web3領域の注目分野
「クリプトの冬」と呼ばれた2022年だが、web3領域は投資家の関心が依然高い分野であり、スタートアップへの投資資金は前年を大きく上回る結果となった。
Metaverse Postが2022年12月末に発表した同年のweb3ベンチャー投資レポートによると、web3スタートアップへの投資額は、71億6499万ドルと前年の48億ドルから大きく躍進したことが明らかとなったのだ。
分野別で最大となったのはweb3ゲームで、投資額は全体の62%以上となる44億9000万ドル。ゲームに続き、主要な投資対象となったのはメタバースで、全体の25%となる18億2000万ドルが投じられた。
web3の中でも特にゲームへの関心が高いことが示されているが、このweb3ゲーム分野は現在、第1段階から新たなフェーズに移行する最中であり、2023年は大きな変化・躍進が期待される年となっている。
これまでweb3ゲーム市場では、プレイしてクリプトトークンを稼ぐ「play to earn(P2E)」が全面に押し出されたゲームがほとんどで、プレイする楽しさを追求したゲームは少なかったといわれている。トークン価格が上昇する局面では、稼ぐことを目的に参入するプレイヤーが増加したが、トークン価格の下落に伴い、プレイヤーが激減するケースが相次いだ。
web3ゲーム業界関係者らを対象に2022年末に実施された意識調査があるが、この調査ではweb3ゲームが躍進するために最も重要な要素として「ゲーム自体の改善」(35.7%)が挙げられている。前年にも同様の調査が実施されたが、このとき最も重要な要素として挙げられていたのは「P2E」だった。
スクエニが進めるweb3ゲーム開発
上記業界関係者を対象にした調査では、ゲーム自体の改善のほか、重要な要素として「ゲーム開発大手のweb3参入」や「人気ゲームタイトルでの採用」も挙げられている。
この点、スクエア・エニックスの取り組みは海外メディアからも多くの注目を集めるところだ。
2023年2月15日、VentureBeatなど海外のビジネス/テックメディアがこぞってスクエア・エニックスがweb3ゲームの取り組みで、ブロックチェーン企業Polygonと提携したニュースを報じている。
これは「Symbiogenesis」と呼ばれるNFTと連携するweb3ゲームで、スクエア・エニックスが2022年11月頃からツイッターにて、日本語と英語で情報発信を行っている取り組みだ。今春にもローンチ予定といわれており、多くの海外メディアが逐次動向を伝える関心の高いトピックとなっている。
VentureBeatによると、スクエア・エニックスはSymbiogenesisを展開するにあたってブロックチェーンネットワークPolygonを開発する企業Polygon Labsと提携した。数あるブロックチェーンネットワークの中で、Polygonはトランザクションコストやスピード面で定評がある。
ゲームは、仮想の浮遊大陸を舞台とするターン制のアドベンチャーゲーム。プレイヤーは、ミッションクリアなどでNFTを獲得、保有するNFTによりストーリーが変わり、またプレイヤーの戦略選択によってNFTアートも進化する仕組みとなっている。
エンディングは複数用意されている。一方全プレイヤーのうち、条件を満たした3人に「ワールドミッション」という最終イベントが発生、その結果がゲーム全体に影響を与え、プレイヤー全員のエンディングも変わる構成となっている。
このスクエニ・エニックスの動きは、web3ゲーム業界関係者が待望する「ゲーム開発大手のweb3参入」を実現するもの。web3ゲーム分野への投資、人材流入、認知度の向上などさまざまな影響が見込まれる。
海外ゲーム大手のweb3取り組み
スクエア・エニックスのほかには、海外のゲーム開発大手UbisoftのNFTの取り組みも活発化している。
2023年2月22日、クリプトメディアDecryptoが報じたところでは、Ubisoftはメタバースプラットフォームの1つThe Sandboxで、Rabbids NFTアバターをローンチ。Rabbidsとは、人気クラシックゲーム「Rayman」のキャラクターで、Ubisoftは1年前に同キャラクターを使ったNFTアバターのローンチ計画を発表していた。
このNFTもPolygonブロックチェーンを採用。2066体のアバターで構成されるコレクションで、The Sandboxの独自トークンSANDでの購入が可能となっている。
海外勢としては、Robloxも注目株の1つといえるだろう。
海外ではマインクラフトやフォートナイトなどに並ぶ人気のオンラインゲーム。直近四半期報告では、平均日時アクティブユーザー数(DAU)が5880万人と前年同期比で19%拡大したことが発表されたばかり。同社は、メタバース関連の取り組みやNFTと似た仕組みを導入するなど、web3関連の動きを活発化させているのだ。
2021年10月にNFTに似た仕組みが追加されるとの報道があったほか、2022年11月にはweb3メディアBlocksterがRoblox開発チームでweb3機能の導入に向け慎重ながらも取り組みが進められていると報じている。
2022年11月には、ソニーからプレイステーション内でのNFT/ブロックチェーン利用を示唆する特許が公開されたとして、海外のクリプトメディアやゲームメディアで話題となったところ。2023年はweb3ゲーム躍進の年となるのか、今後の動向にも注目していきたい。
文:細谷元(Livit)