インプレスグループでIT関連メディア事業を展開するインプレスのシンクタンク部門であるインプレス総合研究所は、国内のドローンビジネス市場の動向を調査し、ドローンビジネスに関する調査結果を発表した。
なお、同社は同調査結果をまとめた新産業調査レポート『ドローンビジネス調査報告書2023』を、2023年3月27日に発売(予約受付中)するとのことだ。
■国内のドローンビジネス市場規模の予測
2022年度の日本国内のドローンビジネスの市場規模は3086億円と推測され、2021年度の2308億円から778億円増加(前年度比33.7%増)。
2023年度には前年度比24.0%増の3828億円に拡大し、2028年度には9340億円に達すると見込まれ、これは年間平均成長率(2022年度~2028年度)に換算すると、年20.3%増加となる。
分野別に見ると、2022年度はサービス市場が前年度比38.4%増の1587億円となり、最も大きい市場に。また、機体市場は前年度比22.4%増の848億円、周辺サービス市場は前年度比39.3%増の652億円。
各市場とも今後も拡大が見込まれ、2028年度には、サービス市場が5615億円(2022年度~2028年度の年間平均成長率23.4%増)と最も成長し、機体市場が2188億円(同年間平均成長率17.1%増)、周辺サービス市場が1538億円(同年間平均成長率15.3%増)に達する見込みとしている。
サービス市場の中の点検分野や農業分野においては、現場への実装に想定よりも時間がかかっており、昨年度の推計より成長に遅れがみられるが、その他の市場や分野は昨年度の見込み通りの成長が見込まれるとのことだ。
機体市場は、昨年度から引き続き国内および海外メーカーが点検や測量、農業、物流などの産業分野に利用可能な機体を提供。一部の機体メーカーはドローンを充電したり取得したデータをクラウド等にアップロードしたりするドローンポートを提供し始めている。
今後ドローンを使用した自動化ソリューションには欠かせない存在になることが予想され、ドローンポートの普及が機体市場の成長を後押しするとみられている。
また、2023年度は航空法上の機体認証制度に対応した、機体・型式認証を取得するドローンが増えることが予想され、レベル4飛行に欠かせない一種機体認証に加えて、利用者にとって操縦者技能証明との組み合わせで許可・承認を省略できる二種機体認証のドローンが登場すると考えられるとのことだ。
■サービス市場の分野別市場規模
サービス市場においては、2021年度に引き続き新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が日本の経済にさまざまな形で影響を及ぼす中で、ドローンの社会実装は着実に進行。
2022年度の点検分野では太陽光パネルや送電線、移動体通信の基地局・通信鉄塔、橋梁、屋根、工場や建築物の設備など、さまざまなインフラや設備の点検が商用・実用化している。
2023年度以降はプラントや大規模建造物の外壁や天井裏、さらには風力発電設備の点検といった分野の伸びが見込まれる。農業では2020年から加速している農薬散布がさらに伸びを見せているほか、林業でも資材や苗木の運搬、森林の調査等に活用が広がっているという。
物流分野は全国で実証実験をはじめとした取り組みが数多く行われており、社会実装に向けた課題の洗い出しが進んでいる。依然として事業の採算性や運用体制の構築などの課題もあるが、2025年度以降に市場が本格的に立ち上がっていくとみられるとのことだ。
また、2022年度はエンタテインメントという新しい分野の伸びもみられた。
数十から数千のドローンを群制御して、機体のライトで夜空に文字や図形、アニメーションを描くドローンショーは、東京オリンピック・パラリンピックの開会式で披露されたことを契機に、2022年度は全国各地で行われている。今後ドローンショーはひとつのエンタテインメントや広告媒体として注目を集めていくと同社は考察している。
周辺サービス市場では、2022年12月の無人航空機操縦者技能証明制度の開始に伴い、スクール事業が活発になるとみられ、加えてドローンの産業利用が進むにつれて、バッテリー等の消耗品や定期的なメンテナンス、業務環境に即した保険のバリエーションの増加などにより、機体市場の拡大に合わせて引き続き成長していくと予想されるという。
有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(レベル4飛行)の解禁は、ドローンの機体やそれを使ったソリューションだけでなく、周辺ビジネスの拡大にも波及することが見込まれ、レベル4飛行を安全に実行するための気象情報サービスや運行管理システムなどの拡大も予想されるとのことだ。
<参考>
インプレス総合研究所は『ドローンビジネス調査報告書2023』