1日あたり5880万人がプレイする人気ゲーム
日本では広く認知されていないが、海外ではZ世代を中心にフォートナイトやマインクラフトと並ぶほどの人気を得ているオンラインゲーム「Roblox(ロブロックス)」。
ゲームという枠組みを超え、ソーシャル空間としての側面も持ち、若い世代を中心にユーザーを増やしており、主要メタバースの1つとして発展する可能性に期待が高まっている。最近では、NFL主催のバーチャルコンサートの会場にもなり話題となったばかりだ。
Robloxがどれほどの人気を得ているのか、直近の四半期報告で最新の数字が明らかになった。
2022年10〜12月期における、Robloxの平均日次アクティブユーザー数(DAU)は5880万人と、前年同期比で19%増加、ユーザーの滞在時間は128億時間と、前年同期比で18%増加した。
また通年での平均日次アクティブユーザー数も前年比で23%増え、5600万人を記録。滞在時間は、493億時間と前年比で19%増加した。
さらに、同社は2023年1月の最新状況も伝えている。同月の平均日次アクティブユーザー数は、6500万人と前年同月比で19%増となったほか、滞在時間も50億時間と前年同月比19%増を記録した。
Robloxでは、ゲーム内で使えるバーチャル通貨「Robux」が発行されている。同社の決算報告では、このバーチャル通貨の売上高は「Bookings」と呼ばれ、通常の売上高よりも、注目されるポイントとなっている。Bookingsもユーザー数の増加に伴い大幅に増えている。
2023年10〜12月期のBookingsは、8億9940万ドルと前年同期比17%増加した。米ドルの変動を除いたコンスタント・カレンシー・ベーシスでは、21%の増加となった。
Robloxは、米国発のオンラインゲームだが、ユーザーは世界各地に拡散している。Statistaがまとめた2022年10〜12月期の地域別ユーザーデータによると、同期の平均日次アクティブユーザー5880万人のうち、米国・カナダが1330万人、欧州が1660万人、アジア太平洋が1360万人、その他地域が1530万人。
2022年1月にRobloxが発表した同ゲームの国別滞在時間ランキングのトップ10は、1位米国、2位ブラジル、3位英国、4位フィリピン、5位メキシコ、6位ロシア、7位タイ、8位ドイツ、9位カナダ、10位トルコだった。上記アジア太平洋地域では1360万人の日次ユーザーがいるとされるが、このうち総人口1億1500万人のフィリピンのユーザーが多いことが示唆される数字となっている。
Roblox、人気の理由
Robloxが公式にローンチされたのは2006年9月。なぜ、この17年の歴史を持つ老舗ゲームが現在もユーザー数を増やすことに成功しているのか。
最大の要因は、同ゲームがユーザー生成コンテンツ(UGC)に重きを置いている点にあると推察される。一般的なゲームは、ゲーム開発会社が用意したステージやタスクをクリアするようデザインされている。一方Robloxは、ユーザー/クリエイターが独自のゲームやコンテンツを生成するためのインフラ整備に注力、これが奏功し「フライホイール効果」と呼ばれるほど、ユーザーが他のユーザーを魅了するサイクルが構築されているのだ。
ゲームに分類されているが、ユーザー生成コンテンツで成り立っている事実を鑑みれば、インスタグラムのような「ソーシャルメディア」の要素を多分に持つプラットフォームとも言える。
Robloxでユーザー生成コンテンツがどれほどのインパクトを持っているのか、最新の数字を見てみたい。
Robloxの公式ブログによると、2022年同プラットフォームでは、1日あたり1万5000のコンテンツ(エクスペリエンス)が公開された。これまでに公開されたものを含めると、同年ユーザーが訪れたコンテンツ数は1500万に上るという。ユーザーによるコンテンツ製作を可能にするツール「Roblox Studio」の刷新もあり、ユーザー/クリエイターのコンテンツ製作活動が活発化しているようだ。
同じユーザー生成コンテンツで成り立つYouTubeやインスタグラムでは、再生回数という指標があるが、Robloxではユーザーによる訪問回数がコンテンツ人気を測る主な指標として用いられている。
現在Robloxでは、訪問回数が10億回を超えるコンテンツが70存在している。2019年、訪問回数が10億回以上のコンテンツ数は10だった。この3年で7倍に増えたことになる。
またユニークユーザー訪問数で見た場合、100万回を超えるコンテンツは8000以上、ユニーク訪問回数1億回以上のコンテンツ数は、数百に上るという。
訪問回数10億回を超える人気コンテンツの1つが「Brookhaven」だ。これはRobloxプラットフォーム上で製作された仮想の街で、家を所有したり、乗り物に乗り、他のプレイヤーとのインタラクションを楽しむソーシャルゲーム。2020年4月に公開され、これまでの訪問回数は278億回に上る。
こうしたRobloxの人気コンテンツ内では、アーティストやブランドによるコラボレーションが頻繁に実施されるようになっている。たとえば、訪問回数31億回を超える人気コンテンツ「Livetopia」では、2022年12月末に、著名歌手マライア・キャリーとのコラボレーションイベントが実施された。
ソーシャル空間としての発展、ブランド企業もメタバースとして認識
すでに人気となっているRobloxコンテンツとのコラボレーションだけでなく、ブランド企業が独自にコンテンツを公開し、ブランディングを行う事例も増えている。
代表的な事例の1つが、ナイキによる取り組み「NIKELAND」だ。公開されたのは2021年9月。アバターにナイキのギアを装着したり、ナイキスタジアムでサッカーや野球を楽しめる空間となっている。これまでの訪問回数は、3120万回に達する。
これまでRobloxのメインユーザー層は10歳前後といわれており、子供向けのゲームというイメージが強かったが、最近では17〜24歳層の増加が顕著といわれている。背景には、新しいアバタースタイルの導入やゲーム内マテリアルをリアル化など、20歳前後の層をターゲットしたさまざまな施策がある。
これに伴い、Robloxに進出するブランド企業も多様化の様相となっている。
ヨガブランドAlo Yogaは2022年1月、ウェルネス促進をテーマとするコンテンツ「Alo Sanctuary」をRobloxで公開。このコンテンツでは、ヨガクラスや瞑想セッションなどが実施されている。ゲーム性はないものの、これまでの訪問回数は6800万回を記録している。
世界的に知られるAlo YogaがこのRobloxコンテンツの公開を「メタバース」の取り組みとして紹介していることから、今後同社のようにRoblox空間をメタバースとして取り扱う企業が増えてくることも考えられる。
Robloxも「メタバース」に関する取り組みや発言を頻繁に行っており、メタに先駆けてメタバース市場のリーダー的存在になるシナリオもあるのかもしれない。
文:細谷元(Livit)