手数料ゼロのNFTマーケットプレイスが誕生、市場トップOpenSeaを超えた新興プレイヤーとは

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新興NFTプラットフォーム、市場シェアで最大手を超える

NFTマーケットプレイス市場で、これまで最大シェアを誇っていたのがOpenSeaだが、最近になり新興マーケットプレイスの勢いが増し、競争が激化、市場シェア状況も大きく変わりつつある。

新興プレイヤーの筆頭はBlurだ。

複数のNFTアナリティクスサービスで、Blurの取引量がOpenSeaを上回った状況が明らかになっている。

大きな変化が確認されたのは、2023年2月15日。Dune Analyticsによると、前日までOpenSeaとほぼ同額だったBlurの日時取引量が4倍ほどに高まり、取引量で見た市場シェアが大きく変化した。

2023年1月28日時点では、OpenSeaの取引量が5071ETH、Blurが4796ETHで、それぞれのシェアは41.3%、39.1%だった。その後2月14日まで、概ね同じ水準で推移していたが、2月15日にBlurの取引量が3万410ETHに急騰、OpenSeaの7233ETHを大きく上回る状況となったのだ。これにより、Blurの市場シェアは73.8%に拡大、一方OpenSeaのシェアは17.6%に縮小する格好となった。

またDecryptoが2月21日に報じた別のアナリティクスプラットフォームDappRaderのデータによると、過去7日間のNFT取引量は、Blurが361%増の4億6000万ドル、OpenSeaは12%増の1億700万ドルと、ここでも大きなギャップが生まれていることが確認された。

Blurでの取引量が急激に伸びた背景には、Blurによるトークンのエアドロップ(無料配布)がある。

Blurマーケットプレイスがローンチされたのは2022年10月だが、このとき同マーケットプレイスの早期利用者に対し、独自トークンであるBLURを配布することが約束されていた。2月14日、Blurからトークン配布の発表があり、翌日の取引量が跳ね上がった格好となる。

Blurでの取引量急騰を受け、一部では取引量を多く見せる「wash trade(仮想売買)」を疑う声も上がっている。Decryptoが報じたDune Analyticsのデータによると、OpenSeaにおける「仮想売買の疑いがある取り引き」は全体の2%である一方、Blurでは13%の取り引きがこれに該当するという。

注目されるBlurとは

仮想売買が疑われる取り引きがあるのは事実のようだが、それを差し引いてもNFT市場におけるBlurの存在感が一気に高まり、筆頭プレイヤーに躍り出たのは間違いないといえる。

Blurとはどのようなマーケットプレイスで、注目される理由はどこにあるのか。

Blurの創業者の1人は、ネット上では「Pacman」として知られる24歳のティーシュン・ローケル氏。EコマースサイトTeespringでエンジニアとして勤務しつつ、スタートアップStrongIntroを共同創業、その後マサチューセッツ工科大学に入学するも、別のスタートアップNamebaseを立ち上げるため2年で退学。Namebase事業では、500万ドルを調達し、3年でNamecheapに売却している

ローケル氏らはBlurを創業後、2022年3月にシードラウンドで1100万ドルを調達。資金を投じたのは、Paradigm、eGirl Capital、0xMaki、LedgerStatusなど主にクリプト分野に特化したベンチャーキャピタルだ。

この資金調達に際し、Blur開発チームは同マーケットプレイスが「プロのNFTトレーダーのため」に開発されているものであるとコンセプトを明らかにしている。既存のマーケットプレイスは、リテール向けにデザインされたものがほとんどで、拡大するプロトレーダーのニーズを満たしていないという問題意識がBlur開発の背景にある。

プロ向けのマーケットプレイスとしてローンチされたBlur。OpenSeaを意識した施策により、短期間で多くのユーザーを魅了することに成功した。

1つは、取り引きにかかる手数料がゼロという点だ。OpenSeaでは、NFTの販売に対し、2.5%の手数料がかかる。例えば、OpenSeaでNFTが100ドルで売れた場合、そこから手数料として2.5ドルが差し引かれる形となる。Blurでは、販売者・購入者ともに、手数料を取らない方針だ。

このBlurによる手数料ゼロのインパクトは非常に大きなもので、Blurの台頭を受けOpenSeaも手数料を下げざるを得ない状況に追い込まれている。

Blurにおける取引量がOpenSeaを超えたというニュースが報じられてからすぐの2月18日、OpenSeaは、期間と条件付きで手数料をゼロに下げる新方針を発表したのだ

これを受けOpenSeaの取引量は2月20日、Blurを3倍近く上回る水準に達したが、一時的な上昇となり、翌日にはもとの水準に戻るという事態が発生している。

Dune Analyticsによると、2月19日のNFT市場における取引量は、OpenSeaが8318ETH、Blurが5万8458ETHだったが、2月20日にはOpenSeaの取引量が13万5196ETHに急騰、Blurの5万946ETHを大きく上回った。しかし、翌日には、OpenSeaの取引量は8680ETHとこれまでの平均的な水準に戻った。

NFT市場の競争、さらに激化する見込み

Blurの動きに注目が集まるが、NFTマーケットプレイスは多数存在しており、シェア争いは今後も激化することが見込まれる。

DappRaderのNFTマーケットプレイスランキングで、Blur、OpenSeaに次ぐ3位に位置しているのは、X2Y2だ。

2022年2月にローンチされた比較的新しいマーケットプレイスだが、成長速度は著しく、Blurが登場するまでOpenSeaの主要な競合として注目されていた。Bitcoin.comの2023年2月28日時点の情報によると、X2Y2の総売上高は10億ドルを超えており、Blurの4億5805万ドルを2倍以上上回っている。

Coingeckoによると、2022年7〜9月期のNFT取引量で見たX2Y2のNFT市場シェアは11%だった。X2Y2は手数料を0.5%に設定しており、これがOpenSeaを含め他のマーケットプレイスとの大きな差別化ポイントになっているとみられる。

このほかMagic Edenなどの既存NFTマーケットプレイスの追随に加え、テック大手によるNFT取り組みが開始されるとの憶測も流れている状況、2023年NFT市場の波乱はまだ続くと思われる。

文:細谷元(Livit

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