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帝国データバンクは、人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)を実施。結果を以下の通り発表した。
出口の見えない人手不足状態が続いている。2023年1月時点で人手不足を感じている企業の割合は、正社員では51.7%、非正社員では31.0%で、それぞれ5カ月連続で5割超、3割超の高水準。特に個人向けサービス業の代表格「旅館・ホテル」「飲食店」は群を抜いた高い割合となったとのことだ。
正社員
人手不足割合は51.7% 1月としては過去2番目の高水準、前年同月比3.9ポイント増
2023年1月時点における従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員について「不足」と感じている企業は51.7%だった。前年同月から3.9ポイント増加しており、1月としては2019年(53.0%)に次いで2番目の高さとなった。月次ベースにおいても5カ月連続の5割超となり、上昇傾向が顕著となっている。特に大企業では62.1%と高水準で、全体(51.7%)を大きく上回る結果となった。
「旅館・ホテル」が77.8%でトップ、IT人材不足の「情報サービス」も7割超で続く
正社員の人手不足割合を業種別にみると、インバウンド需要の高まりによって景況感の回復がみられる「旅館・ホテル」が77.8%で最も高かった。月次でも3カ月連続のトップとなり、人手不足が群を抜いて目立っている。
慢性化する人手不足への対応策として「客室稼働率を減らしつつも施設の改修などで単価アップを図り、客室あたりの収益を改善させることで、利益を残せるように工夫を重ねた。そうすれば雑なサービスにならず、リピーターの獲得にもつながると考える」(和歌山県、旅館)のような企業努力の声が聞かれた。
また、IT人材が深刻な「情報サービス」も73.1%と高い。「案件過多によって人手不足を顕著に感じている」(ソフト受託開発、神奈川県)や「受注案件の引き合いは強く、システムエンジニアの確保に向けて動き出しているが、各社とも人手不足の状況」(同、北海道)のような好況による人手不足をあげる声が多数みられた。
非正社員
人手不足企業の割合は31.0% 1月としては4年ぶりの3割超、前年同月比3.0ポイント増
非正社員について「不足」と感じている企業は31.0%となった。1月としては2019年以来4年ぶりの3割超となり、当時の水準に迫っている。月次においても5カ月連続の3割超だった。
規模別では、大企業では33.4%、中小企業では30.6%、小規模企業では29.2%となり、各規模でそれぞれ3割前後の人手不足となっている。なお、非正社員の人手を「適正」と感じている企業は61.5%と大半を占めた。
「旅館・ホテル」と「飲食店」が8割超、突出した高水準に
非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「旅館・ホテル」が81.1%で最も高く、正社員と同様にトップとなった。次いで「飲食店」が80.4%で続き、この2業種が群を抜いた人手不足状態に陥っている。
飲食店業界からは、コロナ禍の相次ぐ時短営業で離れてしまった働き手が戻ってこないという声が多く聞かれる。そうしたなか、「まずはモバイルオーダーを導入した。さらに効率化を進めようと配膳ロボットを導入しようとしたが、店舗のレイアウトの関係で導入が難しく、次の手を模索している」(福岡県、酒場・ビヤホール)のような、あらゆる打ち手を重ねているが苦戦が続く状況がみられた。
また、「人材派遣・紹介」(60.5%)も高く、「派遣できる人材の取り合いが生じている。外国人も視野に入れるなど策を講じている」(労働者派遣、群馬県)との動きもある。さらに、「飲食料品小売」(56.0%)、「各種商品小売」(50.9%)といった小売業も5割超で続いたという。
非正社員において「旅館・ホテル」は過去最高を記録 「飲食店」はコロナ禍以降で最も高い状況
旧来から人手不足が目立つ「旅館・ホテル」と「飲食店」は、一層深刻さを増している。2023年1月時点では、特に「旅館・ホテル」に関して正社員は77.8%で8割に迫り、非正社員は81.1%で過去最高を記録。また、「飲食店」の正社員も60.9%と高水準で、さらに非正社員では80.4%と8割を超え、コロナ禍以降(2020年4月)で最も高くなったとのことだ。
2023年度の「賃上げ」見込み、人手不足企業は全体より実施する傾向が強い
早くも2023年のキーワードとして重要視されている「賃上げ」は、人材の獲得や定着に向けて避けては通れない要素となり得る。実際に、2023年度の見込みでは人手不足企業(63.1%)は全体(56.5%)より高く、6.6ptの差が開いた。また、従業員数区分でみると「6~20人」「21~50人」「51~100人」のような中小企業で特に賃上げ意識が高い。しかし、規模が小さい「5人以下」では賃上げを実施する見込みは弱く、人手不足企業においても51.4%で全体より低位となった。
そうしたなかでも、企業からは“賃上げやむなし” との声が相次ぎ、「現状の資金繰りは厳しいが、人材確保のために賃金アップは仕方ない」(飲食料品小売、長野県)などの意見があがっている。
今後の見通し ~ 人材獲得競争は一層激化へ、「賃上げ」は避けて通れぬキーワード ~
2023年1月時点では、人手不足企業の割合は5カ月連続で正社員は5割・非正社員では3割を上回る高水準で推移。深刻かつ出口の見えない、慢性化した人手不足が続いている。
帝国データバンクが2022年11月に実施した「2023年の景気見通しに対する企業の意識調査」では、2023年の懸念材料として4社に1社が「人手不足」をあげた。これは「物価高」関連ワードに次ぐ上位の項目であり、人手不足が経営に影響を及ぼす大きな要素であることを示しているとのことだ。
実際に、既に人手不足による悪影響は顔を見せ始めている。2022年に人手不足を理由にした倒産は140件となり、2019年以来3年ぶりの増加となった。なかでも「従業員退職型」は全体のうち4割を超えるなど増加傾向にあり、人材流出を理由に事業をたたむケースが後を絶たないという。
2023年に活発化するであろう「賃上げの波」についていけず、人手不足を解消できぬまま経営に行き詰るリスクは業界を問わず高まっており、これまで以上に懸念する必要があろう。そうしたなかでも、何とかして賃上げを実施して人材の獲得・維持を図りたいという声は多い。賃上げとそれにともなう人手不足の解消は、2023年の景気を左右する最重要事項になると予想されるとのことだ。