ブロックチェーンゲームの課題
2021~2022年にかけて、プレイしながら暗号資産を獲得できる「Play to Earn(P2E)」ゲームなどブロックチェーンを活用したゲームが注目されたが、クリプトの冬の到来とともに、ほとんどのゲームは失速し、関連する暗号通貨・トークンの価格も低迷を続けている。
一方2023年は、課題の洗い出しが進むことが見込まれ、ブロックチェーンゲーム市場が低迷から抜け出す可能性に期待が集まっている。
Blockchain Game Alliance(BGA)が1月12日に発表した調査レポートでは、2023年にブロックチェーンゲームが飛躍するために、どのようなファクターが重要となるのか、業界関係者らの見解が明らかになった。
この調査は、BGAがブロックチェーン関連の企業/プロジェクトに携わる347人を対象に、2022年10〜11月にかけて実施したもの。
同じ調査が2021年にも実施されているが、このときブロックチェーンゲームが躍進する最大の要因として、業界関係者らは「P2E」を挙げていた。回答割合は67%だった。
しかし今回の調査では、2022年にブロックチェーンが低迷したことを受け、回答傾向は大きく変化している。前回、最も重要と考えられていた「P2E」は22%と全体では5番目に下落、一方トップだったのは「ゲーム自体の改善」で、業界関係者の35.7%がブロックチェーンゲーム市場が躍進するために重要と回答した。
このほかブロックチェーンが普及するためには、「ゲーム開発大手の参入」(30%)、「人気ゲームタイトルでの採用」(26%)、「ゲームのしやすさ/UXの改善」(25%)などが「P2E」より重要視されていることが判明した、
ユーザーが離脱したブロックチェーンゲーム
上記BGAの意識調査は、ブロックチェーンゲームが今後どのように進化するのか、その未来の一端を示すものといえる。
これまでは暗号通貨/NFT市場の拡大も相まって、P2Eという要素が多くのユーザーを魅了したのは間違いない。しかしブロックチェーンゲームに集まった多くのユーザーは、ゲームを楽しむのではなく、利益のためにゲームをプレイしており、暗号資産・トークンの暴落とともに、ゲームから離れていった。
P2Eを全面に押し出したブロックチェーンゲームの先駆けとして知られるのが、Axie Infinityだ。
2018年にリリースされ、2021年には暗号通貨市場の上昇に乗り、暗号資産・トークン価格も大きく上昇、ユーザー数も大幅に増加した。1日あたりのアクティブユーザー(DAU)数は、2021年11月のピーク時に270万人に達したといわれている。また同ゲームのガバナンストークンであるAXSの時価総額もピーク時には100億ドル近くに達した。
しかし、その後AXSの時価総額は大幅に下落し、現在は12億ドルほどで推移している。DAUも2022年5月には100万人を下回った。Dappraderのデータによると、ユーザー数の近似値として用いられる1日あたりのユニークアクティブウォレット(UAW)数は1万4000ほどだ。
プレイヤーを維持した成功事例
Axie Infinityのように、ほとんどのブロックチェーンゲームは、プレイヤーベースを維持することが難しく、多くのユーザーが離脱した。
一方、一部のブロックチェーンゲームは、プレイヤーベースを維持しており、成功事例として注目を集めている。
2022年を通して安定したプレイヤーベースを維持していたのが「Alien Worlds」だ。これは2055年の宇宙を舞台にした暗号資産の採掘ゲームだ。Trilliumと呼ばれる鉱物を採掘、それらをアイテムや土地NFTと交換するなどし、ゲーム内での暗号資産を増やしていく。
Footprint Analyticsのデータによると、Alien Worldsの月間プレイヤー数は、2022年1月に630万人で、同月1100万人でトップだったSplinterlandsに次ぎ2番目のプレイヤー数を誇っていた。その後も月間アクティブユーザー数は、600万人前後を維持。2022年6月にはSplinterlandsのプレイヤー数が500万人を下回ったことで、Alien Worldsはプレイヤー数が最も多いブロックチェーンゲームとなった。
注目すべきは、クリプトの冬が進行する中でも、ユーザーが増えているという点だ。2022年12月の月間プレイヤー数は、690万人と同年最多を記録した。
2023年以降の展望、大手の参入に期待
これまでのブロックチェーンゲームの多くは、ゲームとしての完成度が低く、プレイヤーの維持が困難だった。
今後ブロックチェーンゲーム市場が発展するには、BGAの意識調査でも示されているように、ゲーム自体の改善のほか、ゲーム開発大手やマイクロソフトなどのテック大手の参入が重要になるとみられている。
BGAによると、実際すでにゲーム開発大手やテック企業によるweb2.0からweb3へのシフトは始まっており、2023年以降、ブロックチェーンゲーム市場は大きく躍進する可能性が高まっているという。
たとえば、韓国モバイルゲーム大手COM2USは、同社のヒット作「Summoners War: Chronicles」にブロックチェーンを統合したほか、独自のブロックチェーンゲームとNFTマーケットプレイスをローンチした。これにより、web2.0とweb3ゲームの相互運用性の促進が期待される。
また、ブラジルのモバイルゲーム大手Wildlife Studioも50万回ダウンロードされた人気タイトル「Castle Crush」にブロックチェーンを導入。これにより、プレイヤーは、ゲーム内でNFTや暗号資産を獲得できるようになった。
このほか、バンダイナムコやスクエアエニックスといった日本のゲーム大手によるNFTプロジェクトやフォートナイトの開発企業エピックゲームズによるゲームストアでのweb3ゲームの取り扱い開始など、大手企業の取り組み事例は枚挙にいとまがない。
Dappradarによると、ブロックチェーン上のアクティビティの50%近くがゲームプレイであり、ブロックチェーンゲームがDapp(分散型アプリケーション)市場における最大の成長要因になっている。またベンチャー投資が低迷した2022年だが、ブロックチェーンゲーム分野への投資額は79億ドルと前年比で59%増加した。
2023年、ブロックチェーンゲーム市場はどのような進化を遂げるのか。今後の動向が気になるところだ。
文:細谷元(Livit)