東京財団政策研究所は、数理モデルを用いて集団免疫レベルの推計を継続して行っており、2023年1月現在の日本全国および主要5都道府県の集団免疫レベルの推移を推計し、その結果をReview(論考)として公表した。
■調査概要
日本で初めて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されてから3年が経過し、現在は国内の流行は依然として続いているものの、2022年秋以降のいわゆる「第8波」のピークは過ぎたと見られ、各地での感染者報告数は減少傾向となっている。
また、国内の感染者の総報告数は3,100万人を超えており、単純計算でも国内の約4人に1人は感染経験があることになり、無症状や軽症であるために報告数に計上されていない感染者も含めると、国内の自然感染に由来する集団免疫のレベルは確実に増加していることが予想できるとしている。
日本全体のCOVID-19に対する集団免疫レベルの推計結果は、以下図の通り。
自然感染(赤)は自然感染に由来する免疫を持つ人の割合、ワクチン(紫)はワクチンに由来する免疫を持つ人の割合、自然感染+ワクチン(黄緑)はそれらを合わせたもの、部分免疫(青)は少なくとも1回は自然感染あるいはワクチン接種の経験がある人の割合を表している。
なお、自然感染(赤)、ワクチン(紫)、自然感染+ワクチン(黄緑)では免疫の減衰を考慮している。
推計の結果、2022年は年初に第6波、夏に第7波、秋以降に第8波があったが、各流行の波のタイミングで自然感染(赤)が増加し、それに伴って自然感染+ワクチン(黄緑)も増加していることが分かる。
特に、第8波が始まった2022年10月以前はワクチン(紫)が自然感染(赤)よりも多かったが、同月以降は逆転し、現在は自然感染(赤)がワクチン(紫)よりも多いという結果に。
これは、第8波で感染者数が増えたことと、ワクチンの4回目以降の接種率が低いことに起因していると考えられるという。なお現在、自然感染+ワクチン(黄緑)はおよそ0.7(70%)で過去最高の水準になっている。
■主要都道府県(北海道・東京・大阪・福岡・沖縄)に対する推計結果
主要都道府県に対する推計の結果、どの都道府県でも現在は自然感染(赤)がワクチン(紫)よりも多く、自然感染+ワクチン(黄緑)はおよそ0.7(70%)となった。
特に沖縄では、第7波の感染者数が多く、2022年10月1日の時点で自然感染(赤)がワクチン(紫)を大きく超えていた。そのため、自然感染由来の集団免疫レベルが十分高かったと考えられるが、そのことが第8波において沖縄の人口に対する感染者報告数が少ない結果に繋がった可能性が考えられるという。
一方、2022年10月1日の時点で自然感染(赤)が比較的少なかった北海道では、第8波が早く始まり、人口に対する感染者報告数が多かったという。
また、福岡でも第8波の人口に対する感染者報告数が多かったが、これは2022年10月1日時点での自然感染+ワクチン(黄緑)が比較的少なかったことに起因する可能性が考えられるとしている。
実際、東京・大阪・沖縄では0.6を超えていたが、福岡・北海道では0.6を下回っていた。
東京財団政策研究所は、同研究では、第8波後の日本全国および5都道府県の集団免疫レベルの推計を行実施し、対象としたどの地域でも現在の集団免疫レベルは十分高まっており、今後の流行はしばらく抑制されることが期待されるが、免疫の減衰やウイルスの変異による免疫逃避によって再流行が起こる可能性は否定できないとしている。
今後、社会経済活動の正常化やワクチン接種間隔の延長の検討を進めていく上でも、自然感染とワクチン接種による集団免疫レベルを継続的にモニターしていくことが望ましいとのことだ。
<参考>
東京財団政策研究所『国内におけるCOVID-19の第8波ピーク後の集団免疫レベルの推計』