帝国データバンク(TDB)は「100円ショップ」業界について調査・分析を行い、結果を公表した。
■「100均」市場、23年度に1兆円突破。店舗は10年で3000店増加
ワンコインで生活用品の多くが揃う「100円ショップ」市場の成長が続いており、大手4社を中心とした国内100円ショップ市場(事業者売上高ベース)は、2022年度は前年から7.2%(約671億円)増の約9969億円となる見込みで、1兆円にせまる規模となった。
このペースで推移すると、100均市場は2023年度に1兆円の突破が確実とみられているという。また、店舗網も大幅な増加となり、大手4社の店舗数は23年3月末時点には9000店舗前後に達する見込みで、前年から300店以上、10年前の12年度からは3000店以上増加。
各社とも年間100店超の新規出店を続けており、早ければ2025年度にも国内累計で全国1万店規模を突破する見通しとのことだ。
■「脱・100円」が奏功。22年度の1人当たり購買額は月665円、過去最高に
2022年度は、コロナ禍の外出自粛やテレワークの普及による巣ごもり特需の反動減からスタート。一方、昨年2万品目に上った食品の値上げに象徴される、急激な円安や原材料価格の高騰から消費者の節約志向が強まり、「100円ショップ」の需要は底堅く推移。
加えて、クオリティやデザインの見直し、最新のトレンドや細かな需要変化を捉えた新商品の投入など、価格にとらわれない商品訴求力も大幅に向上し、売り上げ拡大に貢献したとしている。
特に、コロナ禍以降人気が拡大したアウトドアブームを取り込み、小型テントやアウトドアチェアなどのキャンプ用品、釣り具用品、DIY用品などの販売が好調に。
また、100円ショップの1人当たり購買額を推定すると、2022年度は平均で665円/月となり、増加幅は10年度以降最大となる47円となった。
積極的な店舗展開や販売チャネルの多様化、アウトドア用品など日用雑貨以外の商品ラインアップが拡充されたことで顧客層が広がったこと、150~200円などミドル・ハイプライス商品の購入が増えていることなどが要因となったとしている。
■「100円のこだわり」原材料価格高騰のなか、どこまで死守できるかが注目点に
物価の上昇局面で家計の味方として消費者の支持を集めてきた100円ショップは、「コストパフォーマンス」が良ければ100円以外の商品も選択肢に入るなど、同じ低価格志向でも消費トレンドには変化もあるという。
実際に100円商品を主軸としながらも、独自化や高機能化など付加価値を高めた中高価格帯の商品では、コスパの高さを背景に消費者から受け入れられ、順調に売り上げを伸長。100円商品を軸にしながら300円超の中高価格帯を取り揃える「脱・100円縛り」は、100均ビジネスで当面の主流となる可能性もあるとのことだ。
なお今後は、プラスチック素材などの原材料や海外工場での人件費、原油などエネルギーコストの上昇など、足元の仕入価格上昇に直面した利益面の確保が課題となるとしている。
大手各社ではスケールメリットを活かした仕入原価の抑制、自動化・省人化によるローコストオペレーションでコスト低減対策を進めている一方で、規模の小さい地場の中小100円ショップでは利幅が確保できず仕入れに苦慮しており、事業継続を断念したケースもあるなど経営環境は厳しい局面が続いているという。
原材料価格の上昇が継続すれば、既に市場の大部分を占める大手4社と中小100円ショップ間の二極化や合従連衡がさらに進むとみられるとのことだ。