化粧品×ダンスの新たな可能性。コーセーがダンスのプロリーグD.LEAGUEに参画し描く未来とは?

2020年、日本で世界初となるダンスのプロリーグ「第一生命 D.LEAGUE(以下、D.LEAGUE)」が発足した。2024年のパリ五輪で新競技としてブレイキン(ブレイクダンス)が追加されるなど、ダンスそのものへの注目度が増している。日本では2012年から始まったダンスの義務教育必修化や、SNS上で頻繁にダンス動画が投稿されるなど、ダンスは身近な存在となり、マイナースポーツからメジャースポーツへと認識を変えつつある。その日本でダンスのプロリーグが生まれ、プロダンサーが輩出されていくことは未来の日本のビジネスシーンにおいて大きな意味を持つだろう——つまりは、今後日本がダンス市場の中心に立ち、そのイニシアチブを握る可能性があるということだ。

©D.LEAGUE 22-23

子供たちに夢を与えたい。コーセーがD.LEAGUE へ参画する理由

「D.LEAGUE」では現在、日本の12企業がオーナーチームとして参画している。大手化粧品会社のコーセーもその一社であり、ダンスチーム「KOSÉ 8ROCKS(コーセーエイトロックス) 」を組織しD.LEAGUEに参加している。その背景には、「子供たちに夢を与える」という大きなビジョンがあったからだと宣伝部 部長 織田浩行氏 (以下、織田氏)は語る。

「D.LEAGUEから、『ダンスは世界に通用する日本の文化になりつつあるのに、まだまだアンダーグラウンドなイメージがぬぐえず、他のスポーツのように子供達が憧れる職業にはなっていないので、一緒に子供たちに夢を与えられる日本発のリーグを作りたい』と提案があり、そのビジョンに感銘を受け賛同しました。」

日本のスタンダードになりつつあるダンスだが、一方で過去のイメージとの間にギャップが生じている面もある。それを払拭し、今の子供たちに夢を与えるという大きな目標に同社は同意したようだ。

株式会社コーセー 宣伝部 部長 織田浩行氏

化粧品×ダンスによる相乗効果

昨年の12月にプロ野球選手の大谷翔平選手とグローバル広告契約を交わして話題となったコーセーだが、同社にはスポーツを通じての経済戦略があるようだ。一見つながりがあるようには見えない化粧品とダンス。この二つにどのような接点を見出しているのか?

「弊社は『美」の創造企業として、『美しさ』『芸術性』『ファッション性』等の要素を含む各種スポーツ競技の振興をしており、マーケティングとしても重要な戦略として活用してきた経緯があります。ダンスは高い芸術性、ファッション性があり化粧品との親和性を感じています。特にストリートダンスは、ジャンルやファッションも多様性に溢れ、それに伴うメイクアップは無限の可能性があり、人々に活気を与えることができるのではないかと考えています」

ダンス世代である若年層へのアプローチ

現代市場において、スポーツが大きな役割を演じてきたことは言うまでもない。多くの企業がスポーツ選手と広告契約を交わすことが当たり前となってきている現代だが、そこには各企業の明確な目的が存在する。コーセーにとってダンス市場(D.LEAGUE)のビジネス的価値はどこにあるのか。

「ダンス世代である、10~20代の若年層の開拓です。2012年にダンスが義務教育化され、中学校ではダンスが必修となっていることもあり、ダンス経験者は国内に約2,000万人、ダンス人口は国内に約600万人いると言われており、年々増加しています。最近ではSNSでもダンスコンテンツが流行るなど、皆さんも身近に感じているのではないでしょうか。このように、ダンスを通じたコミュニケーションは、若年層へのアプローチを可能にすると考えています」

ダンス市場を通じて若年層の顧客を獲得することが同社の狙いのようだ。しかし、一言に若年層の顧客獲得と言っても、それは単純な数字の話だけには留まらない。

「化粧品のマーケティングにおいて、若年層で好きになったブランドはLTV(顧客生涯価値)が高いというデータもあるので、入り口としてKOSÉ 8ROCKSを知ってもらい、チームや選手を通じ、コーセーのことも好きになってもらえたらと思っています。実際に、SNSでは男女関わらず、選手が使っている商品を『使ってみた!』『今度買ってみる!』という声を多く頂いております。

また、KOSÉ 8ROCKSのダンスジャンルである『ブレイキン』は、2024年パリオリンピックの新種目となっており、今後ますます盛り上がっていくと思われます」

ダンス市場(D.LEAGUE)の盛り上がりがコーセーのブランドイメージに寄与する未来を、織田氏の慧眼(けいがん)は捉えているようだ。

ファン獲得とダンス業界の発展に向けて

上述したようにダンスの露出が多いのは主にSNS上だ。KOSÉ 8ROCKSもSNS上での発信を通して、ファンの獲得ないしはD.LEAGUE盛り上げのため取り組みを行っているという。

「各媒体の特性に合わせて、様々なKOSÉ 8ROCKSが伝わるように、SNSの活用を継続して取り組んでいます。たとえば、Instagramではダンスのきれいでかっこいい部分を、Twitterではファンとのコミュニケーションを、そしてYouTubeではチームの裏側をリアルに映したドキュメンタリーや企画型のコンテンツを配信しています。

また、デジタル上だけではなく、リアルな取り組みも増やしていこうと考えており、『学生ワークショッププロジェクト~KOSÉ 8ROCKSがあなたの学校に!?~』のプロジェクトを始動させました。チームビジョンとして『ブレイキンの無限の可能性で、世界を笑顔に』を掲げて、日々D.LEAGUEを中心に活動しておりますが、さらなるブレイキンの普及と発展を直接的に盛り上げていければと考えております」

デジタル領域以外でのリアルな活動も推し進めると語る織田氏の言葉には、D.LEAGUEへの並々ならぬ熱量が感じられる。

©D.LEAGUE 22-23

ダンスで世界を笑顔に。D.LEAGUEの先に見据えているもの

最後に織田氏にD.LEAGUEの活動の先に見据えている未来について語ってもらった。

「化粧品同様に、ブレイキンの力で世界に笑顔を作っていきたいですね。

ただ、自社だけではいつか限界がきてしまうので、各スポンサー様が持つコミュニティやコンテンツ、ノウハウなどの力を借りながら、双方がメリットになるような新たなファンとの接点作りを加速できればと思います。

そのためにも、まずは2024年のパリオリンピックという一番盛り上がるモーメントを逃さないように『オリンピック選手輩出』を狙いつつ、D.LEAGUEの連覇も目指すことで、ダンス業界を盛り上げていければと思います」

化粧品の力で人々に笑顔を届けてきた同社の本質は、ダンス市場においても変わらないようだ。 「D.LEAGUE 21-22 CHAMPIONSHIP」で見事に優勝に輝いたKOSÉ 8ROCKS。 連覇と「オリンピック選手輩出」という大きな目標を掲げる同社の動向に今後も注目したい。

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