については、詳しく以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

【図解】衛星データの前処理とは~概要、レベル別の処理内容と解説

購入してみて、解析で使いたかった情報を持っているデータではなかった!となるのは残念なので、よくわからない場合には、自分が衛星データを使ってやりたいことを明確にしたうえで、衛星データ販売事業者の人にアドバイスをもらうと良いでしょう。

さあ、衛星データを購入してみよう!

ここまで、初心者の方には難解な衛星データ購入の際の注意点について説明してきました。
衛星データ購入に必要な項目についてご理解いただけたでしょうか。

一通り目は通してみたけど、まだちょっと自信がないなという方に朗報です(唐突)。衛星データプラットフォームTellusでは、衛星データの販売サービスを行っています。複数の衛星データ販売事業者の衛星データをまとめて検討いただけるほか、本記事で挙げた様々な調整ポイントを、ご要望を伺いながらまとめていきます。

現在登録されている衛星データは以下のURLから検索を行うことができます。
https://www.tellusxdp.com/traveler/store/

どのデータがよいか分からない、もしくは、登録がないデータでも取り扱いがある場合がありますので、お気軽にTellusへお問い合わせください。

また、冒頭でも説明しましたが、これらはあくまで一例で、最近の衛星データ販売ではサブスクリプション形式で、契約すればウェブサイト上で条件に合うデータをいくらでも扱えるようなものもあり、衛星データ購入のプロセス自体の改善も各所で見られています。

海外の衛星データプラットフォームでの有料の衛星データ販売例(Sentinel Hub)

今後どんどん衛星データが購入しやすい世界になっていくと良いですね!

モバイルバージョンを終了