アマゾンNFT市場参入の憶測、既存プレイヤーの声
アマゾンがNFTプラットフォームをローンチするとの憶測が流れる中、既存の主要NFTプレイヤーの間では、この動きがNFT市場活性化の起爆剤になるだろうという楽観的な期待が醸成されている。また、web2で成功した企業がweb3領域でどのように立ち振る舞うのかという興味関心も高まっている。
The Blockがまとめたところでは、現在市場シェアトップと2位のNFTプラットフォームともに、アマゾンのNFT市場参入を「ポジティブ」かつ「恩恵をもたらすもの」と捉えていることが判明。また、主要NFTスタジオの1つは、市場に革新をもたらす「ゲームチェンジング」な動きになると見ていることが分かった。
現在、複数あるNFTマーケットプレイスで、最大の取引高を誇るのがBlurだ。2022年10月にローンチされたばかりの新興マーケットプレイスだが、2023年2月にそれまでシェアトップを維持してきたOpenSeaの日次取引高を上回り、大きな注目を集めた。
このBlurを創業したティーシュン・ローケル氏は、新しいパラダイムが登場したとき、既存パラダイムで立ち位置を確立した企業がうまく立ち振る舞うのは稀であるとしつつも、web2企業であるアマゾンのNFT市場参入は総じて「ポジティブ」なものだと評価している。
日次取引高ではBlurが最大となるが、累計の取引高で依然市場トップであるOpenSea。2017年のローンチからこれまでの累計取引高は、1280万ETH(200億ドル以上)とBlurの累計取引高30億ドルを大きく上回る。
この市場リーダーともいえるOpenSeaの最高ビジネス責任者シバ・ラジャラマン氏もアマゾンのNFT市場参入に対して楽観的だ。
ラジャラマン氏は、アマゾンがNFTに関してどのようなユースケースに焦点を当てるのかに関心があると述べた上で、そうした取組から、何が機能し、スケールするのかを学べるため、我々全員に有益なものだと語っている。
マスマーケットへの浸透と土台構築
これまでの報道によると、アマゾンはNFTの購入を可能にするプラットフォーム「Amazon Digital Marketplace」を4月末〜5月にローンチする予定で、プロジェクトを進めているという。このローンチに合わせ、まず米国のプライム会員に通知されるとの情報も報じられている。世界全体のアマゾンプライム会員数は、2020年時点ですでに2億人に達しており、NFTがマスマーケットに浸透する大きなきっかけになる可能性が高まっている。
主要NFTスタジオの1つOrange Cometのデイブ・ブルームCEOは、アマゾンのNFT市場参入がマスマーケットのweb3参加を促進するゲームチェンジングな出来事になるだろうと指摘する。
Orange Cometは、ハリウッド俳優アンソニー・ホプキンス氏やNBAプレイヤーだったスコッティ・ピッペン氏などの著名人や有名作品のコレクションを手掛けるNFTスタジオだ。
またブルームCEOは、アマゾンのNFT市場参入が、NFTの印象を大きく変え、広く普及するための土台構築に貢献すると予想している。現在、マスマーケットでは、「クリプト」という括りの中で、暗号通貨とNFTが同じものとして認識されている。このため、FTX破綻など暗号通貨市場におけるネガティブなニュースの影響で、NFTにもネガティブな印象が付与されてしまっているという。アマゾンがNFTを取り扱うことで、暗号通貨とNFTの区別が明確になり、利用者が増える可能性がある。
アマゾンNFT、ゲーム市場との深いつながりが優位に?
NFTは、アパレルや自動車メーカーなどすでに様々な分野で取り組みが始まっているが、最も相性が良いと考えられているのがゲーム分野だ。
この点、アマゾンは優位な立ち位置にいるといえる。ゲームのライブ配信プラットフォームTwitchを有しているからだ。
web3ゲーム分野のNFTマーケットプレイスMagic Edenの最高ゲーミング責任者クリス・アカバン氏は、アマゾンがTwitchを通じてゲーミング領域と深くつながっていることを考慮すると、同社のNFT取り組みはweb3ゲームにも及び、この分野が大きく発展する可能性があると指摘している。
Backlinkoによると、Twitchの月間ユニークユーザー数は1億4000万人、月間視聴時間は18億6000万時間に上る。
ソニーもNFT関連の取り組みを加速
このように既存のNFTプレイヤーの間では、アマゾンのNFT参入が呼び水的な動きとなり市場活性化につながるだろうと楽観視する意見が多い。
一方、ゲーム分野に深いつながりを持つ大手企業としてソニーの動きにもNFT界隈の関心が注がれている。
主要クリプトメディアCointelegraphが2023年3月25日に報じたところでは、ソニーが複数のゲームプラットフォーム間でデジタルアセットを転送および利用するためのNFTフレームワークに関する特許を出願した。
このNFTフレームワークは、NFTをゲームプレイに統合することを目指すもので、ゲーム内のスキンや機能をNFTとして利用できるようになる。またNFTの所有権は、他のエンドユーザーに譲渡可能という。
Statistaのまとめによると、2022年12月時点におけるプレイステーション・ネットワークのアクティブユーザー数は1億1200万人。重複があると思われるが、アゾンプライム会員とプレイステーションユーザーを合わせると世界3億人以上となる。大きな変化が予想されるNFT市場、今後の動きから目が離せない。
文:細谷元(Livit)