進化するフォートナイトでの音楽イベント
メタバース関連の動きで注目される領域の1つが、オンラインゲーム空間における音楽イベントだ。
この領域では、エピックゲームズが提供している人気オンラインゲーム、フォートナイトでの取り組みが広く知られている。
たとえば、2019年2月には、フォートナイトのゲーム空間でMarshmelloのライブコンサートが実施され、同時接続でコンサートを視聴した人数が1000万人を超えたとして話題となった。
翌年4月にはTravis Scottのコンサートが開催され、参加プレイヤー数は2700万人とMarshmelloの記録を大きく塗り替えた。さらに2021年8月には、Ariana Grandeのコンサートが数日間に渡り開催されるなど、フォートナイトでの音楽コンサートは、恒例のイベントになりつつある。
最近では、フォートナイトにおける音楽の取り組みが進化しており、音楽とゲームの融合度合いが高まる様相となっている。
2023年1月23日、エピックゲームズとオーストラリアのラップアーティスト The Kid Laroiが提携し、フォートナイト内での音楽パフォーマンスに加え、同アーティストのアイランドを開放し、未公開楽曲の発表やバーチャルアイテムを獲得できるゲームイベントを開催する計画が発表されたのだ。このアイランドは「Wild Dreams Island」と呼ばれ、1月末から4月27日までプレイヤーに開放される予定だ。
フォートナイトのゲームプレイヤーが音楽イベントに参加する際、その様子をYouTubeなどにアップロードすることが想定される。これまではそのような動画に対し著作権侵害の通知が送付されていたが、今回エピックゲームズはYouTubeに関して、イベント開催後7日間は著作権侵害通知が発生しない配慮をしたことを明らかにしている。
フォートナイトに迫るRoblox
このフォートナイトを猛追するのがRobloxだ。
日本での知名度は低いかもしれないが、米国などではZ世代の間でフォートナイトやマインクラフトに並ぶ人気ゲーム。ゲームとしてだけでなく、ソーシャル空間としても発展を続けており、直近の四半期報告では、平均日時アクティブユーザー数(DAU)が前年同期比19%増となる5880万人に増加したことが明らかにされた。
このところRobloxのゲーム空間を活用した音楽イベントの開催が相次いでいるのだ。
2023年2月には、米国で毎年開催されるスポーツ一大イベント「NFLスーパーボール」のプレゲームイベントとして、Roblox内に新設されたRhythm Cityで、人気ヒップホップ歌手Saweetieによるパフォーマンスが実施されたばかり。
Rhythm Cityは、音楽大手ワーナーミュージックがRoblox内に開設したソーシャル空間で、コンサートのほかミニゲームなどを楽しめる仕様となっている。目玉は、プレイヤーが音楽業界のロールプレイを体験できるゲームだ。音楽プロデューサーやダンサーなどに扮して、ソーシャルのつながりを構築していく。
今後はSaweetieの他にもワーナーミュージック所属アーティストによる、バーチャルコンサートがRhythm Cityで開催される予定という。
音楽大手のワーナーミュージックがRobloxに独自のソーシャル空間を開設したことで、今後世界的に知られるアーティストによるバーチャルコンサートが増える見込みだ。一方、ローカルアーティストによるコンサートも広まることが予想される。
スウェーデンのアーティストTheozは2023年2月14日、Roblox内で独自のソーシャル空間「Theoz Vinterland」をローンチ。ワーナーミュージック・ノルディクスと地元デベロッパーGo Maddoxの提携による取り組みで、この空間では音楽イベントのほか、アイススケートやジェットコースターなどのアトラクションを楽しむことができるという。5月14日までの3カ月間開放される予定だ。
The SandboxやDecentralandでも音楽関連の取り組み活発化
ブロックチェーン上で開発されているゲームプラットフォームでも音楽関連の動きが顕著となっている。
The Sandboxでは2023年1月末から2月8日にかけて、ワーナーミュージックとの提携によるDJコンテストが開催された。
このイベントは、ワーナーミュージック傘下のダンス音楽レーベルSpinnin’ Recordsが毎年開催しているDJコンテスト「Worlds’ Biggest Demo Drop(WBDD)」のバーチャル版。過去20年に渡り開催されてきたコンテストだが、今回初めてバーチャル空間での開催となった。コンテスト優勝者は、同レーベルから楽曲がリリースされるほか、新たな音楽配信の形として、楽曲がNFTとして販売されることになる。コンテストには、計2000曲以上が送付されたという。
一方、The Sandbox に並びメタバースの筆頭として注目されるDecentralandでは、同プラットフォーム内に開設されたVegas City向けの音楽カタログの整備が進んでいる。
2023年2月20日、昨年Vegas Cityと提携した音楽ライセンス企業Lickdが音楽レーベルEmpireとKobalt Music Groupの2社とVegas City向けのBGM配信で合意。これにより、DecentralandにあるVegas City地区で上記レーベルの楽曲を再生することが可能となった。
アップルが6月頃にMRヘッドセットに関する発表を行うのではとの憶測が広がっている。アップルミュージックとの連携により、音楽体験を大きく変える可能性があるともいわれており、このMRヘッドセットの登場でメタバースと音楽の取り組みはさらに加速することになるのかもしれない。
文:細谷元(Livit)