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クリプトの冬でも活発化する大手企業のweb3取り組み
「クリプトの冬」と呼ばれる状態が依然続いているが、大手企業によるweb3の取り組み/投資は活発化の様相だ。
最近の事例としては、ポルシェが11月29日に明らかにしたNFTプロジェクトが挙げられる。同社はweb3関連の取り組みを長期的に行う計画で、その一環として2023年1月にポルシェの人気モデル「911」をテーマとするNFTを発行することを明らかにした。
ドイツ・ハンブルクのデジタルスタジオALT/SHIFTに所属するアーティスト、パトリック・ボーゲル氏らがNFT制作を担う。NFTの発行枚数は7500枚。「The Performance」「Heritage」「Lifestyle」という3つのテーマでデザインされたポルシェ911のNFTが登場する。
NFT制作には、フォートナイトで知られるエピックゲームズが開発するゲームエンジン「Unreal Engine5」が使用される。このため、今後これらのポルシェNFTはゲームやメタバースでも利用できる可能性があるとみられている。
このところ欧米では大手企業によるNFT/web3利用を想定した社名やロゴの商標登録申請が増えており、今後ポルシェのようなNFT関連の取り組みの増加が見込まれる。
こうした中、これまでNFT/web3に関して先行して取り組んできた企業では、取り組みの成果が見え始め、さらに前進するための投資活動が活発化している。
NFT/web3関連の取り組みで先行している企業の1つがナイキだ。
Vogueの2022年11月14日時点の情報によると、ナイキはこれまでのNFTの取り組み/投資の成果として、少なくとも1億8530万ドルのNFT収益を得ており、競合のアディダス(NFT収益、1100万ドル)やプーマ(130万ドル)を大きく上回る状況にあるという。
ナイキのweb3プラットフォーム
NFT/web3取り組みで先行するナイキだが、2022年11月14日にweb3プラットフォーム「.Swoosh(ドット・スウッシュ)」をローンチしたことで、また一歩他社との差を広げたことになる。
ドット・スウッシュは、ナイキのモバイルアプリSnkrsを率いたロン・ファリス氏が指揮をとるプロジェクトで、社内のNike Virtual Studioが制作・運営を担う。
同プラットフォームは、リアル/バーチャルのナイキプロダクトを購入できるだけでなく、イベントや新作商品へのアクセスポイントとして機能する。また、コミュニティ形成も重要視されており、プラットフォーム利用者が新作プロダクトの制作に参加する機会も用意されるという。
このドット・スウッシュの取り組みが注目される理由は、NFTにさまざまなリワード/機能が付加されており、NFT保有者はリアル/バーチャルの世界でNFTの価値を体現できる点にある。
これまでNFTというとJPEGによるデジタルアートという形態が一般的で、保有者が得られる価値もキャピタルゲインに限定されていた。これら既存のNFTプロジェクトとは一線を画す取り組みとして、関心を集めているのだ。
またナイキは、NFT/暗号通貨領域におけるアーリーアダプターではなく、より幅広い層を同プラットフォームのターゲットとしている点も差別化ポイントとなる。
ファリス氏がVogueに語ったところでは、バーチャルシューズNFTの保有者は、リアルのプロダクトが販売される際に、そのプロダクトをプレオーダーできる権利を得られるほか、シューズのデザイナーとチャットできる権利、そしてお気に入りのゲームでバーチャルシューズをアンロックできるなどさまざまな価値が付与される。
FastCompanyによると、ナイキはドット・スウッシュにて、50ドル台からシューズNFTの販売を行う計画という。
ナイキ、web3の取り組みにおける2つの主要部門
ナイキのドット・スウッシュは、社内のデジタル部門Nike Virtual Studioが運営を担うことになっている。このNike Virtual Studioにweb3関連のノウハウを伝えているのが、2021年12月にナイキが買収したweb3企業RTFKTだ。
RTFKTは2020年に創業された非常に新しいスタートアップ。同社がローンチした「CloneX」は、2022年に最も取り引きされたNFTコレクションの1つとして知られている。Vogueによると、ナイキのNFT収益の半分がCloneXの収益で占められているという。
2021年12月の買収によりナイキ傘下となったRTFKTは、ドット・スウッシュとは別のプロジェクト「Cryptokicks iRL」を進めており、これもナイキのweb3の取り組みとして関心を集めている。
Cryptokicks iRLとは、リアルプロダクトに紐付けられたスニーカーNFTを販売し、NFT保有者は後に実物のスニーカーを受け取れるという取り組みだ。
実物のスニーカーには、RTFKT WM NFCチップが埋め込まれており、NFTのユニークIDをスマホで確認することができる。このほか、スマホとスニーカーをペアリングすることで、スニーカーのライトをコントロールしたり、自動紐結び機能を利用することが可能になる。スニーカーにはワイヤレス充電が可能なバッテリーが組み込まれている。
1万9,000足が販売される予定で、NFTの販売はすでに始まっている。「Blackout」「Stone」「Ice」「Space Matter」の4つのデザインが用意されているが、それぞれのNFT販売価格は人気などにより若干異なる。
現時点のNFTマーケットプレイスOpenSeaにおける最低価格は0.09ETH(約1万6000円)、最高価格は20ETH(約320万円)となっている。
NFTに紐付けられた実物のスニーカーが登場したことで、歩く/走ることで暗号通貨のリワードを得る「Move to Earn」という取り組みにつながる可能性もあり、ゲーム/クリプト関連メディアもこのプロジェクトに高い関心を寄せている。
文:細谷元(Livit)