北の大地に夢の新球場が完成 最新型照明技術・映像演出により魅力増すスポーツエンターテイメント

2023年3月、北海道北広島市に注目の新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールド北海道 以下、エスコンフィールド)」が開業した。プロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地としてだけでなく、球場周辺の付随施設と併せて「スポーツの価値」「北海道の価値」を融合させ、街づくりに貢献する共同創造空間として様々なコンテンツを発信する画期的なスタジアムだ。開業前に実施されたプレス向け発表会を通してその魅力を紹介していく。

新千歳空港から車で約30分。札幌市に隣接した北広島市街地を望む、なだらかな丘陵地帯に真新しい施設の一群が姿を現した。「北広島市Fビレッジ」と名打たれた約32ヘクタールの広大な敷地には、宿泊施設や飲食店、アスレチックパーク、グランピング、農業学習施設など様々な店舗が点在し、2028年には施設に直結するJR北海道の新駅「北海道ボールパーク駅」が開業するという。

その中心で圧倒的な存在感を醸し出すのが、新球場のエスコンフィールドだ。日本初の開閉式屋根付き天然芝球場として、地下2階の掘り込み式フィールドから地上4階まで観客エリアがあり、35,000人の収容が可能。プロ野球が開催できる開閉式の球場としては、福岡PayPayドームに次ぐ、国内2番目となる。

札幌市に隣接する北広島市Fビレッジ内に建つエスコンフィールド

球場の“顔”となる壁面には採光性を優先したガラス窓が取り入れられ、屋根が閉まっていても、ドーム型球場特有の圧迫感は一切感じない。1階のエントランスをくぐると、グッズショップやフードコートが並び、あたかもショッピングモールに来たかのような雰囲気を感じられる。しかし、コンコースに沿って少し歩けば、美しい芝生を湛えたフィールドと高い天井が広がり、一気に高揚感が増す。

ホームベース側から球場を一望すると、ライトスタンド3階に位置する建物が目に入った。ここにはホテルや美術館、天然温泉のスパ施設が併設され、ホテルの部屋から、また、サウナや温泉とともに試合を楽しむことができるそうだ。

レフトスタンド最上部、ホテルや美術館、温泉施設が入る「Tower 11(eleven)」

また、飲食も試合観戦に欠かせない。球場内には1階と2階に38店舗の飲食テナントが入っており、ピザや焼き鳥、ハンバーガーといった手軽なものから、BBQやラーメン、鮨、海鮮浜焼きなど、北海道ならではの食材を生かした幅広いジャンルが揃う。「世界初」という球場内ビール醸造内レストランでは、センターバックスクリーン内部の専用タンクで醸造された個性的なクラフトビールが味わえ、「ROOF TOP席」では、フィールドを一望することができる。観戦だけでなく、飲食も充実している。

世界初となる球場内ビール醸造レストラン「そらとしば by よなよなエール」

もちろん、メインコンテンツである試合に対しても抜かりはない。

特に球場の雰囲気を高める照明、音響、映像には最新技術が惜しみなく取り込まれている。

競技照明については、パナソニック製LED投光器を採用。外野向き2KW相当投光器を64台、1KW相当を128台、内野向き2KW相当投光器を162台配置。

「プレーヤーファースト」をテーマに開発された照明は、独自の配光設計技術により、光源からの光を絞る狭角配光を実現。選手がフライ捕球時、まぶしさの原因となる光の重なり(グレア)を低減させたという。また色の見え方を表す平均演色性評価数はRa90と高い数値を誇り、瞬時の調光・点滅を管理するDMX制御を導入することで、幅広い演出や、スーパースロー撮影でもちらつきのない映像配信を可能にしたとのことだ。

パナソニック製の競技用LED投光器は一台ごとにDMX技術により制御される

また、少人数によってオペレーションできる新スタジアムコンテンツマネジメントシステム「S-CMS」により、試合のシーンに合せ、照明、映像、音響を連動させたダイナミックな演出が可能となった。1塁・3塁側スタンド上部にそれぞれ設置された大型ビジョンと、ライン状に流れる光源が一体となった演出は、音の反響を考慮して設置された音響装置と重なり、ドラマチックな空間を演出する。

さらに掘り下げると、「S-CMS」に加えて、パナソニックが放送や映像機器の分野で培ったノウハウを生かした映像制作プラットフォーム「KAIROS」が国内スポーツ施設として初めて導入。「KAIROS」は、4K/HDなど解像度やフレームレートが異なるさまざまな映像ソースをミックスして、任意の解像度とフレームレートでのマルチ出力が可能。GPU(画像処理プロセッサ)が許容する範囲でレイヤー(画像)を幾層にも重ねることで、複雑で高度な作り込みも可能になり、ライブ送出・配信の映像表現を高いレベルで実装できるようになったという。

また、ケーブルテレビ放送技術を活用したサイネージ技術は、場内約600台のデジタルサイネージにリアルタイムに映し出される映像の0.5秒以下の遅延を実現。座席を離れていてもシームレスな観戦体験ができ、スタジアム全体で一体感・臨場感を共有できるように。

パナソニックCONNECT メディア向け発表資料より

「KAIROS」を始めとするシステムについて、パナソニック映像メディアソリューション事業本部の加藤暁之氏は「多種多様な映像コンテンツを創出できるエンターテイメント性だけでなく、小人化、簡単操作が特徴。昨今の人不足などにも貢献でき、様々な分野から興味を頂いている。今後はソフトのバージョンアップも含めて新しい機能や価値を提供していきたい」と語る。

球場とパートナーシップ契約を結んだパナソニックは、3塁側ダグアウトに企業名を冠したクラブラウンジを保有。来場者は迫力ある観戦体験のほか、座席裏のエリアで提供される食事を楽しみながら、マッサージチェアや空気清浄機、全自動おそうじトイレといった同社の製品を実際に触れて体験することもできる。このように「露出機会の提供」を超えて、企業と共に「商品・サービスのショーケーシング」を実現したのも特徴だ。

3塁ダグアウトにあるパナソニッククラブラウンジ

野球をエンターテイメントの1つとして位置づけ、ファンのみならず、野球に興味がない人達にも楽しんでもらえる施設や工夫が随所に凝らされたエスコンフィールドは、「来場」から「滞在」へと、行動変容を促す大きな影響力を持った新球場と言える。各スポーツ施設が課題としてきた「オフシーズンや競技開催日以外の運用」をどのように解決していくか、その行方にも注目したい。

文・写真:小笠原 大介

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