鹿児島工業高等専門学校(以下、鹿児島高専)情報工学科の中才恵太朗助教と近畿大学情報学部情報学科の角田雅照准教授らの研究グループは、マスク着用啓発に対するコンピュータゲームの効果を発表した。
同研究では、マスク着用の啓発効果を高めるにはシリアスゲームとフレーミング効果の活用が重要となることを明らかにしたとのことだ。
- 研究のポイント
・現実社会の問題を学習するシリアスゲームとして、マスク着用啓発ゲームを開発した。
・フレーミング効果を活用してゲーム結果を示すことにより、啓発効果が高まることを明らかにした。
・シリアスゲームとフレーミング効果の活用は、今後の感染症対策の啓発の鍵となる。
COVID-19に対する社会的な関心は世界的にも非常に高く、COVID-19の感染拡大を防止するために、シリアスゲームを用いてユーザに感染予防を啓発する試みも多く実施されているという。
シリアスゲームとは、現実社会の問題を学習するために開発されたコンピュータゲーム。同研究ではシリアスゲームを通じてユーザに対し、空気感染や飛沫感染をするCOVID-19などの感染症に対するマスクの重要性を啓発することを目的としている。
■研究内容
マスク着用の啓発効果を高めるために、同研究ではフレーミング効果に着目。フレーミング効果は、同じ問題を表現を変えて示すことにより受け手の意思決定が変化することを指す。
これまでシリアスゲームおけるフレーミング効果は十分に研究されていなかったという。
今回、マスク非着用のキャラクターを制限時間内に多くクリックする(マスク着用させる)ことを目指すシリアスゲームを作成。被験者18人にゲームをプレイしてもらい、結果を以下の2種類の表現のうち一方を用いて示した。
●肯定的表現(ポジティブフレーム)例:10人にマスクをさせて50人への感染を防いだ
●否定的表現(ネガティブフレーム)例:10人がマスクをしなかったため50人に感染が広がった
ゲーム終了後に「マスク非着用による感染拡大の危険性が伝わったか」などをアンケートした結果、「否定的表現(ネガティブフレーム)」によりゲーム結果を示された被験者のほうが、より強く「マスク非着用による感染拡大の危険性」が伝わる傾向が見られたとのことだ。
なお、マスク着用に肯定的態度をとっている被験者においても、ネガティブフレームによる啓発効果が見られたという。
■今後の課題・展望
両者はCOVID-19に限らず、今後も空気感染や飛沫感染をする感染症が拡大する危険性がり、それらへの対策の啓発手段としてシリアスゲームを活用できる余地は大きいとしている。
さらに、ネガティブフレーム(対策を十分に行わないことによる感染拡大の危険性)を用いてゲーム結果を提示することにより、啓発効果を高められることが期待できるとのことだ。