総合人材サービス会社のヒューマンリソシアは、IT分野におけるジェンダーギャップに関するグローバル調査を実施し、「データで見る世界のITエンジニアレポートvol.8」として発表した。

なお同レポートでは、国際労働機関(ILO)および経済協力開発機構(OECD)や各国の統計データをベースに、情報通信業就業者に占める女性の割合、男女の賃金格差、およびIT卒業生に占める女性の割合について調査している。

■IT分野で働く女性の割合が最も高いのは台湾、日本は30位

情報通信業で就業している女性の割合を、データが取得できた47の国・地域別でみると、最も女性の割合が高いのは、41.8%の台湾、次いで40.4%のマレーシア、そして38.2%のベラルーシが続いた。1位の台湾は、ジェンダー平等に力を入れており、特にIT分野での女性活躍を国を挙げて促進していることが知られている。

10位以内には、36.8%のフィリピン(6位)、34.9%のタイ(10位)と、アジアから4カ国が入り、なお日本は28.9%で、47カ国中30位となった(図表1)。

情報通信業で就業している女性の割合(国・地域別)

■IT分野における男女間の賃金格差、日本は41カ国中20位

続いて、情報通信業就業者における男女間の賃金格差(女性の賃金平均÷男性の平均賃金で算出)について、データを取得できた41の国・地域別で調査したところ、パキスタン、エジプト、フィリピンの3カ国では、男性より女性の賃金の方が高い結果となった。(図表2)。

情報通信業就業者における男女間の賃金格差1

日本は20位で、16位の米国を下回ったが、フランス(21位)、イギリス(24位)、韓国(29位)を上回る結果となっている(図表3)。

情報通信業就業者における男女間の賃金格差2

■IT分野を学ぶ女性の割合、日本は37カ国中最下位

続いて、情報通信学専攻の大学卒業者において女性の占める割合を、データが取得できた37カ国にて調査したところ、最も割合が高いのは、1位スウェーデン(39.2%)、2位ギリシャ(33.0%)、3位エストニア(32.1%)となった(図表4)。

1位のスウェーデンは、就業者におけるIT技術者の比率が世界1位、3位のエストニアは同6位で、男性・女性ともに、IT技術者を目指す人が多い国であると言えるという。

一方日本は、9.2%で、最下位の結果に。なお、韓国は6位(27.9%)、米国は13位(22.4%)で、37カ国で10%を割ったのは日本のみとなった。

情報通信学専攻の大学卒業者において女性の占める割合

また、STEM関連分野を専攻した大学卒業者における女性の割合については、同じく37カ国にて最も高いのがポーランドの(70.4%)、2位はエストニア(69.4%)、3位がスロバキア(67.0%)(図表5)。

なお、37カ国のうち、28カ国は、女性の割合が5割を超えているなど、世界的にみて、STEM関連分野を学ぶ女性は多いと言える一方で、日本は、情報通信学と同じく、37カ国中最下位となる29.0%となり、女性の割合が極めて低い結果となった。

STEM関連分野を専攻した大学卒業者における女性の割合

<調査に関する出典/備考>
1)情報通信業就業者について
●情報通信業就業者とは、情報通信業で働いている人でエンジニア以外の職種も含む。
●日本は総務省「労働力調査」の、その他は国際労働機関(ILO)の統計よりデータを取得。
●2022年12月調査時に公表されている最新データを使用し、データが取得できた47カ国が対象。
調査対象国(47の国・地域、略称、順不同):
インド、日本、韓国、フィリピン、ベトナム、台湾、パキスタン、タイ、マレーシア、バングラデシュ、米国、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、スイス、オーストリア、アイルランド、スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャ、ロシア、ポーランド、ルーマニア、チェコ、ハンガリー、ベラルーシ、ブルガリア、スロバキア、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、トルコ、アラブ首長国連邦、イラン、エジプト、カメルーン、コンゴ

2)男女間賃金格差について
・国際労働機関(ILO)より、情報通信業就業者の平均月収(Average monthly earnings)データを使用。
・女性の賃金平均÷男性の平均賃金で算出し、データが取得できた41カ国が対象。
・調査対象国(41の国・地域、略称、順不同):
インド、日本、韓国、フィリピン、ベトナム、パキスタン、タイ、マレーシア、バングラデシュ、米国、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、スイス、オーストリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、ロシア、ルーマニア、チェコ、ハンガリー、ベラルーシ、ブルガリア、スロバキア、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、トルコ、エジプト、カメルーン、コンゴ

3)大学等卒業者について
・経済協力開発機構(OECD)の統計データおよび、日本の文部科学省「学校基本調査」より、大学の学部卒業者数データを使用し、データが取得できた37カ国が対象。
調査対象国(37の国・地域、略称、順不同):
日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、米国、カナダ、ブラジル、メキシコ、チリ、コロンビア、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、スイス、オーストリア、アイルランド、アイスランド、スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャ、ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、トルコ、イスラエル

<参考>
ヒューマンリソシア『データで見る世界のITエンジニアレポートvol.8